モン◯ンみたいな世界で雪山遭難しちゃったんですが、ドラゴンと女衆のハチャメチャ他種族ぽんこつパーティーは、冒険も秘宝も諦めきれません!(仮)

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②血生臭い報告、そしてパーティーは突然に

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鈍く重厚感のある装備がこすれ合う音が聞こえてきたと思うと、勢いよく木製のドアを開け放つ音が聞こえてきた。

「へぇ、珍しいじゃん。エルフがいるなんてさ」

 ずかずかと足音を立てながら入ってきた彼女は言った。

 申し訳程度の胸当てに、冬なのにもかかわらず薄い服。背中に背負うのはバカでかい鉈。ぶつかりあってじゃかじゃか音をたてている。
全身に返り血を浴びているにも関わらず、心なしか嬉々とした表情を浮かべている。

「あ、エウレアさん。討伐終了報告ですか?」

 エルフに同情の目を向けていた受付嬢が、入ってきた彼女に目を向けた。

「そうそう。今回も根こそぎ倒してきたよ。じゃ、報酬貰える?」

 集会所のテーブルにおいてある、空いた椅子にちゃっかり座りながら、彼女は受付嬢に迫る。
 妖艶な笑みを浮かべ(本人はにっこりほほえんでいるつもりなのだろうが)、受付嬢は木綿の小袋を両手で持ち上げた。中で何かがじゃらりと鳴った音がする。結構重そうだ。

「はい、今回の報酬です。お疲れさまでした」

 滞ることのない仕草でその袋を受け取り、腰につけると、彼女は立ち上がって依頼がある掲示板を眺め始めた。

「んー、いいの無いかな…」

「…これなんかは、どうだ?」

 暇を持て余している初老の男が、一つの依頼を指さした。
それは、商人の警護依頼だった。
彼の指を追い、その依頼を一瞥。しかし、すぐに目をそらした。

「ダメダメ。私が受けるのは討伐系だけ」

「警護でも、討伐はできると思うが…」

「いやこれさ、通る道が比較的安全なとこじゃん。なら私は、鍛えてきた腕前をもっと強い敵を倒すために使うべきだと思わない?」

一見(?)やる気のあるのセリフだが、彼女の目に浮かぶのはあからさまな退屈さ。
しかし、掲示板の方を向いていたため、彼らがそれに気づくことはなかった。

一通り眺め終わっても、いい依頼がなかったのか、彼女は受付嬢に向き直った。

「ねえ、なんかいい感じの依頼ないの?」

いきなり話題を振られた受付嬢はしかし、どことないベテラン感を漂わせて視線を右上にやった。

「そうですね、今きてる依頼はそこにあるのだけだったと…あ」

視線を急にこちらへ戻すと、彼女はエルフを指さした。

「リリウムさん、確か雪山のドラゴンの調査、あるいは討伐を依頼したいんじゃなかったですっけ。せっかくですし受けてもらえ」

「えっっやるやる! ドラゴンだろ? ワイバーンは見たことあったけどドラゴンは見たことないから一回見てみたかったんだ!」

受付嬢の言葉は、興奮して身を乗り出したエウレアに遮られた。
迫られたリリウムは、あまりの勢いに椅子を軽く引いた。

「え…。でも、雪山ですよ? ほんとに来る気ですか…?」

今まで一人の冒険者も応募してこなかったことで、どうやら本当に申し込む人がいるとは思わなかったらしい、形の整った眉を訝しげにひそめている。

「あたりまえでしょ? ここまで私の願いを全コンプリートしてくれそうな依頼なんかないし」

エウレアはもう決定事項かのようにしゃあしゃあと言うと、鉈を構えた。

「よし、私これ受けるんで行きましょ!」

そういうや否や、彼女はギルドを飛び出していこうとした。
その勢いを止めたのは、残像が見えるほどのスピードで飛び込んできた、オレンジの耳を持つ獣人の女だった。
ヒップラインが綺麗に出る革のタイツからも同じ色の細長いしっぽが見える。
カウンターに近づくと受付の女に向かって、一枚の紙を叩きつける。

「このクエストを受けた、虎獣人の男を探しているんだけどっ!」

 室内がしんと静まり返る…勢いに反して、彼女は涙目だった。
何か思うところがあるのだろう、縋る様な瞳で唇を噛みしめたまま受付の女の返答を待つ。

「お待ちくださいね、今確認します。」

奥に引っ込んだ女の姿を視線で追い、カウンターの上で手を組み待つ彼女は何かに追い立てられているようだった。

「お待たせしました。約一か月前にラルドという虎獣人の方が参加したパーティーがこのクエストを受けていますね?」

「それっ!」

カウンターを乗り越えそうな勢いで迫ると、続きを待つ。

「ですが、いまだ未報告です。このままだとあと数日で依頼自体が失敗扱いとなりますが…。」

「そんな…ここまで、やっと。やっと掴んだ、手がかりだったのに!」

ずるずると落ちるように床にしゃがみこんでいく彼女に、受付の女は取り繕うように言葉を続けた。

「でもでも先程、お二人ほどこのクエストに興味を持たれた方がいらっしゃいまして。」

 彼女の耳がぴくりと動く、我に返って勢いよく振り返ってその冒険者を探そうとした。
そこで彼女…フラミーが見た物は、ガランとしたフロアのテーブルに佇む白く発光するほどの美しさを持ったエルフと、生臭い返り血を浴びたまま物騒な装備で立ち尽くす人間の二人だけだった。

 フラミーは、じっと観察する様に二人を見つめた。

 ひとりはエルフ。エルフには何度かあったことがあるが、ここまで透明感のあるエルフは初めてだ。装備はさほど重厚ではなさそうだが纏っている魔力が違う。フラミーが知っている『ハーフエルフ』や『フォレストエルフ』とは種族としての格が違うように思える。指先ひとつの優雅な動きから豪速の魔法を放てる…そう思わせる何かを持っている佇まいだ。

 もうひとりの方は視線を向けるのも躊躇われた。小柄な体躯の人間の女は装備に返り血を浴びたまま何事もないように、こちらを伺っている。明らかに人族だが、異様なオーラを身に纏っており、獣人であるフラミーよりも強者である事がわかる。なによりこちらを伺う目が、獲物を狙うそれだという事実がフラミーを凍り付かせた。

「えっと。」

「…………。」

「……ふぅ。」

 三人は互いを認識しつつ、歩み寄ろうとはしなかった。
頭では理解している、このクエストは自分だけでは受注できない、力が及ばないのだ。だが今まで自分の力で生き抜いてきた三人にとって、パーティーを組むというのは、何にも代えられないほど難しい行動だった。人が増えれば増える程に、気まずさが増す。

「とにかく、このクエストは単独受注不可ですので!三人で仲良く調査にいってください!」

「まあ…わしが見たところ、このメンバーならそう悪くはないだろう。」

 受付嬢と初老の男はその場をまとめるかのように三人を言い包めてクエストを受注させ、集会所を追い出した。
 三人はチラチラと伺いあいながら、互いに視線を交わす。

 最初に声を発したのは、エウレアだった。

「んじゃ、さっそく行きますか~。」

 じゃかじゃかと音を立てながら、雪山へと足を向けると後ろを気にせずに進みはじめる。慌てて手を伸ばし、引き留める。

「待って!私、フラミーって言います。いきなりクエストに同行させてもらうことになったけど、よろしくお願いします。」

 オレンジの丸い耳をピンと立て、フラミーは軽くお辞儀をした。

「大丈夫。私達も、今知り合ったばかりだから。私はリリウム、よろしく。」

「俺はエウレア、まあなんとかなる。行こう!」

 二人はさほど気にもかけずに進もうとした。
あまりの堂々とした態度にフラミーも「そんなものなのか?」とぼんやりと考えながら後に続こうとした。

「待て!…お前達、まさかこのまま、あの雪山へ入ろうとしているのか?」

 背後からの声に、三人の緊張感は一気に高まった。
 エウレアは瞬時に鉈に手をかけ、リリウムからは冷気とも言える魔力が漏れ出している。フラミーは毛を逆立たせて、牙を剥き出しにしていた。
 集会所を出てから、ここまでの道のりで人の気配を感じたことはなかった。三人いるからといって、警戒を緩めることはない…なのに背後からこの距離で声を掛けられるまで気がつかなかったというのは、彼女達にとって、有り得ないことだった。

「…なに?何か用なの?」

 一番最初に口を開いたのは、エウレアだった。鉈に手をかけたまま、さっきを隠す様子もない。同時にフラミーはいつでも飛び出せるよう、前のめりに重心を移動させ、後ろに引いた足に力を込めていた。冷静そうに見えるリリウムでさえ、溢れだそうとする魔力を抑え標的になりうる相手へと練り上げている。

「いや、少し話を聞かせてもらった。あのクエストを請け負った者達で間違いないな?」

「だから、なんなんだよ?」

 声を掛けてきた男は、少し考えるそぶりを見せた。
立派な体躯に高価で重厚な装備、整った相貌を持ったその男の中で一番印象的なのはその赤い瞳と新雪の様な真っ白い髪だった。

「アンタ、只者じゃないね?」

 思考を止め言葉を受け止めた男は、視線をエウレアに合わせて不思議そうに答えた。

「そう思うのか?」

 男が答えると、エウレアの背後にいたフラミーは更に重心を下げた。男が三人の様子を一瞥すると、その瞬間周囲の息苦しさが一気に解き放たれた。なにが起こったのだろう、さっきまでの重苦しい威圧感が消え去る気配がした。

「これで、普通に話せるな?」

 三人は男が自身の力を隠したのだと悟った、警戒を解く気はないが話くらいは聞いてもいいだろう。男はとにかく三人に話を聞いてもらいたそうだったからだ。三人は手にしていた武器や魔力を一旦しまうことにした。

「それで?話ってなんなの?」

「ああ、先程も言ったが…お前達本当にそのまま雪山へ入る気なのか?」

「それが、何か?」

 答えたのはリリウムだった。
なにが問題なのかわからないと、三人は互いに視線を送りあったが思い当たることはなかった。どうみてもいつもと同じ、なにも問題ないはずだ。

「…レーデンベルクの過酷さを、知らないのか?」

 三人は並び少しだけ考えるそぶりを見せたが、すぐに答えを出した。

「そういうの、大丈夫だから~」

「ご心配、ありがとうございます」

「急いでいるので、これで…」

 それぞれ男に向かい答えると、軽い挨拶と手を振りながらその場を立ち去ろうとする。

「待て待て待て待て、小娘達が!忠告は最後まで…ええい面倒だ、私も共に行こう。」

 男の声に足を止めた三人は、少しだけ眉をしかめた。勝手に心配をして、勝手に同行を決めた男に不信感が浮かび上がる。しかし、目の前の男に、下心や人を陥れようとする器用さがあるようには見えない。
 ひたすらまっすぐこちらを見つめると、感謝を求めるように胸を張っている。

「まあ、こいつ強そうだし」

「こいつ?…私はレオニス。レーデンベルグのーーー」

「はいはい、続きはクエストをこなしながらね~」

「レオニスかぁ、よろしくね」

 三人は自己紹介を始めたレオニスの横を通りすぎる。

「おい、待てっ!装備はそれで良いのか、薄着過ぎるのではないか?食料やアイテムの確認はどうした、遭難したいのか!」

 自分の扱いに納得できていないレオニスを他所に、三人は軽い足取りで伝説であるレーデンベルクの雪深い山へと足を踏み入れたのだった。
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