まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

文字の大きさ
65 / 170
18章 MVPの後夜祭

第64話 生徒たちが主役です

しおりを挟む


「しかしまぁ、すごいこと考えたんですねぇ。これ誰の発案ですか?」

 夏休みが終わって、最初の部活ミーティングはかつてないほどの盛り上がりを見せた。

 先の発言は部長の岡本のものだ。

 この日だけは、放課後の図書室を貸し切りにし、普段は出てこないメンバーにも各教室の担任の先生を通じて召集をかけ、文化祭の展示についての概略説明をした。全員が参加できるようなものにしたいと。

「これは松本さんの案です。これなら皆さんも楽しんで参加できるでしょう?」

 怪談屋敷というあの時の案は、異様な高揚感を持って好評に受け入れられた。普段物語を書かないメンバーもアイディアを岡本、松本、五十嵐に渡し、怪談小冊子を作れば文芸部としての体面も保てる。

 彼女はあの合宿の翌日から、夏休みの間に校内を回り、あちこちにある品物を見ながら集められそうなものを見つけ、そこからインスパイアした内容で怪談話のネタをいくつも作っていった。それに乗ってもらってもいい。

 その作業には国語準備室を使ってもらった。

 ここならパソコンも自由に使うことができるので、生徒会や学校に提出する企画書などの書類だけでなくパンフレットやポスターの原案もその場で造り上げていった。

 驚いたのは、あの旅館での発想の直後から、壮大な計画がすでに彼女の頭の中に浮かびあがっていたことだ。

 まず、この特別棟には図書室の上に音楽室がある。

 そして2年5組には美術部と吹奏楽部の副部長がそれぞれ在籍している。

 彼らに協力を頼んでいた。文芸部だけではセットの作り込みに不安がある。音楽室のピアノは重要なアイテムだけど重くて動かせない。

 だから図書室と音楽室を暗幕で繋いで一つのアトラクションにしてしまおうというもの。もちろんそこには階段もあるから、よく怪談話で出てくるネタもリアルに作り込むことが出来る。

 これまでにない壮大な計画に、それは面白そうだと両部活も共同展示に全面協力をしてくれることになった。

『文芸部・吹奏楽部・美術部が共同で面白そうなことをしている』

 そんな噂が職員室だけでなく、学校全体の中にも流れ始めた。

 この件の会議は俺の部屋でやって貰って構わないということにしていたので、俺は横で耳を傾けていた。

 最大の懸念は「本当に階段を借りられるか」問題だったけれど、特別教室棟であることが幸いして「階段幅の半分なら」という前例にない許可も下りた。



「長谷川先生は赴任最初の年から派手に行きますなぁ。さすがお若いだけある」

 教頭先生と一緒に文化祭の準備をしている校内を歩いた。

「3年に1回ですから、彼らに自由にやらせてみただけです。僕は何も指示していません」

 これだけのスケールに、先に耳打ちしておいた教頭先生や校長先生も快諾してくれた。



 同じことは、文芸部だけでなく2年5組のクラス展示も同じように生徒たちの自主性に任せた。

「展示をやるからには自分たちも楽しめるようにしてください」

 そんなお題を決めるホームルームの最初に話をした。すると、『童心に返った遊び場を作ろう』というコンセプトが出てきた。

 そうやって話に火が付けば早い。

 教室をいくつかのパーティションで区切り、そこにホームセンターや100円ショップなどを回って、面子メンコやコマ、射的などの道具を揃えて、ブースの担当者を決める。

 教室を大改造せずに済み、グループ分けした生徒たちが各ブースや全体の装飾や衣装にまで工夫を凝らしている。

 本来、これだけの大がかりなセットを二つも同時に担当するのは大変なはずだ。

 クラス展示だけでなく、文芸部のことも含め教頭先生は言っているのだろう。

「生徒たちが自発的に動いてくれているんです。特に文芸部の共同展示は松本さんが総監督です。僕のアイデアの上を飛び越えていきますから」

「ほぉ」

 お世辞や個人的な感情ではなく、事実この部活展示のMVPは誰かと聞かれれば、間違いなく副部長である松本を推薦する。それは部長の岡本だけでなく、他の部員に聞いても異論はないとのことだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

紙の上の空

中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。 容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。 欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。 血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。 公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

となりのソータロー

daisysacky
ライト文芸
ある日、転校生が宗太郎のクラスにやって来る。 彼は、子供の頃に遊びに行っていた、お化け屋敷で見かけた… という噂を聞く。 そこは、ある事件のあった廃屋だった~

処理中です...