まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

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30章 救護班の大冒険

第116話 こんな友達がいてよかった

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「あー、顔がピクピクしてたわぁ!」

 突然エレベーターの中で大笑いを始めた千景ちゃん。

「どうしたの?」

「だって、花菜が転んでから、先生言葉づかいが変わったことに気づいてないんだもん。よっぽど慌ててたんだね」

「そ、そっかぁ」

 そのこと自体は先生はもちろん私も気づいていなかったけれど、その理由は分かる。

「きっとね、転んだ原因が左足だったからだよ……」

「やっぱりそうだったか……」

「分かるの?」

「腫れてるところを触ったときだったから、なんとなくだけどね。昔傷めたんでしょ? それが古傷になってる感じだから」

 もはや即席看護師の千景ちゃんに隠す必要はない。お部屋に入って荷物を片付けてもらっている間に左足のことを話した。

 もし次に骨折でもしてしまったら、歩けなくなる可能性もあることや、体中の疲れから全身が石のように固くなってしまうことがあることも。

「そかそか。じゃあ明日も念のため安静だね。触った感じ、たぶん骨は大丈夫だと思う。でも捻挫で筋は痛めちゃってるから、明日むこうに帰っても腫れとか痛みが引かなかったら、ちゃんと整形外科のお医者さんに診せてね」

 お部屋のシャワーで汗を流させてもらって、千景ちゃんはきちんと湿布とテーピングと包帯、サポーターまで貸してくれて処置をしてくれた。これなら病院に行ったのと同じだ。

 あれだけ救護班になったことを騒いでいたのに、ちゃんとお家から装備を持ってきていたことに、改めてプロ意識を感じてしまう。

「これ、痛み止めに飲んでおくと楽になるよ」

「え? そんなお薬持ってたの?」

 そんな、道具だけじゃなく、まさかお家から在庫管理が必要なお薬を勝手に持ち出したんじゃ……?

「よく見て? 花菜だってお世話になるときあるでしょ? 女の子の日にさ? あれってちゃんと解熱剤って書いてあるの。学校で急に熱出したとかにも時間稼ぎに使えるし。この薬なら女子が持っていても変に思われないし、市販薬だから薬剤師さんはいらないでしょ?」

「すごぉ……。私全然知らなかった」

 これなら、私だって毎月お世話になる。そんなことにも使えるなんて。千景ちゃんは本当に看護師さんを目指しているのかな。

「千景ちゃんありがとう。もっと早く言っておけばよかったね……。黙っててごめんなさい……」

 こぼれ始めた涙が止まらない。彼女がいなかったら、私の学校生活はどうなっていたんだろう。

「ほらぁ泣かないの。このケガはワザとじゃないもん。今日も忙しかったけど楽しかった。花菜と先生が一緒だったから普通の修学旅行じゃ味わえない体験しちゃったもんね」

 そこで私もあの指輪をつけっぱなしだったことを思い出した。すぐに外して失くさないようにしまっておく。


 部屋着を兼ねたジャージに着替えたとき、部屋のドアがノックされた。

「松本、大丈夫か?」

「はい。千景ちゃんに診てもらいました」

「そうか、橘がいてくれてよかった。ありがとう」

 そういう先生は廊下からお盆を二つ持ってきてくれた。

「ふたり分の食事だ。終わったらフロントに電話してくれれば取りに来てくれるそうだ」

「先生は?」

「さすがにこの部屋で食べるわけにいかないから、みんなの会場に行くよ。あと、これな……」

 昼間言っていたように、皿うどんが二人で一皿という形で配膳されていたみたいで、あとは見慣れた学生向けと言っていい食事の用意。そこに小さな白い箱を隣に置いてくれた。

「帰ってから誕生日は別にやるから、今日はこれで許してくれ。明日は朝食前に荷物を出す必要がある。松本の分は朝に取りに来る。内線で電話するから、時間までに用意しておいてくれよ?」

「分かりました。ありがとうございます」

「二人とも今日は疲れただろう。手伝ってくれてありがとうな。ゆっくり休んでくれ」

「はい。おやすみなさい」

「おやすみ」

 そう言葉を残して部屋の扉は閉じられた。
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