恋愛 出会いから婚約まで

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出会い

 朝の五時に夜勤勤務が終わりいつもの日課になっている馬の世話に厩舎に向かう。夜は侍女として王宮で働き、仕事が終わると厩舎に向かい馬の世話をすることになっている。これは侍女として働くことを親から告げられた時に私からお願いした条件だった。子どものころから乗馬が好きで馬が大好きな私は少しでも王宮での安息の地を求め交渉したのだった。夜勤明けの馬の世話(五時に餌をやりその後寝床を整え、ブラッシング)は令嬢の私にとっては簡単な仕事ではなく大変な仕事ではあるが好きなものに触れている時だけが心が休まるのでやはり厩舎は安息の地である。厩舎での仕事が合わると厩舎の二階に準備した干し草で作ったベッドで仮眠をとるのがいつもの日課だった。厩舎の二階は、嵐など厩舎から離れられない場合の仮眠室として一通りの生活必需物品は準備されているのだが、ここに無理を言って干し草のベッドを作ってもらった。よく言う権力を使って・・ちょっと気が引けたけど背に腹は代えられないのでまぁいいってことにしておく。今日もいつものように馬に餌をやり、寝床を整えブラッシングを終え厩舎の二階で休憩しようとしたところ、後ろから声がかかった。
「馬の世話をしているのか。」
振り向くと二人の男がニヤニヤしながらこちらを見ており、私が振り向くと口笛を吹き
「そんなことしたないで俺たちと遠乗りでもしようか」
と声を掛けてきた。いつも厩舎に来るときは従者とよく似た簡素なシャツにズボンをはき足元が汚れないようにブーツを履いている。髪はブロンドであるため一つにまとめ顔がわかりにくいよう帽子をかぶっている。今は春先でありやや朝方は肌寒い為シャツの上に上着を羽織っているため肌の露出は抑えられていると思ったが・・・自分で言うのも何ではあるが一応人並み以上の容姿ではあるため簡素な服装でも雰囲気がどうしても女性を強く表面に出す傾向があるようだ。私は表情を変えず
「今、仕事が終わったところで疲れていますので、ご遠慮させていただきます」
と返答した。
「まぁ、そう言わずに一緒に景色を見るだけだからそんな疲れることはないなぁ」
男はなおもニヤニヤしながらもう一人の男と目配せをしていた。あぁ、面倒くさいことになった。相手は二人だし、下手に騒いで大事になったらここでの仕事もどうなるか。そんなことを考えていたら一人の男に腕を掴まれた
「じゃあ、行こうか」
私は呆気にとられた。私はさっき断ったはずだが
「離してください」
「いいからこっちに来いよ」
「離してください。困ります」
もう限界と思った時、
「向こうで従者が待っているようだったが、何か取込み中なのか」
一人の男が睨みながら近寄ってきた。男は前髪を全部後ろに撫で上げており左目あたりには大きな傷があり、腕まくりをしている左腕にも大きな傷があった。二人の男は、男の容姿に目をやるとやや怯えたように
「いや別に、あぁ面倒くさ、行こうぜ」
と吐き捨てるように言いながら去っていった。私は男に掴まれていた腕を擦りながら
「ありがとうございました。助かりました」
と言うと
「別に馬が騒いでいたから」
と感情なく返答すると男は馬の所へと移動した。馬を撫でながら何か話しかけているようで馬も嬉しそうに目を細めて頭をすり寄せていた。その後男は、鞍の準備を行い、颯爽と馬にまたがり駆けて行った。あの人は誰だったのかしら、見たことないような顔だったけど、傷が酷かったけど何か獣に襲われた傷なのかなぁ。など色々考えていたが安堵したせいか急に睡魔が襲ってきて・・でもよかったこれで誰にも邪魔されることなく仮眠することができる。私は大きな伸びをして厩舎の二階へと上がり、干し草で作成されたベッドに横になった。すぐに眠気に襲われしばしの仮眠をとった。仮眠後自分に充てられている侍女室に戻ろうと起き上がると、下から馬の嘶きが聞こえてきた。誰かが戻って来たのか小窓から確認すると、今朝助けてくれた男が笑顔で馬に話しかけているところだった。あんな顔もできるんだ、よっぽど馬が好きなのねぇ。まぁ私もそうなんだけど。少し気になりながら身支度を整え一階に下りるとちょうど男が馬を厩舎に繋ぐところだった。私はなんとなく声が掛けたくなり
