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神様はいじわる?
第1章 5話
しおりを挟む黃泰に発つ6日前。
宇航は夢で久方ぶりに朱雀神と対話した。
明らかに宇航の部屋ではあるが、朱雀神と会うときは、必ず部屋は空っぽだ。そこに宇航と朱雀神のみが存在し、宇航と朱雀神は向き合った形で話をする。相変わらず、炎の中で揺らめいた姿だが、それが朱雀神であることの象徴でもある。
しかし今回の神託は、あまりにも唐突で、しかも予想外の物だったので戸惑った。
いつもなら、黄仁で起きている不穏な動きについての神託が多かった。
だが今回はある女性を助けろという。
「朱雀様、あまりも唐突過ぎて。何故その女性を助けろとおっしゃられるのです?」
「その女子は鳳家の巫女。今、失うわけにはいかん。」
「鳳家?とは・・・私の知らない家系ですが・・・朱雀様に関係が?」
「なければ来ない。五神にとってはなくてはならない存在だ。そしてお主らにとっても、必要な人間なのだ。鳳家は鳳凰の力を持つ家系であったが、500年前の戦いで鳳凰は傷つき眠りについた。そのため、巫女は力を失ったが、そろそろ鳳凰が目覚める。今、我らは手が離せぬ故、お前の力を借りねばならぬ。」
朱雀神の言っている事は理解出来ているが、疑問が多すぎる。
「朱雀様。鳳家とは鳳凰の守護を持つ家系という事ですか?しかし、そのような話は初耳ですが、鳳凰様は私達にどのような関わりが?」
「いつもより口数が多いな。まぁ良い。鳳凰については500年来、初めて話すのでな。知らなくて当然と言えば当然か。本来なら、鳳凰の力を受け継ぐはずが、先ほども言ったように、鳳凰は眠りについた。そのせいで、巫女の存在や話も封印された。だが、鳳家の血筋なら、それなりに話が伝わっているはずなのだが、今回は少し特殊でな。取りあえず、黄泰の胡家の長女を救え。」
胡家の長女の話ならば、少しばかり情報がある。宇航の友人の弟子で、不思議な物を作り出す女子だ。興味があって調べたことはあるが・・・
「お主の知り合いの知り合いであろう。誰よりもお前が適任なのだ。何が何でも助け出せ。」
「救い出せということは、危険が迫っていると言うことでございましょうか?」
「そういうことだ。急げ。」
「それで、巫女とはどのような存在なのですか?」
「巫女は齢18になると、才が開花する。その才は我々五神、全ての言葉を聞く事が出来るものだ。それも、必要な時に我々と会話が可能なのだ。それだけではないのだが、今はこれ以上、事情が話せぬ。近々、必ず必要となる力だ。頼んだぞ。」
そういうと、煙のように朱雀神は消えてしまった。
夢から覚めて、寝台で慌てて起きた物の、そこはいつもの乱雑に物を置かれた自室だった。
鳳家・・・巫女・・・
鳳凰が霊獣だということは、過去の文献で読んだことがあるような気がするが、それ以上を気にしていなかった。
しかし、朱雀様が言うとおりなら、桜綾・・・と言ったか、胡家の長女がその巫女だと言うことになる。
何故、そんな大事な家系が途絶えそうなのかは、朱雀様からは聞く事はかなわなかった。
大切な神託にしては時間も短ければ、情報も少ない。
だが、朱雀様の言葉は絶対であり、救い出さねばなるまい。
宇航も桜綾についてそこまで深く知っているわけではない。
まずは情報を早急に集め、救い出す算段を整える必要があるが、桜綾にどれくらいの時間が残されているのかもわからない状態だ。
急がねば・・・・
自室から飛び出すと、真夜中にかかわらず、夏月を呼んで必要な指示を出し始めた。
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