恋愛 出会いから婚約まで

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誕生日

 今日はドラガル様の誕生日。以前に約束した通りドラガル様は休みと取ってくれたので、今日は一日デートである。凄く楽しみでなかなか昨晩は眠りにつくことはできなかった。以前同様王宮の裏口で待ち合わせをした。待ち合わせ時間の三十分前に待ち合わせ場所に到着すると程なくしてドラガル様がやってきた。私が選んだブーツを履いて・・今日もやっぱりかっこよかった。
「おはよう。エリーゼ」
「おはようございます。ドラガル様。お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。なんか照れるなぁ」
「そうですか」
「あぁ、この年になって誕生日を祝ってもらうなんて思っていなかったから・・」
「ドラガル様、今日は一日私が責任を持って楽しめるようプランを練って来たので大船に乗ったつもりで付いてきてくださいね」
「それは楽しみだなぁ」
「じゃあ、行きましょうか」
そう言うと私はドラガル様の手を引いて城の裏手へと歩き出した。裏手には屋敷から連れてきた私の愛馬のカトリーヌを繋いでいたのだ。
「ドラガル様、申し訳ありませんが、今日は私を乗せて隣町まで行っていただけないでしょうか」
私は事前にドラガル様に馬に乗れる格好をお願いしていたのだ。ドラガル様の誕生日に私がズボンではいけない気がしたので・・私はドラガル様に乗せてもらう形で馬に乗ることにしたのだ。
「あぁ、別にかまわないが、この馬は・・」
「私の愛馬でカトリーヌです」
私がそう言い終える前に、ドラガル様はカトリーヌの頭を撫でていた。カトリーヌは嬉しそうに鼻を鳴らしながら頭を摺り寄せていた。
「綺麗な栗毛色だなぁ。もしかして牝なのか」
「はい、牝です。実は騎士様にいただいたんです」
「えっ、そうなのか。馬をプレゼントしていたのか」
と驚いていた。そうしてドラガル様はカトリーヌに跨ると前に私を乗せて走り出した。前に祖父が言っていた通りドラガル様は馬を操るのが上手く、今日初めて乗ったカトリーヌをすぐに乗りこなしていた。
「ドラガル様って本当に馬を操るのが上手いですよねぇ」
「そうかなぁ。エリーゼの馬が賢いのだろう。せっかくだしちょっとスピードをだしてもいいか、今日はエリーゼは横乗りだからしっかり俺に掴まっておくように」
「はい」
私は頷くとドラガル様に抱き付いた、するとドラガル様も手綱を持ちながら後ろから私を抱き締めるようにしてから馬の速度を速めた。いつも私が走らせている時とは違い、驚くほど速く、私は嬉しくなってドラガル様の方を振り向いた。するとドラガル様が真剣な表情で手綱を握っていたのだ。私はしばらくの間見とれてしまっていた。すると、視線を感じたドラガル様が速度を緩め私の方を見た。
「どうしたんだ」
「いいえ、馬に乗っているドラガル様もかっこいいなぁって思って・・」
私が照れながらそう言うと・・ドラガル様は馬を止めると照れている私に口づけてきたのだ。私が驚いているとドラガル様はまた馬を走らせ始めた。私は訳が分からず俯いていると後ろから
「可愛いなぁ」
とドラガル様の呟きが聞こえてきた。隣町に着くと馬を知り合いの家に預け、馬につけていた鞄からバスケットを取り出し腕に掛けた。するとすぐにドラガル様が
「エリーゼ、その荷物を持って歩くのか」
と尋ねてきた。私が頷くと、すぐにドラガル様が持ってくれた。私が自分で持つと言ったが
「女性に荷物を持たせられない」
と断ってドラガル様が持つことになった。そうしてドラガル様と二人で街中の散策に出掛けた。私はドラガル様の手を引きながら街中を歩いた。
「どのお店に入ります」
「そうだなぁ。エリーゼと一緒に服が見たいなぁ」
ドラガル様がそう言ったので私は男性と女性の服が置いてあるお店へ入った。
「ドラガル様の服を見ましょうか」
と私は言うと普段に着れるようなセーターを選びドラガル様の体に当てた。何も言わずに私にされるままにしているドラガル様を見ていると無性に愛おしさが込上げてきたがぐっとこらえ、ドラガル様に似合いそうなものを真剣になって選んでいた。何枚かあて一枚のレンガ色のセーターを私が選ぶとドラガル様が店員に
「このセーター試着したいのだが」
と声を掛けて試着室の場所を聞いていた。私が他の服を見ていると急にドラガル様に手を引かれ試着室に引き込まれた。ドラガル様は私を試着室に引き入れた途端
「今日は俺の誕生日だから大目に見てくれるか」
と尋ねてきた。私は言われている意味がよくわからなかったがとりあえず頷いた。するとドラガル様は私を抱き締めると口づけてきたのだ。私があまりにも急な出来事だったので驚いていると
「俺のために真剣になって服を選んでいる姿を見ていたら気持ちが抑えきれなくなった。前にブーツを選んでもらった時もそうだったがあの時はまだ付き合っていなかったからなぁ。今日はもう付き合っているから我慢しなくてもいいだろう」
と私に尋ねてきた。私は笑顔で頷いた。すると再び口づけをされたが時間は短くすぐに終わってしまった。
「ここは試着室だから少しだけ・・」
ドラガル様はそう言うと持って入ったセーターに素早く着替え鏡で確認をしていた。私はその姿を後ろから眺め、セーターがドラガル様によく似合っていたのでまた鏡越しに見とれていた。すると、鏡の中のドラガル様と目がった。
「エリーゼも気に入っているみたいだから、これにするよ」
と言うと試着室から出てはすぐにそのセーターを購入していた。それからベルトや財布などの小物を一緒に見てから次は私の服を見ることになった。
「これどうですか、似合いますか。こっちとこっちだったらどっちがいいと思います」
私が尋ねるとドラガル様は見比べながら
「どちらも可愛いからなぁ。エリーゼはどっちがいい」
と言った。私は自分でどちらかというといいなぁと思っている方を前に当てドラガル様に見せた
「あぁ、いいと思う」
ドラガル様は笑顔でそう言った。私は嬉しくなりその服をすぐに購入した。それから今度は隣のアクセサリーのお店へ入った。中に入って私がブレスレットや指輪を見ているとドラガル様が
「エリーゼ、何か欲しいものはあるか」
と尋ねてきた。
「そうですねぇ。そんなに欲しいとは思いませんけど、アクセサリーって見ていても綺麗で飽きないんですよねぇ」
と言いながら時々手に取りながら見ていた。ドラガル様は途中まで一緒に眺めていたが、大きな置時計が気になったのか店の奥へ移動していた。私も移動して今度はネックレスが飾ってあるところを見ていた。すると、赤い薔薇がついたシンプルなネックレスが気になり手に取って見ていると後ろから
「エリーゼ、いいのはあったか」
とドラガル様から声が掛かった。私はまた
「いいえ、特にほしいものは・・」
と言うとネックレスを元に戻し、今度は違う店に行こうとドラガル様を誘った。次は食料品が並ぶお店だった。二人で食品を見ながらよく食べるメニューなどを話していた。店を回りながら
「ドラガル様、今日は昼ご飯を作って来たんです。飲み物を買って前みたいに公園に行きましょう」
と言った。すると
「あぁ、だからこのバスケットを持ってきたのか」
私は笑顔で頷くと、
「おいしいかどうかは、補償できませんよ」
「エリーゼの手作りだったらおいしいに決まっている」
ドラガル様は笑顔でそう言うと私の手を引き飲み物売り場へと移動した。
飲み物売り場でフルーツジュースを購入すると近くの公園へと移動した。公園の芝に敷物を敷いてそこに座るとバスケットからお弁当箱を取り出した。中には卵や野菜、肉を挟んだサンドイッチを詰め込んでいた。以前に作ったサンドイッチはドラガル様はすぐに食べ終わってしまっていたので、ドラガル様の分は私のとは違い肉を多めにしてボリュームをあげていた。ドラガル様はそのお弁当を見るととても喜んでくれた。そうして話をしながら二人で昼食にした。
「エリーゼのご飯は本当においしい。なんていうか俺好みの味付けでいくらでも食べられる」
ドラガル様は食べ終わりそう言うと横になった。私は照れながら
「ドラガル様に気に入ってもらえてよかったです。頑張ったかいがありました。ドラガル様、食べてすぐに横になると太ってしまいますよ」
と照れながら言った。しばらく食後の会話を楽しんでから片付けると二人で公園内を散歩した。散歩しながら
「ドラガル様、今日は何時まで大丈夫ですか」
と尋ねた。
「今日は、エリーゼのために休みをとったから別に何時になってもかまわない」
と返答があった。私は安堵し
「実は街のレストランで夕食を予約していていたのでよかったです」
街中を歩くと私たちが付き合っていることが広まるとまずいと思った私は公爵という立場を利用して押させたレストランだった。そのレストランはよく会合などに使用され個室でプライベートがしっかり確保されているのだ。そしてそこから見える街の夜景が凄く綺麗なのだ。
「ドラガル様、食後のデザート食べに行きませんか」
歩きながら私が言うと
「えっ、今食べ終わったところだが、エリーゼは食べられるのか」
「はい、甘い物は別腹っていうでしょう。ドラガル様は厳しいですか」
ドラガル様に尋ねると
「デザートは無理そうだが、食後のコーヒーを飲みたいから行こうか」
と返答してくれた。私は公園内になるガラス張りになったテラスがあるケーキ屋さんに行った。お店の中へ入ると棚の中にフルーツをふんだんに使用したケーキがズラーと並んでいた。そうして端に長めのガラス容器にフルーツや生クリームやスポンジを使用した食べ物が飾ってあった。私は一目見てそれが気に入り、それを注文した。ドラガル様はコーヒーを注文して私たちはテラスの端の席に座った。
「一度、ここに来てみたかったんです。ここって眺めが綺麗ですよねぇ」
そう言いながら景色を眺めているとさっき注文した品物が届けられた。
「うわー、美味しそう。いただきまーす」
と言ってひとくち頬張った。
「あぁ、美味しい。ほっぺがとろけるー」
私がそう言いながら自分の頬を押さえているとコーヒーを飲んでいたドラガル様が
「そんなに美味しいのか」
と声を掛けてきた。
「ドラガル様も食べてみます」
私が尋ねると
「じゃあ、少しいただこうかな」
と言って、口を開けたのだ。私はどうしようかと迷ったがスプーンですくうとドラガル様の口へと運んだ。ドラガル様は口に含むと
「本当だ、美味しいな」
と平気そうにそう感想を言った。私は照れながら
「ドラガル様、恥ずかしくないんですか」
と問い掛けた。するとなにがと言わんばかりの表情で
「何かしたか」
と返答されたのだ。
「いえ、こんな店の中で食べさせてもらうことがです」
と私が小声で言うと
「別に、何も思わないが・・家でも兄弟でよく食べさせ合いはしていたから・・美味しいと聞いたら食べたくなるだろう。エリーゼの家ではしないのか」
「私の家では、このようなことはしないですねぇ」
「そうだったのか。悪かった」
「いえいえ、悪いとかではないんです。ただちょっと恥ずかしかっただけで・・でもドラガル様が私の差し出したスプーンで食べる姿は可愛くて・・できればもっと食べさせたくなります」
私が照れながらそう言うと
「そうか、じゃあ、エリーゼが食べさせたいタイミングでスプーンを出してくれ、さっきちょっと貰って俺ももう少し食べたくなったから」
ドラガル様は笑顔でそう言うとテーブルに両肘をつきながら私が食べているのを笑顔で見ていた。私は恥ずかしかったが嬉しく時々ドラガル様にスプーンを差し出しながら食べた。最後のひとくちを食べ終わり
「あぁ、美味しかったです。でもこの量はやっぱり一人で食べるには多かったですね。ドラガル様に一緒に食べてもらえてよかったです」
と私が満足して言うとドラガル様も
「美味しかったなぁ。俺もエリーゼに食べさせてもらったから普通以上に美味しかったと思う。照れながら俺の口にスプーンを運んでくるエリーゼは可愛かったなぁ」
それを聞いて私はまた恥ずかしくなった。それから店を出ると自分たちの街へと帰ることにした。
「レストランに行く前に一カ所寄ってもらいところがあるんですけど・・私はそう言うと以前ドラガル様と一緒に行ったケーキ屋さんへとドラガル様を連れて行った。そうして知り合いの家に預けていたカトリーヌを迎えに行くと街へと戻った。街に戻ると以前ドラガル様と一緒に行った従兄が経営するケーキ屋へと向かった。店に到着すると私はドラガル様に本当のことを打ち明けた。
「以前ここにきたとき、なじみだと言ったんですけど・・実は違って本当は従兄がしているお店なんです。あの時は自分の身分がドラガル様に知れたくなくてグレンに頼んで嘘に付き合ってもらったんです」
私はそう言うとドラガル様を店の中へと案内した。するとグレンが姿を現し
「この間はすまなかった。嘘をつく形になってしまって」
とドラガル様に謝ってくれた。ドラガル様は気にしていないと笑顔で答えていた。そうしてしばらく二人で話した後グレンが
「エリーゼ、もうそろそろ時間じゃないのか。奥の冷蔵庫に入れてあるから持って行くのを忘れるなよ」
とウインクしながら言ってきた。私は急いで冷蔵庫から箱を取り出すと店を後にした。店を出る時グレンがドラガル様に何か言っていたのが気になり
「さっき、グレンなにか言っていました」
と尋ねるとドラガル様は照れながら
「エリーゼが昨日から頑張って作っていたから、しっかり味わってやってくださいと言われたが・・」
私はそれを聞いて恥ずかしくなり俯きながら
「実は昨日も休みを取ってグレンのお店でケーキを焼いたんです。以前から自分でケーキは焼いていたんですけど、もっと美味しいケーキが作りたくて・・」
私は照れながらそう言うと足早にレストランへと向かった。レストランに到着すると最上階の個室へと案内された。私は持参したケーキを店員に渡し個室へと向かった。
「こんな立派なところを予約してもらって、なんだか申し訳ないのだが・・」
「そんなことないです。いつもドラガル様の屋敷に招待してもらっていましたし、私も一応王妃付きの侍女なんでそれなりに給料ももらっていますし、今日は私に任せてください。ここの肉料理凄くおいしいんですよ」
と私が笑顔で言うと
「じゃあ、今日はエリーゼにしっかりご馳走になることにする」
とドラガル様は笑顔で言った。席に着くとすぐに料理が運ばれてきた。本当はレストランなのでお酒でも飲みながらになるのだが私は十七歳でドラガル様はお酒を飲むと困ったことになるので今日は止めておいた。メインの肉料理を食べ終わるとケーキが運ばれてきた。
「このケーキって・・」
「はい、私が焼いたケーキです。グレンのケーキには敵いませんけど、よかったら食べてやってください」
「あぁ、いただこう」
そう言うとドラガル様はぺろりとケーキ四分の一を食べた。
「エリーゼ、とても美味しかった。ありがとう」
私たちはケーキを食べ終わると窓際のソファーに場所を移すと夜空を寄り添いながら眺めた。そうして私はポケットから包みを取り出した。
「ドラガル様、お誕生日おめでとうございます」
私が包みを渡すとドラガル様は驚いた表情で受け取り
「ありがとう、こんなに色々してもらってなんだか申し訳ない感じがするが・・でも嬉しいよ」
「よかったです。よろこんでもらえて」
私がそう言うとドラガル様は笑顔で包みを開けた。そうして中身を取り出した。中には黒革で手首のボタンにガーネットがあしらわれている手袋だった。この間一緒に過ごしている時、ドラガル様が手袋をしていないことが気になりプレゼントにと購入したのだ。ドラガル様は手にはめると目の前に掲げて見ていた。そうして私の方を向くと
「エリーゼ、ありがとう気に入った。でも今は外してもいいだろうか。エリーゼに触れたいから」
と言ってきた。私は恥ずかしかったので下を向いて頷いた。するとドラガル様は手袋を脱ぐと両手で私の頬に触れると私を上に向かせ
「エリーゼ」
と私の名前を呼び口づけてきた。私が口づけに応えていると・・
「あぁ、早くエリーゼと婚約したい」
とドラガル様は呟くと私のことを強く抱き締めた。私がドラガル様にされるがままでいると
「エリーゼ、少しは警戒したほうがいい」
と言い、今度は首筋に口づけをしてきた。そうするとこの間ドラガル様に「気持ちいい」と聞かれたことを思い出してしまい、ドラガル様の事をいつも以上に意識してしまった。すると全くくすぐったくなくなり段々体の体温が上がってくるような感じがしだした。私は急いでドラガル様の動きを止めた。
「ドラガル様、気持ちいいから止めてください」
それを聞いたドラガル様はただただ大きく目を見開いたのち額に手を置き何かに必死に耐えているようだった。私が
「ドラガル様、大丈夫ですか」
と声を掛けると、ドラガル様は俯いたまま絞り出すような声で
「それは反則だろう」
と呟いた。私は訳が分からずその様子を眺めていた。しばらくするとドラガル様は顔を上げ私を自身の肩に寄り添わすと夜空を眺めた。私もドラガル様の肩に頭を置きながら夜空を眺めた。
そうしているうちに時間はあっという間に過ぎ帰る時間になった。
「エリーゼ、そろそろ帰ろうか」
私は寂しかったが仕方なく頷くと帰る準備をした。レストランを後にすると私たちは裏口まで他愛もない会話をしながら歩いた。裏口に到着するとドラガル様は
「じゃあ、ここで。今日はありがとう、凄く楽しい一日だった」
「喜んでもらえて良かったです・・楽しい時間ってあっという間に過ぎてしまいますねぇ・・私はまだ一緒に居たいです」
と私はつい本音を言ってしまった。今言っても仕方ないと思っている自分がいたにもかかわらず・・それを聞いたドラガル様は無言で私の手を引くと林の中へ入って行くと木の後ろへと私を連れて行った。もうすっかり遅い時間になっていたため木の後ろへ行くと周りは真っ暗で二人の姿は周りからは見えなくなっていた。
「俺もまだエリーゼと一緒に居たい」
ドラガル様はそう言うと強く私を抱き締め口づけてきた。私は口づけに応えながらドラガル様の背中に手を回した。しばらく口づけをした後ドラガル様は私から少し距離を取ると私のドレスのボタンを上からはずしだした。私はその様子を何も言わずに見つめていた。するとドラガル様は胸の谷間が見えるあたりまでボタンを外すと少し体をかがめ私の顔を見上げながら
「エリーゼ、何度も言っているだろう。警戒しないといけないと・・」
ドラガル様はそう静かに言うと私の胸の谷間に口づけた。いつもと違い強い口づけでチクリと痛みを感じた。その後も何度か軽い口づけを胸の谷間に受けているとまた体温が上がってくる感じがしてたまらなくなり
「ドラガル様」
と呟いた。するとドラガル様は私の胸元から顔を上げ、私の耳元で囁いた。
「エリーゼに俺のしるしを残した。これでエリーゼは俺のものだ。このしるしがある間は俺を感じていてくれ」
ドラガル様にそう言われ自分の胸元を見ると赤くうっ血している皮膚が目に入った。私は顔に熱を感じながらそこに触れると
「嬉しいです」
と答えた。
「もうこれ以上遅くなるわけにいかないから・・」
ドラガル様はそう言うと私のドレスを直すともう一度私を抱き締めた。私がドラガル様を見上げているとドラガル様が
「できれば俺にもエリーゼに同じようにしるしを残してほしい」
と言った。私は恥ずかしかったが、ドラガル様にしるしを残してもらえたことが嬉しかったので
「分かりました」
と言うとドラガル様のシャツのボタンを外した。そうしてドラガル様に言われるように胸元に口づけた。一回では上手にしるしをつけることができなかったのでもう一度頑張って口づけた。なんとかしるしが残せたので見上げるとドラガル様が何とも言えない表情で私を見つめていた。私たちはもう一度口づけを交わした。その後ドラガル様は服を整えると
「また厩舎に行くよ」
と言った。私は胸についたしるしがあるあたりを手で押さえながら
「待っています」
と言ってドラガル様に手を振り侍女室へと向かった。途中たまらず振り返ってドラガル様を見るとさっきプレゼントした手袋を身につけて同じように胸に手を当てているドラガル様の姿があった。私は同じ気持ちであろうドラガル様を思うと急に嬉しくなり急いで自室に戻るとすぐに湯あみを済ませ胸元のしるしを確認した。見ていると先程の光景が蘇りなんとも言えない気持ちになった。しるしに触れているとドラガル様に触れている感じがしたのでベッドの中でもしるしに触れ、ドラガル様を感じながら眠りについた。