「随分長い乗馬でしたが馬に乗るのがお好きなんですか」
と声を掛けてしまっていた。男は急に私に話しかけられ凄く驚いた表情で振り返ったが
「まぁ、他にも好きなことはあるが、馬が一番だな。馬は人間みたいに嘘をつかないし気を遣わなくてすむからな」
と普通に話を続けるかのように返答してきた。
「そうですよねぇ。人間だったら顔色見ながら言葉を選んで話さないといけないですものねぇ。私も馬の方がいいです。いいなぁ、私も馬に乗りたいなぁ・・・」
私が羨ましそうに男と馬を見ていると
「馬の世話をしているのに乗馬はしないのか」
「親から止められているんです。ただでさえ厩舎で女が働いていることだけでも問題なのに、乗馬までしている姿を見られたら何って言われるかって。他の人に見つかったらすぐに変な噂を立てられてしまうでしょ。もしかしたらここで働けなるかもしれないし、だから今は世話をするだけでいいんです。また田舎に行った時の楽しみにします。あぁあ、いつになったら田舎に行けるか分からないですけど」
私は苦笑いしながら男が今繋いだ馬に触れた。馬は私にも一応頭をすり寄せてきた。王宮には厩舎がいくつもありここは小規模な方で主に騎士が戦闘の際に使用する馬の世話をしている。この厩舎には十頭の馬がいるが、私はその中でもこの黒毛の普通よりやや体格が大きい馬が大のお気に入り。最初のころはかなり凶暴でブラッシングをさせてもらえるようになるまで何度蹴られそうになったか、しかしその凶暴なところが誰にも屈しることがない威厳みたいに感じ気に入っていた。今では私のことも認めてくれているのかブラッシングをさせてくれるようになっていた。ここに預けられている馬には全て飼い主がいるが世話をしている私は騎士の稽古を目にすることはなく馬が駆けているところもあまり見たことがなかった。この人はこの馬の飼い主なのかしら
「この馬はやっぱり走るのが速いのですか」
「まぁ、この厩舎の中では一番だと思うが」
「いいなぁ、やっぱり乗りたいなぁ」
「令嬢もなかなか大変だな。それで・・・あぁ名前を名乗っていなかったな。俺はドラガルだ」
男は正面に向き直り私に名前を告げた。本来名を名乗る時は階級が上の者から省略することなく名を告げることになっているが、彼が名前だけ告げた時点で家のことは関係なく私との会話を望まれていると思い
「私はエリーゼです。馬好き同士、これからもよろしくお願い致します」
と私も名前だけ告げることにした。
「あぁ、よろしく」
ドラガル様は、笑顔でそう答えた。その時、私は窮屈に過ごしていた王宮で大好きな馬について話せる友人ができ心から喜んでいた。
それから時々厩舎で出会うことがあり馬の話など他愛もない話で盛り上がった。ドラガル様は、いつでも真剣に私の話に耳を傾け、楽しそうに話を繋げてくれる。しかし、彼個人の話は一切話題には上がってはこなかった。
これまでの話の内容からドラガル様は王宮護衛騎士をされており私と同じ夜勤が多い勤務をされている様子。そうそう黒毛の馬はやはりドラガル様所有で名はドラゴと言い祖父からプレゼントされずっと自分で世話されていたということだった。そうそう一度厩舎の仕事終わりに訪ねてこられ、散歩に誘われたことがあった。

私がいつも通り厩舎で馬の世話をし片付けが終わった時後ろから
「仕事は終わったのか」
聞きなれた声が掛けられた。
「あっドラガル様、お疲れ様です。はい、今終わったところです」
私は笑顔で振り返るとそう告げた。
「俺も今仕事が終わったところで今からドラゴの運動に行くのだが、一緒にどうだろうか。一人で乗るのはまずいが一緒なら問題ないだろう。一応なるべく人目がないところを選んで走るようするが」

「えっいいんですか。でもご迷惑になるのでは・・」
「迷惑になるようなら自分から誘ったりしない」
ドラガル様はそう言いながら鞍の準備をし、ドラゴに跨われた。そして私にと手を伸ばされた。
「えっ、一緒に乗るんですか」
「一緒に乗らないでどうする」
私が意味が分らない問いいた表情でドラガル様を見た。そうして自分の間違いに気が付いた。
「私はてっきり二頭の馬で出掛けると思っていまして・・今まで人に乗せてもらったことはあるんですけど・・・祖父と騎士様しかなかったので、男性の方と一緒に乗るのは・・」
私が顔を赤らめながらそう返答すると
「じゃぁ止めておくか」
ドラガル様は少し意地悪そうにそう告げた。私はそう言われると無性に馬に乗りたくなり
「いいえ、乗らせていただきます。乗らせてください」
と勢いよく返答するとドラガル様の手を握り締めた。ドラガル様の手は私が思っていた以上に大きく掌にはいくつもの剣だこができていた。ドラガル様は私を引き上げると自分の前に跨らせ後ろから手綱を握られた。私はふと幼少の時世話になった騎士様の事を思い出していた。彼は年をとったため若い世代に騎士の地位を譲り私の専属騎士になってくれていた。そして幼い頃はよく私を馬に乗せ遠乗りに連れて行ってくれた。私が街へ戻ってきてからは全く連絡を取っていなかったので今はどこでどう過ごされているかはわからないが機会があったらまた会いたいなぁと私が現実逃避している間に馬は駆けだした。私は不意をつかれ不本意ながら体を揺らしてしまった。するとドラガル様が笑いながら手綱を握っている手で落ちないように支えてくれた。私は年の近い男性と触れ合うという経験が全くなく、かなり動揺し心臓の音が自分でも聞こえるぐらい精神的に追い詰められた。ただでさえドラガル様の前にいて後ろから手綱をもたれている状況だけでもかなり緊張していたのに、体を支えられると・・私が生きてきた中でこんなに緊張したのは初めてだった。私の緊張を知ってか知らずか、ドラガル様はなるべく私に触れないようにわずかに距離を開けて手綱を握っていたが実際触れていないだけでかなりの至近距離に男性がいるのだはっきり言ってその時の私は乗馬どころではなかった。背中から感じるドラガル様の気配に圧倒されただただ下を向いて耐えていたのが正直なところだった。そうした私を知ってか知らずかドラガル様は私に普通に声を掛けてきた。
「どうだ、楽しいか」
そう後ろから声を掛けられ、現状に耐えながら私は視線を上げた。するとそこにはいつもと違った景色が広がっていた。ドラゴは、私が今まで乗った馬より体格がよく体高ため景色が高く、景色の見え方も違うように感じたのだ。
「えぇ、今までに乗った馬より体高が高いのでまた違った景色に感じます。ちょっともっとスピードをあげてもらってもいいですか」
「あぁ、別にいいが」
ドラガル様は私の体を少し両腕で挟むように支えた後、馬のスピードをあげた。私はすっかり緊張が解け、全身で風を感じながら
「やっぱりドラゴはいい馬ですねぇ。こんなにスピードを出しても乗り手があまり揺れないように気を遣って走ってくれるんですねぇ。こんなに乗りやすい馬は久し振りです。あっ、ドラガル様の腕もいいんですねぇ」
と笑いながら言った。
「今のとってつけた言い回しだと、あまり嬉しくないのだが・・」
とやや苦笑いしているような声の感じでドラガル様の返答が聞こえてきた。
「すみません。でも本当にドラガル様の手綱さばきはうまいと思っているんですよ。まぁ今更って感じにはなってしまっていますけど・・」
私が続けてそう言うと
「別に気にしていない」
ドラガル様は今度は笑いながらそう言った。
「本当に気持ちいいですねぇ」
「あぁ、あまり人と相乗りをすることがないのでいつも以上に緊張はしてしまうが、気持ちいいのはかわらないなぁ」
緊張していたのが私だけでなくドラガル様のだったことに安堵した。
「すみません。気を遣って誘っていただいて・・」
