140 / 170
34章 星屑のリフレイン
第139話 先生? ううん、お友達として。
しおりを挟む「結花さんは、私のことを何度も助けてくれました。だから……お願いです。もうそんなことを思いつかないでください。今は私もいます。力になれるか分からないけど、味方ではいられます」
「うん……。ありがとう。約束するよ」
指切りをしてくれる温かい小指。そして教えてくれた。私に割り当ててくれた珠実園のあのお部屋は、当時リハビリのために結花さんが休憩で使っていた部屋だったって。
茜音先生も、いつどんな理由で戻ってきてもいいように、ずっと使わないでいてくれた。だから結花さんの次の住人が私だったなんて嘘みたい。
何が起こるか分からない、私みたいな子のために、あの部屋の鍵を内緒でコピーして今でも持っているとも教えてくれた。
「入籍前日の夜に両親から言われました。『決して育てやすい子ではなかった。でも先生はお前を選んでくれた。これからは先生に感謝をしながら生きていくんだよ』と。それなのに、私はいつもみんなに迷惑をかけては謝ってばかり……。きっと、前世でとても悪いことをしてしまったのかもしれませんね」
「原田……」
「でも、これだけは胸を張って言えます。先生に出会えたこと。無理を承知で隣に置いてくれたこと。私の人生でこの先誰に何を言われても、私の一番の幸せなんです。それなのに、私は幸せをくれた先生にすら謝らなくちゃならないことだらけ……。それが私の人生なのかもしれないですけどね」
「原田。何も悪くないんだ。お前はあれだけ辛い思いをしても毎日を生きてくれている。それが俺に対する何よりものプレゼントだ。だから、謝るのは今日でおしまいにしよう」
「でも……」
「原田結花、先生の言うことがきけないか?」
結花さんを覗き込む陽人先生の瞳。その視線を逸らさずに涙を流しながらも受け止めている。
「分かりました……。では、どうしていけばいいですか?」
「これからも堂々と生きろ。お前は俺のただ一人の妻であって、彩花の母親でもあるんだ。それだけじゃない。何度も俺を救ってくれた。何も卑下することはない。結花がいてくれることが、俺にとって幸せなんだから」
「はい……」
ここから先は私たちが過度に干渉することはしない方がいい。啓太お兄ちゃんの手を握って二人でうなずく。
さっきのような話をするために、わざと立場を先生ではなく切り替えてくれたことはさすがだと思った。これからも珠実園だけでなく、私の大切なお友達でいてほしい結花さん。
「過ぎたことで謝る必要はない。原田結花の贖罪の時間はとっくの昔に終わっている。これからは小島結花として、ひとつひとつの人生を楽しめ。彩花が初めて歩いたとき、大喜びで電話をくれただろ。ああいうことを見つけていくんだ。そうすればいつの間にか良いことの方が増えていく」
「うん……」
「どんなに絶望的な状況でも小さな成果を見つけて前に進めるのが原田結花と他の生徒との差だった。それは今でも変わっていないだろう?」
「はい……」
「そのためには、これからもっと長い時間を生きていかなくちゃならないんだぞ? 頭のいいお前だ。説明しなくても意味は分かるよな?」
「はい……」
陽人先生は私たちにそっと目配せをして、小さくうなずいてから、結花さんを抱きしめた
「結花、いつもありがとうな」
「はい。先生がいてくれるからです」
いつの間にか花火ももう終わりに近づいている。
スターマインが水上に華やかにあがる。
「……花火大会も同じですね……。最後にフィナーレを持ってくるんですから、最初のうちにつまらないと帰ってしまってはもったいないです」
遠くではそろそろ大詰めのようで、スターマインが空を埋め尽くしている。
「本当……。花菜ちゃんたち、本当にごめんなさい。本当はここまで崩れるとは予想してなくて。あぁ、恥ずかしいなぁ……」
でも、結花さんは私たちを信頼してくれたからこそ、この場面をあえて見せてくれたんだと思う。
きっとひとりだけではあの辛い出来事を話すことはできなかった。私を諭すという名目の呼び水を使って、心の中にひとりため込んでいた物を吐き出した。
それなら、私たちがここに立ち会わせてもらった意味が見えてくるよね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
紙の上の空
中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。
容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。
欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。
血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。
公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。
となりのソータロー
daisysacky
ライト文芸
ある日、転校生が宗太郎のクラスにやって来る。
彼は、子供の頃に遊びに行っていた、お化け屋敷で見かけた…
という噂を聞く。
そこは、ある事件のあった廃屋だった~
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる