162 / 170
39章 珠実園での緊急会議
第161話 人生のパートナーとは
しおりを挟むその夜、中島さんと篠崎くん、私と長谷川先生は珠実園にある和室にお布団を入れてもらって泊まることになった。
二人がきちんと話し合う必要があること。このままお家に帰っても中島さんは落ち着くことが出来ないかもしれないと結花先生が進言したから。
「あの、長谷川先生? 不思議だったんですけど、松本さんはどうして……」
篠崎くんの疑問は当然だと思う。珠実園から通っていることも知っている人は知っている。
でも、さっきの会議室の中に入れるのとはまた別だから。
「松本さんは特別なんですよ。僕が言うのも問題発言かもしれませんが、妊娠や出産を除いて、これから中島さんと篠崎くんが経験することをすでに済ませている女性なのですよ」
「え? それって……」
先生は、二人に見えるように私の手を握ってくれた。
「篠崎くんにとって中島さんが大切な人であるように、僕に松本さんはもう欠けてはいけない存在なんです。大切な人生のパートナーになってくれましたからね」
瞬時に意味を理解した二人は目を見開いた。
「そうか、それで校長先生は長谷川先生のところなら答えをくれるかもと言ったんだ」
まったく、あの校長先生は私たちをうまく利用しちゃって……。でも確かに他の人では本当に結婚や妊娠という問題に対して、同じ年代の目線で話が出来なかったと思う。
そのあと、中島さんはお家が落ちつくまで珠実園でカウンセリングを受けながら過ごすとの説明があったから、私の部屋を明け渡すことにした。
私の荷物も半分以上は運び出しが終わっている。残りの片づけをして掃除をするくらいなら、明日1日あれば十分に間に合う。
「長谷川先生の謎の恋人って、松本さんだったのね。そっかぁ、でもなんか納得しちゃった。体育祭のあれも、夫婦だったら当然よね」
「うん、幼なじみだから。私はそれしか恋愛ができなかったんだ。それにお母さんがいなくなっちゃって、恋愛と言うより私の保護者として引き取ってくれたって方が強いかも。中島さんが羨ましい」
「学校一の長谷川先生の奥さんだなんて、それはお互いさま。触ってみる?」
「いいの?」
笑顔で頷いて、パジャマのおなかの部分をたくし上げてくれた。まだほとんど外からは分からない。中島さんが私の手を少し強くお腹に押し込むと、私にはまだ無いお腹の中の存在感があった。この中に小さな赤ちゃんがいる。中島さんが必死で守ったんだよ。もう立派なお母さんだよね。
「もう大丈夫だから、元気に産まれてきてね。ちょっと先を越されちゃったな」
「私……、この子と生きていくって決めるまで本当に悩んだ。松本さんたちはそんなことないようにね。赤ちゃんは時期が来ればきっと来てくれるから」
さっきまであんなに険しい顔をして泣いていたのに、今は本当に優しい顔をしている。そんな中島さんとはずっと親友でいられると思った。
「そう言えば、私を放課後に準備室に呼んだのは、なんだったんですか?」
あまりにも大きな事件ですっかり忘れていたっけ。
長谷川先生が私に学校の名前が入った封筒を渡してくれた。
「今日通知が届いてな。これを渡したかった。あと2年間、しっかり勉強して、今よりももっといい嫁さんになってくれよ?」
「はいっ! それが終わったら赤ちゃん欲しいです」
「バカ、それはコウノトリに任せるって決めただろ?」
「長谷川先生、意外にロマンチストなんですね」
去年のように二人きりではなかったけれど、泣いた後にみんなで笑えて、忘れられない素敵な夜は過ぎていったんだ……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
紙の上の空
中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。
容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。
欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。
血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。
公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
となりのソータロー
daisysacky
ライト文芸
ある日、転校生が宗太郎のクラスにやって来る。
彼は、子供の頃に遊びに行っていた、お化け屋敷で見かけた…
という噂を聞く。
そこは、ある事件のあった廃屋だった~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる