ぼくらのファーストキスは錆の味がした

あびこわく

文字の大きさ
6 / 15
上杉と武田

06

しおりを挟む
 上杉は授業中、後ろから武田を眺めて目を細めた。
 綺麗な姿勢で黒板の文字をノートにとる武田だがきっと内心、穏やかでは無いだろう。
 武田の本心を剥がして晒してやりたい。
 上杉は薄笑いの顔を隠す様に机に教科書を立てた。

 武田と同じように上杉もまた嗜虐心を持っていた。
 でもそれは物理的な物では無く精神的な物で武田のそれとは少し違う。
 もっと違うのは上杉自身、それを良しとして楽しんでいた。
 目立つ事なく大人しく過ごすつもりの学校生活だったが武田と言うオモチャを見つけて上杉は楽しくなってしまった。
 武田を追い詰めて泣かして可愛がってやりたい。
 流石に異常だと言う自覚はあるのでそれを表には出さないが都合よく武田は孤立している。昼休みのチャイムは上杉にとってお楽しみタイムになった。
 無神経を装って武田の神経を逆撫でする。
 嫌がる武田を見ると上杉はゾクゾクした。

 それから一週間が経った。
 上杉は物おじしない性格からすぐにクラスに馴染み、授業中よく寝るので一部の先生からはもう目をつけられていた。
 飄々とし誰とでも裏表なく接する。そんな上杉を武田は冷めた目で見ていた。
 相変わらず昼休みになると非常階段に上杉はやってくる。それが武田には理解出来なかった。
 四限目終了のチャイムがなると武田はいつも上杉を置いてさっさと教室を出て行く。

「武田くん何でいつも先に行くん?」
 文句を言いながらこの日も後から上杉は非常階段にやって来た。当たり前に隣に座る上杉に武田はしっかりと顔を向けて尋ねた。
「……君、いつまでここに来る気なの?」
「何で? おったらあかん?」
「君なら他の人と一緒に過ごせるだろ。ぼくに気を使ってるつもりなら必要ないよ」
「あー。武田くん捻くれとるわ。俺そんなええ奴ちゃうよ?」
 
 上杉は武田にニヤけて首を傾けた。傾げた拍子に制服から鎖骨が見えて何だか色っぽく見える。見入ってしまいそうで武田はサッと目を逸らした。
「三好くんも言ってただろ。ぼくと上杉くんが一緒にいると違和感あるって」
「へぇー。武田くんは他人の目が気になるんや」
「君が目立つからだよ」
「目立つん嫌いやねんけどなぁ」
「は? どの口が言ってんの」
 視線を上杉に戻して武田はハッとした。
 上杉と目が合って息を呑む。

「普通を装うんも楽やないよ? 俺は武田くんとおると楽や」
 口元は笑っているが上杉の目は笑っていない。刺すように上杉から凝視されていた。
 まるで見透かされたかの様な気持ちになり武田は押し黙った。
 自分が普通じゃ無いのを上杉が見抜いたのでは無いかと思い、体が冷えていく感覚がする。
 武田の凍り付いた表情に上杉はようやく目を細めて笑った。
「早よ飯食お。次、体育あるみたいやし」
 表情をコロリと変えて上杉はパンの袋を開けて口にした。
 武田は上杉の得体の知れなさに気後れしていた。
 上杉行人。キラキラした光の中にいるみたいな彼にも何か闇がある。
 しかし武田はそれを探ろうとは思わなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

処理中です...