その二日後、私が食堂の入り口から中に入ろうとした時、棚の陰から出てきた人とぶつかった。
「すまなかった。大丈夫か」
それはドラガル様の声だった。私は振り返りその姿を確認した。やはりドラガル様でなんと顔がやや赤くなっているのだ。そうしてシャツのボタンをいくつか外しているのだ。
私は急いで立ち上がるとドラガル様に駆け寄った。
「私は大丈夫ですけど、騎士様は大丈夫ですか」
「大丈夫だ、ちょっと飲み過ぎただけだ」
そう言ったドラガル様は立ち上がろうとしてふらついた。私は咄嗟に
「騎士様、裏庭にベンチがあるのでそこで休まれてはどうですか」
と支えながら声を掛けてしまった。するとすぐにメアリーがフォローしてくれた。
「騎士様、そうした方がいいですよ。あそこ陰になっているし人目もないのでゆっくり休めますよ」と言って一緒に居た騎士様は近寄らないようにしてくれた。
「ちょっと、休ませてもらってくる。アワードは先に帰って休んでくれ」
ドラガル様はそう言うと私に支えられながら歩き出した。
「エリーゼ、すまない」
と言ったドラガル様に私は怒りながら
「お酒は私と一緒の時だけだった言ったのに・・」
と言った。ドラガル様は酔うと色気が増してやや我儘になるのでそんな姿を他の人に見せたくなかったからだ。それにぶつかったのが私だったからよかったものの、もし他の令嬢にぶつかっていても同じように支えてもらってベンチに行ったのかと思うとさらに腹が立った。私が怒ってそのことを言うとなぜだかドラガル様は嬉しそうに私の頬に口づけてきたのだ。私は酔っているドラガル様にはあまり近づかない方がいいのではと一瞬考えたが何か飲む理由があったのではとも考え、これ以上言うのは止め、ドラガル様の姿が食堂から見えないようベンチの一番奥に座らせ自分は反対側に座った。ドラガル様はどうして離れて座るんだと言った表情で私の方を見ていたが、私が足をたたくと嬉しそうに横になり膝に頭を置いてきた。そうして私の手に触れながら
「何回も言っているだろう。こんなことをするのはエリーゼだけだ。エリーゼ、好きだ」
と言うと私の手に口づけてきた。私は恥ずかしくなりドラガル様の方を見るのを止めた。するとすぐに寝息が聞こえてきた。やっぱりドラガル様にお酒は飲ませないと強く誓った。そうしてベンチに座り風にあたっていると
「エリーゼ、エリーゼ」
と私を呼ぶ声が聞こえてきた。私が目を開けると視界に庭が広がっていた。私はドラガル様に膝枕をしていたことを思い出した。しかし、私は座ってはいるがなんとドラガル様に覆いかぶさる形で眠っていたのだ。
「すみません、眠っていました」
「別にかまわない。寝顔が可愛かったから」
それを聞いた私は
「ドラガル様、まだ酔っているんですか」
と声を掛けた。すると
「まだ少しお酒は残っているが酔ってはいないと思うが・・」
とドラガル様は言うと起き上がった。
「そろそろ、部屋に戻るよ。ずっとこうしていたいがまた今日も夜勤になるから・・今日は出会えてよかった」
と笑顔でそう言うと耳元で
「しるしはまだ残っているか」
と尋ねてきた。私は胸元に触れながら頷いた。するとドラガル様は嬉しそうに笑いながら
「よかった。俺の方はもう消えてしまいそうだ」
と言った。私はドラガル様のシャツの中を見たがしるしは分からなかった。私は悲しくなり気付いた時にはドラガル様を押し倒して胸元に口づけていた。
「エリーゼ、ここではまずい。誰かに見られてしまう」
慌ててドラガル様が私に言った時にはもうしるしはしっかり付いていた。私は満足すると起き上がり何事もなかったように
「失礼します」
と別れを告げると急いで部屋へと戻った。なんて大胆なことをしてしまったんだろうと後悔しながら・・
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