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30章 救護班の大冒険
第117話 私の旅行は今日でひと段落
しおりを挟む「花菜、本当にいい旦那さまでよかったね」
千景ちゃんがプラスチックのフォークを持ってご機嫌顔だ。
「まったく、こんなので誤魔化されないってちゃんと言っておかなくちゃ」
「先生なりに急いで考えたんだよ。旦那さまを責めない責めない」
先生が最後に置いていった箱の中には、苺の載ったショートケーキがふたつ入っていたんだよ。
千景ちゃんの言うとおり、先生は夕食までのこの短い時間の中で買いに行ってくれていたことになる。
確かに今日が私の誕生日ではあるけれど、それと今日のお詫びの両方の意味だったのかな……。
「それでもあと1年は公表はできないし。私も卒業までは名前を変えないって決めてるし。変な噂が立たないようにするのって、なかなか難しいよ」
校長先生にもそれは約束した。私たちの関係は卒業までは関係者の内密にしておくこと。校内でも表向きは他人でいなければならない。
「そっか、だから先生もわざと『松本』って呼ぶのね?」
「そう。名前呼びしたら、もしそうじゃなくても勘がいい子は探りを入れてこようとするでしょ?」
だから、私からはお兄ちゃんと呼ぶことはないとしても、ときどき先生から名前呼びされることには返事の仕方に神経を使う。
だから、放課後はなるべく早く部室に行くか、「帰宅途中」の珠実園に移動することにしている。
「いろいろ苦労するねぇ。でもさー、あれだけ女子会トークに入ってこなかった花菜が実は一番進んでいたなんて、誰も思ってないよね」
「あ、そうだ。明日は私は大丈夫だからね。千景ちゃんは加藤くんと遊んできていいよ」
「花菜……、それじゃ花菜が……」
「ううん、いいの」
私も知ってる。
去年の秋から千景ちゃんに別のクラスに彼氏さんが出来たこと。でも、千景ちゃんたち二人も公表はしていなかった。
この修学旅行では大量の『お試しカップル』が誕生しているから、その中に紛れてしまえば悪目立ちはしない。しかも、今日の班行動と違って明日はその縛りもない。
千景ちゃんにはクラスが違うことで、せっかくの修学旅行にも別行動を強いられるという可哀相なことをしてしまっているから、最初からこの最終日は別行動を予定していた。
それに、今日のハプニングが加わって、私のこんな足では歩くことすら満足にできないだろうから、どこかでゆっくりと座って時間を潰していればいいと思っている。
このケガや特別な私たちのイベントがなかったとしても、最初から二日連続で街中とテーマーパークの両方で長距離を歩くのは厳しいと考えていたから。
だから敢えて明日用の服はアクティブではないものを選んで持ってきている。
「ごめんね、ありがとう……。本当に花菜はそれで大丈夫なの?」
「うん、私は今日メインのイベント終わっちゃったしね。明日はおまけだなぁ」
もう私たちの間に隠し事もない。
千景ちゃんとは、これからもいっぱいお話しして仲良しでいたい。
「当たり前じゃない。花菜とはずっと友だちなんだから!」
ケーキを食べながら、私は千景ちゃんと指切りをした。
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