「いや。最初に言った通り俺が誘いたくて誘ったのだから気にすることはない。もっと気軽に楽しんでくれればいい」
と、後ろで手綱を握っているドラガル様からの視線が景色から私に移った気配がした。私は視線を受け何だか気恥ずかしさを感じたが今は景色を楽しむことに集中することにした。
そうして一時間程度散歩して厩舎に戻って来た。一時間は楽しい時間ではあったが私の心臓が持たないのではと不安になる時間でもあった。
「今日は楽しかったです。ありがとうございました」
「また、乗りたくなったらいつでも言ってくれれば付き合うよ」
「ありがとうございます。じゃあ、遠慮なくまた乗りたくなったら言わせていただきます」
「あぁ」
ドラガル様はそう言うと馬の鞍を外しドラゴを厩舎に繋がれた。私はもう少しドラガル様と話していたくてドラガル様に声を掛けた。
「今から仮眠をされるんですか」
「あぁ、そうだが」
「厩舎の二階に干し草で作ったベッドありますよ。ここだけの内緒なんですけど」
私が小声で言うと
「そうなのか。俺も昔は憧れて親に作ってもらったが・・今は・・この年齢では縁がないなぁ」
「そうでしょ。でも干し草のベッドは何歳になっても気持ちいいんですよ、よかったら使ってもらったらいいですよ。本当は私専用なんですけど・・今日はお世話になったしぜひ使って休んでください」
ドラガル様は少し考えておられたが、あまりに私がすすめるので根負けし
「じゃあ、二時間だけ使わせてもらおうか」
と返答された。
「じゃあ、準備してくるのでちょっと待っててくださいね」
私は急いで厩舎の二階へと上がっていった。そうして、食堂からもらってきていた飲み物と軽食をテーブルに置き、干し草のベッドに持参していたシーツを掛けた。毎回シーツ持参で厩舎に来ていたのだ。私は準備を終えると下へと降りていった。
「準備出来ました。私は侍女の部屋に戻らないといけないので・・食堂からもらった食事と飲み物も置いておいたのでよければ食べてください」
「えっ、いいのか。自分で食べようと思って準備していたんだろう」
「いいえ、今日は屋敷に帰ることになっていたんですけど、食堂の前を横切ろうとしたら「はい」っていつものように渡されたので断れなくて・・逆に食べていただけると助かるというか・・」
私の返答を聞いて
「分かった。ありがたくいただいておくよ」
とドラガル様は返答し、私が手を振ると厩舎の二階へと上がっていった。
私はドラガル様の姿を見送ると急いで侍女室に戻り荷物を準備すると屋敷へと戻った。
いつもは、夜勤明けでなんて屋敷へ戻ることはなく、侍女室で過ごしているのだが今日は祖父が来ると聞いていたので屋敷に戻ることにしていたのだ。
屋敷の戻ると聞きなれた祖父の声が応接室から聞こえてきた。応接室のドアを開けると祖父が父と話をしていた。
「おじいちゃん、久し振り」
私はそう言いながら祖父に抱き付いた。祖父の体は現役を退いてからかなりの年月が過ぎているにも関わらず相も変わらず鍛えられている感じがした。祖父は昔、軍事指揮官をしており机上の作戦会議だけではなく前線で猛威を振るっていたとも風の噂で聞いたことがある。
「おお、大きくなったのう。また綺麗になったのではないか」
「いつ振りだっけ、もう二年ぐらいになるんだっけ、今日は久し振りに会えて嬉しい。ねぇ、おじいちゃんもう話は終わったの。私の部屋に来て、話したいことがいっぱいあるの」
「そうかそうか。そう言われては他の話はもうどうでもよくなったわ。お前の部屋に行こうか」
そう言って、まだ話したげにしている父を置いて祖父は荷物を持って私に付いてきた。私の部屋に着くと私は侍女に二人だけにしてほしいとお願いした。侍女が退室するのを確認すると祖父は
「お前が前に欲しいって言っていた短剣を買ってきたぞ」
そう言って祖父は荷物からプレゼント包装された包みを取り出した。
「えっ覚えてくれていたの。ありがとう」
私は祖父からプレゼントを受け取ると包みを開いた。そこには小さな赤い薔薇を形どった石と蔦の彫りが施された短剣があった。
「ありがとう。素敵なデザイン。凄く気に入ったわ。でもいつ使おうかしら」
「おいおい、その短剣は使うためにプレゼントしたんではないぞ、観賞用だ。だが一応、切れ味は抜群だが」
祖父は笑いながらウインクし、そうしてさらに話を続けた。
「それでどうだ仕事の方は楽しくやっているのか」
「うーん、仕事はそんな楽しいってことはないんだけど・・」
「なにか他に楽しいことでもできたのか」
祖父は興味津々といった様子で私の話を先へと促した
「私、侍女の仕事をしてるんだけど、侍女の仕事が終わったら厩舎で馬の世話をしているの・・そこで馬の話が合う人に出会ったの」
「そりゃそうだろう。厩舎だからな」
「そうなんだけど・・最初は私が男たちに絡まれていたところを助けてくれたの」
「すると、相手は男か」
「まぁそうなんだけど・・」
「それは聞き捨てならんな。わしの可愛い孫娘に手をだすとは、どこのどいつだ」
祖父はなんとなく笑っているように尋ねてきた。
「私も詳しくは知らないんだけど護衛騎士をされている方で年齢は二十歳ぐらいかなぁ。顔に何かにやられたような傷があるの」
「ふーん、傷か・・それでその男性とはいい仲なのか」
「おじいちゃん、勘違いしたら困るわよ。友人よ友人」
「友人なのか。まぁお前がそう言うのなら友人ということにしておいてやろう。それでそれだけなのか」
「ううん違うの、今日その人の馬に乗せてもらったの。その馬が黒くて体格がいいのよ。おまけに走るのも凄く速いのだけど、ただ速いのじゃなくて揺れないの。凄いと思わない。スピード出しても乗りやすさがかわらないの、凄いでしょ」
「あぁ、そういうことだったのだな。お前が帰ってくるであろう時間を計算して屋敷で待っていたのだが・・遅れたのはそういうことだったのか。まぁ、お前が楽しい時間を過ごしていたのなら別にいいのだが。今日乗せてもらった馬は立派みたいだが馬はその馬事態で走りが決まるわけではないぞ。馬は乗り手で大きく変わるからのう。まぁ、実際に乗っているところを目にしてないからはっきりとは言い切れんが、話を聞いておるとよっぽどその乗り手がうまいのだろう」
「えっそうなの。馬が賢いから揺れないんじゃないの」
「馬は生き物だからのう。誰にどんなふうに育てられるかでその性格は大きく違ってくる。それに馬を操る時はその所の地形や馬の体調も考えながら走りやすいようにしてやる必要がある。ただ体格がいいからいい馬で走りもいいってことにはならないんだぞ。やっぱり馬は乗り手で大きく変わってくるからのう。まぁ人間の世界と同じで上司がいいと部下もいいのが育つが上司が駄目だと部下の士気は下がり怠けて働かなくなってしまうのと同じようなものだ」
「そうなのね。私、何も知らなかったわ。今後それとなく謝っておかないと・・」
私がそう呟いていると
「そんなことを謝る必要がある心の狭いやつなのか」
とすかさず突っ込んできた。
「そんなことはないわ」
私ははっきりとそう返答した。
「なら別になにも言わなくてもいいだろう。相手も別に怒っていなかったのだろう」
「そうだけど、なにも知らずに言ってしまったことが自分で許せないっていうか・・」
「お前が思うほど男の方は何も思っていないと思うが・・二人で一頭の馬に乗ったのだろう。男はそれどころではなかったと思うがな」
私は祖父の唐突な言葉に動揺して顔を赤らめながら祖父に問い返した。
「えっ、どういうこと」
「それはわしの孫娘が可愛いってことだ」
祖父は笑顔でそう言った。私は意味がわからず祖父にさらに尋ねたが祖父は笑うばかりで答えを言ってくれなかった。その後祖父と昔の思い出話などを放しながら夕食前までずっと一緒に過ごした。しかし、残案なことに私はまた夜勤勤務があるので渋々祖父に別れを告げると王宮へと戻った。
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