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17.来訪者
しおりを挟むぼろぼろと涙を流すリオンくん。
末っ子の私は誰かを泣き止ませる方法を知らない。
もちろんだがお兄様達は泣かないし。
困った末に私はソファーから立ち上がり手にしていたクッキーをリオンくんの口に突っ込んでいた。
「…え、えりーふぇひゃん??」
もごもごとクッキーを租借しながら、ぱちくりと目を瞬かせるリオンくん。
…あ、良かった、泣き止んだみたい。
「……取り乱してすみませんでした。あとクッキー、美味しかったです」
「ううん、大丈夫だけど…リオンくんが突然泣いちゃうから私も慌てちゃって、」
くぅううう…!
……急にクッキー食べさせちゃってごめんね、と続け様としたらどこからか何かの鳴き声の様な可愛らしい音が聞こえた。
「リオンくん、今の何の音だろう、ね…?……リオンくん?」
リオンくんに目を向けるとうつむきながらお腹を押さえて恥ずかしそうにぷるぷるとしていた。
え?
え?!!
今の音、リオンくんのお腹の音だったの?!
「す、すみません…!久しぶりに食べ物を食べたので…」
…真っ赤になって恥ずかしそうにしているこの可愛い生物は何ですか?
抱き締めちゃ駄目かな?
いや駄目だって分かってるけど!
可愛いものは可愛いよね!
…リオンくん、可愛すぎて罪深い。
「…エ、エリーゼさん?」
リオンくんに名前を呼ばれてハッと我に返る。
リオンくんの可愛さに脳内フリーズしかけた。危ない危ない。
ぶんぶんと顔を振ってから、お腹を空かせているリオンくんにマジックバックからサンドイッチが入ったバスケットを取り出し差し出す。
「リオンくん、これ食べて!もっと欲しかったら遠慮なく言ってね?まだまだあるから!」
「え?…あ、ありがとうございます。でも今どこから…?え?」
「それは後で話すから今はたくさん食べて!はい、ここに座って!」
「は、はい…!」
お腹を空かせている可愛いリオンくんを放っておくなんて出来ない…!
私は先程までジルと座っていたソファーへとリオンくんを誘導し、リオンくんのお食事タイムとしたのだった。
____
「美味しかったです…エリーゼさんありがとうございました」
「どういたしまして」
『私もクッキーたくさん食べる事が出来て満足です』
にっこりとお礼を言うリオンくんに続いて、私の膝の上でひたすらにクッキーを食べていたジルも満足そうに丸まっている。
ここはギルドなのになんだろうこの幸せ空間。頬がついついゆるんでしまう。
無事空っぽになったバスケットをしまい込みながら、リオンくんに好きな食べ物を聞いて買い出しでもしようかな、と考えていたら…
「あの!すみません。エリーゼ様でお間違えないでしょうか?」
「え?あ、はい…そうですが」
足早にやって来たギルド職員の女性に声を掛けられた。
「エリーゼ様に来客です。…ギルド内にまだいて下さって助かりました」
「…私に来客、ですか?」
私に来客?一体誰が?
ここに知り合いという知り合いはいないし。
家族の誰かならギルドで呼び出ししないはず。
全く心当たりのない来客。
ご案内しますので着いてきて下さい、と言われて来た所は、多分ギルドの応接室か何かで一番良い部屋の前。
どう見てもこの部屋の扉だけ格が違い、豪華な造りになっていたからだ。
ギルド職員さんに尋ねたらリオンくんも一緒に入室して良いらしい。
「…エリーゼ様をお連れ致しました」
『どうぞ』
そう言って開け放たれた部屋の大きなソファーに一人腰掛けていた人物と目がかち合う。
「……え?」
その顔を見て私は、わたくしは固まった。
__髪の毛、瞳の色は私の記憶とは違う。
けれど幼少の頃から見知った“彼”を見間違える訳がない。
…端正な顔付きでこの国の女性達を虜にする(らしい)、甘さを含んだ笑み。
“彼”はいつもの呼び方でわたくしの名前を呼んだ。
「…やあ、リーゼ。久しぶりだね」
どうして?!こんな所に貴方がいるのでしょうか…?!!
「…お久しぶりです。グレン様」
脳内の混乱を押し込めてエリーゼはこれまた久しぶりの淑女の礼を目の前にいる、この国の第三王子・グレンにしたのだった。
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追記2:ひとまず完結しました!
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