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30章 救護班の大冒険
第115話 こんな大事な日のドジな私
しおりを挟むもう一度、左手の薬指に収まった細いリングを見る。
「サイズ、気になるか?」
「ううん、そんなんじゃないよ。ぴったりだから大丈夫」
前回もらった指輪は私の将来を丸ごと予約をしてくれた証拠だから大切な宝物には間違いない。でも、今日のリングは、私の人生に新しい道が開いたという意味で渡してくれた。
あの日の約束を守ってくれた証し。
もう、なんて返事を返せばいいのかわからなくなっちゃう。
「花菜、ほら泣いてるとみんなに分かっちゃうよ?」
「うん、そだね」
腕時計を見ると、あと30分で帰らなくてはならない。
ホテルには近いけれど、お土産を見ていたら結構ギリギリの時間だ。
明日は明日でお土産を買うから、珠実園のみんなへお土産を選んで坂を下りていく途中のことだった。
「あっ……」
石の階段が少し欠けているところに足を乗せてしまって、体勢を崩した私はそのまま階段を数段転げ落ちてしまった。
「松本!」「花菜!」
二人が急いで駆けよってきてくれる。
「えへへ……。ドジしちゃった……」
体を起こしてみて、とりあえず上半身は大丈夫そうだけど……。
「痛ぁ……」
長袖のブレザーで覆われていた上半身とは違って、運悪くスカートとハイソックスの間で無防備だった膝は擦り傷ができて、それよりもまずいと思ったのは左の足首が悲鳴を上げていること。
「大丈夫か?」
「ちょっと、今日は歩き過ぎたかもな……」
坂や階段が多い街を歩いていて、足に少しずつ疲れや痛みが溜まってきていたのは分かっていた。でもそれは千景ちゃんも先生も同じはずだったから休もうとは言えなかったし。
「とにかくホテルに戻るのが先月だ」
「そうですね。先生、救急キットの中見せてもらえませんか?」
二人に肩を持ってもらって、道横の段差に座らせてもらう。
「とりあえず今はホテルまでの応急処置ね」
千景ちゃんは、救急セットの中身を確認して、消毒用のアルコール、脱脂綿と絆創膏、痛み止めのコールドスプレーと包帯を取り出す。
「ちょっと傷がしみるかもしれないけど、我慢してね」
左足から靴とハイソックスを脱がせてくれて、擦り傷の手当と、コールドスプレーで一時的に痛みをとっている間に痛み止めを塗りこんでくれる。
「上手いもんだな」
「保健委員ですし、家が家ですから。よし、これでとりあえずは大丈夫。部屋に帰ってからちゃんと手当てするから」
私の足首をそっと触り、痛くないところを見つけて包帯でキュッと固定して、さらに瞬間冷却パックを包帯とソックスの間に入れて冷やし続けるようにしてくれる。
その顔つきと要領の良さは病院の看護師さん顔負けで、先生だけでなく私も自分の足の事なのに、千景ちゃんの手元の方に感心してしまったっけ。
「ありがとう……」
「救護班だもん、このくらいお安いご用。今度は立てる?」
靴の踵を少し踏む状態になったけれど、ふたりの肩を貸りながら立ち上がれた。
お家が整骨院という千景ちゃんの対応には本当に脱帽だ。
私では真似が出来ないほど固く固定して貰ったおかげで、支えてもらいながらもどうにか歩くことができる。
私の荷物を先生に持ってもらい、何とか予定時間内にホテルに戻ることが出来た。
「二人とも部屋に戻って休んでて。食事を運べるか聞いてくるから」
「わかりました。先生、花菜の荷物預かります」
「悪いな。頼む」
エレベーターのドアが閉まって二人きりになったとき、突然千景ちゃんが吹き出して大笑いを始めたんだよ。
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