まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

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5章 はじめての授業と部活顧問!?

第20話 久しぶりの「授業」だもん

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 この日から、初めての授業を受けることになった。

「教科書を持って教壇に立つのは、教育実習以来ですから。お手柔らかにお願いします」

 そう言って、最初に笑いを取ってから、春休みの宿題の答え合わせから始めた。



 他の教科ではいきなり復習テストを仕掛けてくる先生もいる。

「休み期間中はみんなそれぞれの事情があるでしょう。僕の授業ではそういうことはしません」

 「おぉー!」という歓声と拍手が湧きかけたのを抑えて、「その代わり、定期テストでは授業でやったところはまんべんなく出題しますから、そこは覚悟しておいてくださいね」だって。

 昔から教えるのが上手だったもんね……。新任の先生にありがちな不安定さはなくて、とても初めての本番とは思えない安定さ。

 きっと一人暮らしのお部屋で何度もイメージトレーニングしたんだろうな……と板書をノートに書き取りながら思った。

 もちろん先生の力もあるだろうけど、そもそものこのクラスの特性もあるし、その中には授業中の態度で心象を悪くしたくないという生徒側の思惑も少なからずあるだろう。

 私自身は、本当に4年ぶりにお兄ちゃんから勉強を教えて貰っているという感覚がよみがえってきて、それでいて立ち位置が変わるという、懐かしいようで新鮮な1時間はあっという間に過ぎた。


「あ、いたいた。松本さん!」

「岡本先輩、どうしたんですか?」

 午前中が終わってのお昼休み。同じ文芸部の岡本おかもと夏紀なつき先輩がやってきた。

「今日、私が新歓の当番なんだけど、用事入っちゃって、松本さんの明日と代わってもらっても大丈夫かな?」

「はい。今日と明日の交換なら大丈夫です」

「ごめんなさい。必ずこの埋め合わせはするから」

「今日の放課後は空いていたので、私もちょうどいいです」

 今日は月曜日だから、図書館は休館日で放課後のお仕事はない。だから逆に先輩に代わってもらえれば私にも都合がいい。

「ありがとう」

 夏紀先輩は後輩の私にもきちんとお辞儀付きのお礼を言って帰っていく。

 後輩である私たちにも普段から礼儀正しくて、下級生からの人気も高い。先輩自身は言わないけれど、昔から続く地元名家のお嬢さまだと聞いたこともある。自宅にいる時とはきっと違う、それを感じさせない学生らしい言葉遣いの切り替えも見事だと思う。


 先輩も私と同じで、お話の創作が好きな人だ。私が絵本や児童向け作品が多いのに対して、先輩はジュニアからティーンズ向けのお話を作るのが上手だ。

 私も創作で困ったりすると、いろいろとアドバイスをもらったり、お互いに未公開ネタを打ち明けて意見を言い合ったりという間柄になった。

 商用出版までこぎ着けたものは少ないけど、いつもコンテストなどでは上位にランクインされているし、同人誌などでもその名前はよく知られている。

「花菜も大変だねぇ」

「千景ちゃんも大変でしょ?」

「うちはいつも練習しているやつだし」

 千景ちゃんは中学の頃から吹奏楽部。こちらも新歓でやる音楽室ミニステージ準備が忙しいと言っていたっけ。

「文芸部は岡本先輩が抜けた後って、花菜が部長になるの?」

「うーん、どうなんだろう。肩書きはともかく、実質的にはそうなっちゃうかもしれないけどね。吹奏楽部は違うの?」

「ほら、あそこはもっと音楽命な人もいるから無理無理!」

「大所帯は大変なんだね」

 まだ最初の週だから、授業もそれほど進まない。午後もあっという間に過ぎてホームルームの時間になってしまった。

 この前と変わらず先生を引き留めている女子を尻目に、私は部室に向かった。

 そんな私のことを気にしてくれている視線に気づくこともなく……。
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