22 / 22
エピローグ.今度は隣で
1
しおりを挟む
「すみません、せっかく入ったのにマネージャーを減らしてしまって」
頭を下げる俺に、森田先輩と奥村さんは微笑んだ。
「いいのよ。事情は色々聞いているから。復帰できそうでよかった」
「ま,少しはマネージャーのことも気にしてくれたら嬉しいけど」
「もちろん。重い物を運ぶときは手伝うんで、声かけてください」
クラスマッチから一週間後。俺はマネージャーを辞めることを決意した。辞めて――今日からは選手になる。
試合のトラウマを克服した後、俺は改めて今後どうするかを考えた。悠理にも相談に乗ってもらい、やっぱりサッカーをやりたいと結論を出した俺は、サトセンに選手にさせてくれと頭を下げに行った。
「クラスマッチ見てたらそうくると思ってたぞ。俺的には大歓迎だ」
快く頷いてくれたサトセンには感謝しかない。
家で父さんと母さんにも選手に戻ると報告をすると、二人は涙を流しながら「よかった」と言ってくれた。今着ている灰色の半袖ジャージに黒いショートパンツは、復帰祝いにと二人が買ってくれたものだった。
コート脇でもう一度、愛用の黄色いスパイクの靴紐を結び直す。ただそれだけで戻ってきたという感じがした。今日からはコートの外ではなく、コートの内側が俺の居場所になる。
「ハル、早く! もうミーティング始まるよ!」
顔を上げると、悠理がコートの中心で大きく手招きをしていた。俺はふっと微笑んで、悠理の元へと駆けていく。
「ごめん、待たせて」
「全然いいって」
悠理と俺は恋人同士になっていた。けれど部活ではそういう雰囲気は出さないようにしようと決めていた。練習や部活の雰囲気を壊したくはなかったからだ。
とはいえ関係自体を秘密にしているわけではなく、山本や有岡を始めとする数人は俺たちが付き合っていることを知っている。知っても変わらない態度で接してくれる彼らが、俺にはとてもありがたかった。
ピピッとサトセンが笛を吹く。ミーティングが始まる合図だ。
サッカー部の選手としての始まりが――すぐそこまでやってきている。
ごくりと喉が小さくなった。身体が僅かに硬くなる。それでも勇気を振りしぼり、一歩前へと踏み出した。
そんな俺の隣で、悠理がそっと微笑んでくれた。
昔は俺が手を引いていた。
最近までは彼に手を引かれていた。
けれどこれからは、二人で並んで進んで行きたい。
きっとこの先も、たくさん苦しいことがあるだろう。中学時代のトラウマ以上に、辛いことが起こるかもしれない。
それでも悠理とならチームメイトとして――恋人として。お互いに支え合っていけると思うから。
「いっぱい楽しもうな、ハル」
「悠理と一緒なら絶対楽しくなる気がする」
二人並んで、コートを駆けていく。
広がる空は、青く澄みきっていた。
頭を下げる俺に、森田先輩と奥村さんは微笑んだ。
「いいのよ。事情は色々聞いているから。復帰できそうでよかった」
「ま,少しはマネージャーのことも気にしてくれたら嬉しいけど」
「もちろん。重い物を運ぶときは手伝うんで、声かけてください」
クラスマッチから一週間後。俺はマネージャーを辞めることを決意した。辞めて――今日からは選手になる。
試合のトラウマを克服した後、俺は改めて今後どうするかを考えた。悠理にも相談に乗ってもらい、やっぱりサッカーをやりたいと結論を出した俺は、サトセンに選手にさせてくれと頭を下げに行った。
「クラスマッチ見てたらそうくると思ってたぞ。俺的には大歓迎だ」
快く頷いてくれたサトセンには感謝しかない。
家で父さんと母さんにも選手に戻ると報告をすると、二人は涙を流しながら「よかった」と言ってくれた。今着ている灰色の半袖ジャージに黒いショートパンツは、復帰祝いにと二人が買ってくれたものだった。
コート脇でもう一度、愛用の黄色いスパイクの靴紐を結び直す。ただそれだけで戻ってきたという感じがした。今日からはコートの外ではなく、コートの内側が俺の居場所になる。
「ハル、早く! もうミーティング始まるよ!」
顔を上げると、悠理がコートの中心で大きく手招きをしていた。俺はふっと微笑んで、悠理の元へと駆けていく。
「ごめん、待たせて」
「全然いいって」
悠理と俺は恋人同士になっていた。けれど部活ではそういう雰囲気は出さないようにしようと決めていた。練習や部活の雰囲気を壊したくはなかったからだ。
とはいえ関係自体を秘密にしているわけではなく、山本や有岡を始めとする数人は俺たちが付き合っていることを知っている。知っても変わらない態度で接してくれる彼らが、俺にはとてもありがたかった。
ピピッとサトセンが笛を吹く。ミーティングが始まる合図だ。
サッカー部の選手としての始まりが――すぐそこまでやってきている。
ごくりと喉が小さくなった。身体が僅かに硬くなる。それでも勇気を振りしぼり、一歩前へと踏み出した。
そんな俺の隣で、悠理がそっと微笑んでくれた。
昔は俺が手を引いていた。
最近までは彼に手を引かれていた。
けれどこれからは、二人で並んで進んで行きたい。
きっとこの先も、たくさん苦しいことがあるだろう。中学時代のトラウマ以上に、辛いことが起こるかもしれない。
それでも悠理とならチームメイトとして――恋人として。お互いに支え合っていけると思うから。
「いっぱい楽しもうな、ハル」
「悠理と一緒なら絶対楽しくなる気がする」
二人並んで、コートを駆けていく。
広がる空は、青く澄みきっていた。
16
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
俺の推し♂が路頭に迷っていたので
木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです)
どこにでも居る冴えない男
左江内 巨輝(さえない おおき)は
地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。
しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった…
推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
胎児の頃から執着されていたらしい
夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。
◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。
◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる