まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

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39章 珠実園での緊急会議

第160話 二人の覚悟と決意

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「私……、産みたいんです……」

「知子!」

 中島さんは隣のお母さんの制止を振り切った。

「分かってる。確かに間違ってるかもしれない。でもこの子は篠崎くんとの子だもん。お母さんとお父さんとも違って、私のこと好きだって抱いてくれて、私を愛してくれたんだもん。家から追い出されてもいい。このお腹の赤ちゃん、産みたいんです!」

「知子、いい加減にしなさい」

「だって、もう私分かるんだよ。お腹の中で元気に動いてるの。生きてるんだよ。お別れなんかしたくない。篠崎くんとの赤ちゃん、私が一人でも育てる……。だから……、お願いします……産ませて……ください……」

 中島さんがお腹を守るように押さえて泣いている。

 それはもうあの修学旅行で先生への告白を断られて泣いていた高校生の女の子じゃない。

 母親になる決意をした一人の女性としての姿のように私には思えた。

「中島……」

 篠崎くんが、そんな中島さんのそばに行って手を取る。

「もう、大丈夫……。私ひとりでも頑張る……から……。私の赤ちゃん連れていかないで……」

 きっとこれまでの時間、産むことに反対ばかりされてきたんだろうね。中島さんの顔が怯えていた。

「違う。中島、俺たち二人の子だ。元気に産んで欲しい。俺たちで育てよう」

「えっ……? でも……、大学だって……」

 篠崎くんが顔を縦に振っている。

「中島がそれだけ覚悟を決めてる。俺だって中島との子供だってわかってる。こうなった一番の責任は俺にある。中島を一人にはしない。うちの親ともそういう話をして来てもらったんだ」

 二人が篠崎くんのお父さんを見ると、頷いている。

「確かに、我々の世代では早すぎた過ちかもしれません。ですが、この二人が家族として生きていくというなら、それを支えるのが親の役目だとも思うのですよ。私たちもできる限りのことをしたいと思います。知子さん、情けない息子ですが一緒にいてやってもらえますか?」

 篠崎くんのお父さんがここまでの覚悟を決めるには本当に悩んだと思う。

「本当に……、いいんですか……?」

「事前のご相談もなく、非常に身勝手を言って申しわけなく思います。知子さんを預からせてください。息子に代わりお願いいたします」

 篠崎くんのお父さんが、中島さんのご両親に頭を下げた。

「知子は……、それで幸せになれるのか?」

「あなた!」

「静かに。自分は知子の答えを待っている」

「……頑張ってみる。いろいろ大変かもしれないけど、赤ちゃんと三人で頑張る」

「分かった。まだ若い二人だ。やれるところまでやってみなさい。ただし……」

「うん……?」

「条件が一つだけある。これからも親を頼っていいことを忘れないように」

「はい。ありがとう……ございます……」

 ふたたび泣き出した中島さんを、篠崎くんがそっと抱きしめていた。

「話はまとまったようね」

 結花先生と茜音先生が顔を合わせて頷いた。

「では二人の意志は分かりました。3月で高校も卒業ですし、その頃はまだ赤ちゃんも産まれる時期ではありません。ですから卒業だけはきちんとしてください。どのみち3学期はほとんど登校しなくても欠席にはなりません。ゆっくり身体を休めてください」


 両家のご両親に健さんと佳織さんが若年者同士の結婚についての話の相談に乗ることを約束してくれている間、千夏先生と結花先生は中島さんに今後の事をきちんと説明していた。

 赤ちゃんを産むと決めた。そして周りがそれを許してくれたのなら、きちんと準備をしましょうと。

 母子手帳を発行してもらって、必要な定期検診も受けること。そして元気な赤ちゃんを産んで欲しい。

 困ったり不安なことはいつでも相談に乗るし、妊婦の時からでも児童センターに来て構わないからねと。

「茜音先生、結花先生……。ありがとうございます。知っていてくれたんですね? こんな話、確かに私に話すことはできませんでしたね」

「花菜ちゃん、最近は長谷川先生をお借りしてごめんなさいね」

 茜音先生は、私と長谷川先生に話してくれた。

「ごめんな。こういうこと、話せるのはここしかなくて。まだ花菜には話せる段階にないと思ってたんだ」

「いいえ、賢明な判断だったと思います」

「花菜ちゃんと長谷川先生が、いつか嬉しいお知らせをしてくれることを待ってますよ」

「はい。約束します」

 私たちは顔を赤くして、二人で顔を見合わせて笑った。
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