8 / 26
間章 一
室長室
しおりを挟む
UCIA日本支部である新宿の地下深くに存在する拠点、グラウンドベース。室長室の中で、ハーディは数々のデータに目を通しながら時折、天井を見つめていた。そんなとき、ドアをノックする音がする。
「入りなさい」
入ってきたのは神蔵だった。険しい表情をした神蔵は、ハーディのデスクにそのまま向かってくる。
「――どういうつもりだ? どうして姫宮をUCIAに配属させた? 俺は何も聞いてないぞ」
睨み付けるような視線でハーディを見つめる神蔵。ハーディはデスクに置いてある珈琲を口に含む。
「わたしにUCIAの人事権があると思っているの? 姫宮の採用は上層部の判断よ。文句があるなら――国防総省にでも行ってくることね」
「……ふざけるな。姫宮をFBIに戻せ。あいつはUCIAにいる人間じゃない」
「……まあ、可愛い子だものね。FBIからの報告書は読んだけど、並外れた直感能力を持ち合わせており、幾多の事件解決に貢献した――とあったわ。貴方も色々とそのおかげで命拾いした事もあったみたいね」
「そんな不確かものを当てにするほど、ここは人員で困っているのか? さっきも言ったが、姫宮をFBIに戻せ。あいつは軍人じゃないんだぞ!」
神蔵が声を荒らげる。
「――私もさっき言ったけど、姫宮のUCIAへの配属は上層部の決定よ。只でさえ貴方はUCIAで手厚くもてなしてるの。貴方が関わった事件の詳細は私達にも伏せられてるわ」
「……何が言いたい?」
「――貴方、CODE:AWが本当は何なのか、知っているんじゃ無いのかしら?」
氷のような視線で神蔵を見つめるハーディ。だが神蔵もハーディを睨み付けるように言葉を続ける。
「……それについては知らんな」
「――本当かしら?」
睨み合う二人。しばらく時が止まったかのように、二人は微動だにしない。
「……まあ、いいわ。貴方が所属していた機関についてはおおよそ見当がついているし、何が起こったかもある程度把握してる。あなたが姫宮を心配する気持ちは分かる。しかし配属の事実は変えられないし、FBIへ戻すことも私には出来ない。それはハッキリ言っておくわ」
「…………」
「もう1つ。何があったかは知らないけど、一人で先走るようなことは慎みなさい。同じ過ちを繰り返したくなければね……」
しばらくすると、神蔵は何も言わずに室長室を出て行った。
「……まったく、ここは問題児が多いわね。頭が痛くなるわ……」
モニターに映る人事データを眺めながら独り言を呟き、ため息をつくハーディだった……
「入りなさい」
入ってきたのは神蔵だった。険しい表情をした神蔵は、ハーディのデスクにそのまま向かってくる。
「――どういうつもりだ? どうして姫宮をUCIAに配属させた? 俺は何も聞いてないぞ」
睨み付けるような視線でハーディを見つめる神蔵。ハーディはデスクに置いてある珈琲を口に含む。
「わたしにUCIAの人事権があると思っているの? 姫宮の採用は上層部の判断よ。文句があるなら――国防総省にでも行ってくることね」
「……ふざけるな。姫宮をFBIに戻せ。あいつはUCIAにいる人間じゃない」
「……まあ、可愛い子だものね。FBIからの報告書は読んだけど、並外れた直感能力を持ち合わせており、幾多の事件解決に貢献した――とあったわ。貴方も色々とそのおかげで命拾いした事もあったみたいね」
「そんな不確かものを当てにするほど、ここは人員で困っているのか? さっきも言ったが、姫宮をFBIに戻せ。あいつは軍人じゃないんだぞ!」
神蔵が声を荒らげる。
「――私もさっき言ったけど、姫宮のUCIAへの配属は上層部の決定よ。只でさえ貴方はUCIAで手厚くもてなしてるの。貴方が関わった事件の詳細は私達にも伏せられてるわ」
「……何が言いたい?」
「――貴方、CODE:AWが本当は何なのか、知っているんじゃ無いのかしら?」
氷のような視線で神蔵を見つめるハーディ。だが神蔵もハーディを睨み付けるように言葉を続ける。
「……それについては知らんな」
「――本当かしら?」
睨み合う二人。しばらく時が止まったかのように、二人は微動だにしない。
「……まあ、いいわ。貴方が所属していた機関についてはおおよそ見当がついているし、何が起こったかもある程度把握してる。あなたが姫宮を心配する気持ちは分かる。しかし配属の事実は変えられないし、FBIへ戻すことも私には出来ない。それはハッキリ言っておくわ」
「…………」
「もう1つ。何があったかは知らないけど、一人で先走るようなことは慎みなさい。同じ過ちを繰り返したくなければね……」
しばらくすると、神蔵は何も言わずに室長室を出て行った。
「……まったく、ここは問題児が多いわね。頭が痛くなるわ……」
モニターに映る人事データを眺めながら独り言を呟き、ため息をつくハーディだった……
0
あなたにおすすめの小説
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる