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2章:セントフィリアの冒険
12話.オルゴラズベリーの借金返済の冒険③: ポーション
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「これは、これはロイド様。わざわざご足労いただき、ありがとうございます」
「お前らの面倒を見にきたわけじゃない。勘違いするな」
領民が挨拶をしてきたが、そう言って僕は彼を追い払った。
すると、すぐに別の男が寄ってきた。
男はニヤニヤとあからさまに怪しそうな顔で話しかけてくる。
「ロイド様、この状況を打破して経済を盛り上げる新たな商談をしとう存じます。あちらに馬車を用意していますのでぜひ」
「僕の仕事じゃない。去れ」
チッと舌打ちをしてその怪しい男は消えた。
他の領民の女の子が僕たちを見て話しかけてきた。
「あ、あのロイドさま。みてください。新作のポーションを作ってみたんです。これで今頑張ってる冒険者さんたちの助けになるかも。ロイド様もよかったら一度使ってみてください」
女の子は慣れない素振りで一生懸命といったようにお辞儀をし、瓶を差し出した。
「知らん。僕は冒険者じゃないし、あとなんかそれ臭いぞ」
「あ、すみません。失礼しました」
その女の子はガッカリした顔をしてすごすごと帰っていった。
「………」
振り返って見るとオルがポカンとした顔をしていた。
「いや何やってんの!?」
オルが怒ったような驚いたような顔で言う。
「え、いや何が?」
「だってさっきカッコいい顔で助け合うことが人間のつよさだー、とか僕たちはまだ負けてない、とかこっから全部とり戻す、とか言ってたくせに全然ダメじゃん。なのにすっごい冷たいじゃん。もっとこう、領主なら親身にならないとダメなんじゃないの?」
うっ、こいつアホっぽいくせに痛いところをついてくる。しかも演技が若干似てるがなんか腹立たしい。
「しょ、しょうがないだろ。僕が物心ついた時から皆んなが下から接されることが多くてさ。僕は偉大な領主の息子だ。だけど、そのせいで皆僕を領主の息子としかみていないし。実力もないのに偉いかのような扱いをされて。そうなると僕もどう接していいか分からなかったんだよ」
「私にはさっきからずいぶんと好き勝手言ってくれたくせに」
「それは、お前が」
そう言って言葉を止める。
たしかに、こいつには振り回されっぱなしだが、
ずっとロイドとして僕を見てくれたのはこいつだけだったことに今気づいた。
だが、そんな事口が裂けてもいえるか。
「な、何でもない」
「……ふーん、ま、いいけどね」
途端に興味を失われたような、
どこか呆れられたような目で見られているのが
どうしようもなく気になる。
「ま、いいけどね」か。
事実、オルは無関心なのだろう。
僕が1番気にしていることを突かれた故に、言い返しづらい。それに、
彼女にとっては確かにまったく関係のない話だ。
だが、
彼女のいいけどね、は
お前は領主に、いや、皆を率いるものとして全く相応しくないダメなやつだが、私には関係ないないからいいよ、と言われているような気がした。
何故だろう。出会って数時間だがこいつにそう思われるのは非常に癪に触る。
「そこの君、ちょっと待って!」
さっき僕にポーションを持ってきた女の子を呼び止める。
「ひ、ひぃ!な、何ですか?何か失礼でも?」
オドオドして女の子は振り返った。
「さっきのポーション。もう一度見せてくれないか?」
「は、はぁ、これですか?」
女性が先程見せたポーションを取り出した。
「うっ……やっぱりひどい匂いだな」
そのポーションはとても強い刺激集のようなものがした。
「そこは申し訳ありません~」
女の子は言う。
「さっき言ったように僕はポーションのことは分からないんだ。これの説明をしてくれ」
「え?あ、は、はい。こちらは今までとは全く違うポーションのアプローチをした品でして」
「と言うと?」
「はい。まず、従来のポーションはそれぞれ一本につき、1つの効果しかありません。
赤のポーションは膂力、もしくは魔術的攻撃力の向上、
黄色のポーションはスピードの向上、
青のポーションは筋肉の硬化による防御力向上、
そして、緑のポーションが体力の回復になります」
「それで冒険者は複数のポーションを使い分けているわけだね」
「はい。ですが、この度私が開発したものは、一本で2つの効果を得られるポーションです。製法は企業秘密ですが、2つのポーションを混ぜ合わせ、一本で2つの効力を得られるポーションを開発しました。こちらは赤のポーションと緑のポーションの効果が合わせて得られる品になっています」
「なるほど。それでこのポーションは赤色が濁っているのか」
汚い赤をしたポーションを見る。
というか説明を聞くに、それは画期的発明というやつなんじゃないか?
「それで、今クラーケン討伐のために頑張ってる冒険者さんたちの助けになるかもと思ってロイド様にお声がけしたんです。本来こういう新しいポーションを売り出すには認可が必要なんですけど、それじゃ討伐に間に合わないと思いますし、このポーションがあれば少しでもクラーケン討伐の力になるかなって」
なるほど、それでこの女の子は僕に話しかけてきたのか。
だが、こういう冒険者のことは専門外で僕にはどう答えていいのか分からない。
父は今領主の仕事で忙しいだろうから、ぼくからも連絡が取りづらいし、
かといってこの製品が、認可をスキップしてまで、クラーケン討伐隊に回すべきものなのか、冒険者素人の僕には分からなかった。
他の人に頼ろうにも、有識者に人脈もコネもないし、この女の子を信用していいかもわからないし。
せっかく呼び止めたのに、何も言うことができなかった。
やっぱり僕なんかじゃ……。
「へー。いいポーションだな」
だが、その時、後ろで聞いていたオルがひょっこり顔を出して言った。
「オル、君はもしかしてポーションに詳しいのか?」
「……友達がポーションをよく飲んで研究してるからな。私も使ったことあるし。このポーション、化学面での良し悪しは分からんけど、かなり良い素材を使ってるっていうのは感覚でわかる」
じっくりと底からポーションを見ながらオルは言う。
その姿はまるで専門家のようだった。
「そ、そうなんですよ。私、ポーションの元となる素材にはかなりこだわりがあって。品質もかなりいいものだと自負してます。けど誰も気づいてくれなくて。だから嬉しいです。そんな事言われたの初めてだから」
「ちょっと飲んでみて良いか?」
オルが言う。
「え?はい。こちら試作品ですから」
オルがゴクゴクとポーションを飲んだ。
ゴクリと息を飲み、僕とポーションの女の子はその様子を見る。
オルは手のひらを広げ、見つめながら考え込んでいた。
その様子を見ているとゾッと寒気がしたような気がした。
なにか、オルの内側からとてつもない膨大で危険な力が渦巻いているような。
オルにそんな力あるわけないし気のせいだろうか。
「……ダメだな」
「え?」
「確かに力が上がってる感覚はあるけど、効果が弱すぎ。誤差だな。これじゃクラーケン討伐には役に立たない」
オルはバッサリと言った。
そこまではっきり言わなくてもいいんじゃないか。
このポーションの子が落ち込んでしまうのではと僕は心配して彼女の方を見た。
だが、その考えは杞憂だったようだ。
「そ、そうか、2つの効果を得ると同時にそれぞれのポーションの効果を打ち消しあっちゃってたんだ。でも、普段の実験じゃ、そんな感覚気づけなかった……」
ぶつぶつと女の子は言った後目の色を変えて、身を乗り出して言った。
「あなた、名前は!?」
「うわ、何だ急に、オルだよ」
「オルちゃん。私、アリアナって言うの。そこの魔道具店やってて。良かったら、いえできれば絶対後で来て欲しいの。すぐポーション改善してくるから。明日来てねー!あ、あとロイド様、話を聞いていただき、ありがとうございました」
深々とお辞儀をし、アリアナと名乗る女の子は急いで去って行った。
はぁ、とため息をつく。
これで一件落着か。けど、オルがいなかったらアリアナのあの満足そうな笑顔は引き出せなかった。
本来そうやって民をやる気にさせるよう促すのは領主の役目なのに。
僕はやっぱりまだまだだ。
「やればできんじゃん」
落ち込んでいた僕にオルは笑って嬉しそうに言った。
「いや、僕は何もできなかったよ」
「でもアリアナ最後笑ってたよ。ロイが呼び止めたおかげだな」
「…それは君が……いや、ありがとな」
「?、どういたしまして」
ほんと、オルといると調子狂う。けど彼女の奔放さには救われてばかりだ。
そういえば、よくポーションの知識なんてあったな。
オルをみて僕は思う。
こいつもしかして冒険者なのか?でもこんな子供の冒険者がいるなんて聞いたことないしな。
「そういえば、オル!君本当何者だい?妙にポーションに詳しくて冒険者みたいだし。でもお金のことすら知らなかったり、馬鹿みたいに食ったり」
「そ、そんな事どうでもいいんじゃないかなー」
明らかにオルが動揺してるのが分かった。
怪しい……正体を隠してるのか?何のために?
けど……別にいっか。
「ま。そうだな。オルは悪いやつじゃ無さそうだし、聞かないでおいてやるよ」
そういうことにしよう。
オルの正体など僕にとってはどうでもいいことだ。
「おお、サンキュー。私が魔獣四王のオルゴラズベリーだなんて、口が裂けても言えないから助かるよー。ありがとう。ロイ」
だが、僕の気遣いなど何の意味もなかったようだ。
無邪気に笑ってオルは言った。
その屈託のなさに思わず聞き流してしまいそうになったが、今オルがとんでもないことを言ったことを僕は頭の片隅でギリギリ聞き逃さなかった。
「…‥‥はぁ!?」
ポロリとオルの口から全く予想だにしない言葉が出たのだ。
こ、こいつ今なんて言った。魔獣四王?オルゴラズベリー?
何でここであの竜王の名前が出てくるんだ?
それは最強と謡われるドラゴンの名前だった。
誰だろうと一度は耳にした名だ。
いわく、そのドラゴンは山を吹き飛ばし、同族を引きちぎり、数々の人間を襲った
怖ろしい龍だという。
凶暴さでは魔獣四王で一番とも言われている。
途中で口を滑らせたことに、オルは今気づいたらしい。
「あ、あわわわわ、い、今のなし、なし、なーーし!」
え、え?本気か?こいつ本当になんなの!?
嘘つくような奴には見えないし?
ほんとっぽいリアクション。けど、そんな事はありえないし。
え、言い間違え?
夢でも見たのかな?人の姿だし?
僕は考えることが多すぎてフリーズしたように立ち尽くした。
オルが慌てたように騒ぐ声が、不必要に周囲の目を集めていたる事にかろうじて気づいた。
「ちょ、ちょっと待って!いったんここを離れよう」
なんであろうとこんな会話、人通りの多い場所でするもんじゃない。
僕はオルの手を引き、急いでその場を離れた。
何なんだよもーーーー!?
と、僕は心の中で叫んだのだった。
とにかく落ち着ける場所に行こう。話はそれからだ。
_______
時は少し遡る。
オルゴラズベリーが真蜘羅やセレーネと別れた後、
怪鳥王フェルミナもまた、1人で行動をしていた。
「この剣、なかなかカワイイわね。これで冒険者っぽく見えるかしら」
彼女は剣が売っている店で珍妙な剣を手に取り、一人呟いた。
__________
読んでくださり、ありがとうございます。
次回からはフェルミナの冒険者ギルドでの活躍のお話になります。
正体がばれて(ばらして)大変なことになってるオルのお話の続きはもう少しお待ちください(>_<)
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「お前らの面倒を見にきたわけじゃない。勘違いするな」
領民が挨拶をしてきたが、そう言って僕は彼を追い払った。
すると、すぐに別の男が寄ってきた。
男はニヤニヤとあからさまに怪しそうな顔で話しかけてくる。
「ロイド様、この状況を打破して経済を盛り上げる新たな商談をしとう存じます。あちらに馬車を用意していますのでぜひ」
「僕の仕事じゃない。去れ」
チッと舌打ちをしてその怪しい男は消えた。
他の領民の女の子が僕たちを見て話しかけてきた。
「あ、あのロイドさま。みてください。新作のポーションを作ってみたんです。これで今頑張ってる冒険者さんたちの助けになるかも。ロイド様もよかったら一度使ってみてください」
女の子は慣れない素振りで一生懸命といったようにお辞儀をし、瓶を差し出した。
「知らん。僕は冒険者じゃないし、あとなんかそれ臭いぞ」
「あ、すみません。失礼しました」
その女の子はガッカリした顔をしてすごすごと帰っていった。
「………」
振り返って見るとオルがポカンとした顔をしていた。
「いや何やってんの!?」
オルが怒ったような驚いたような顔で言う。
「え、いや何が?」
「だってさっきカッコいい顔で助け合うことが人間のつよさだー、とか僕たちはまだ負けてない、とかこっから全部とり戻す、とか言ってたくせに全然ダメじゃん。なのにすっごい冷たいじゃん。もっとこう、領主なら親身にならないとダメなんじゃないの?」
うっ、こいつアホっぽいくせに痛いところをついてくる。しかも演技が若干似てるがなんか腹立たしい。
「しょ、しょうがないだろ。僕が物心ついた時から皆んなが下から接されることが多くてさ。僕は偉大な領主の息子だ。だけど、そのせいで皆僕を領主の息子としかみていないし。実力もないのに偉いかのような扱いをされて。そうなると僕もどう接していいか分からなかったんだよ」
「私にはさっきからずいぶんと好き勝手言ってくれたくせに」
「それは、お前が」
そう言って言葉を止める。
たしかに、こいつには振り回されっぱなしだが、
ずっとロイドとして僕を見てくれたのはこいつだけだったことに今気づいた。
だが、そんな事口が裂けてもいえるか。
「な、何でもない」
「……ふーん、ま、いいけどね」
途端に興味を失われたような、
どこか呆れられたような目で見られているのが
どうしようもなく気になる。
「ま、いいけどね」か。
事実、オルは無関心なのだろう。
僕が1番気にしていることを突かれた故に、言い返しづらい。それに、
彼女にとっては確かにまったく関係のない話だ。
だが、
彼女のいいけどね、は
お前は領主に、いや、皆を率いるものとして全く相応しくないダメなやつだが、私には関係ないないからいいよ、と言われているような気がした。
何故だろう。出会って数時間だがこいつにそう思われるのは非常に癪に触る。
「そこの君、ちょっと待って!」
さっき僕にポーションを持ってきた女の子を呼び止める。
「ひ、ひぃ!な、何ですか?何か失礼でも?」
オドオドして女の子は振り返った。
「さっきのポーション。もう一度見せてくれないか?」
「は、はぁ、これですか?」
女性が先程見せたポーションを取り出した。
「うっ……やっぱりひどい匂いだな」
そのポーションはとても強い刺激集のようなものがした。
「そこは申し訳ありません~」
女の子は言う。
「さっき言ったように僕はポーションのことは分からないんだ。これの説明をしてくれ」
「え?あ、は、はい。こちらは今までとは全く違うポーションのアプローチをした品でして」
「と言うと?」
「はい。まず、従来のポーションはそれぞれ一本につき、1つの効果しかありません。
赤のポーションは膂力、もしくは魔術的攻撃力の向上、
黄色のポーションはスピードの向上、
青のポーションは筋肉の硬化による防御力向上、
そして、緑のポーションが体力の回復になります」
「それで冒険者は複数のポーションを使い分けているわけだね」
「はい。ですが、この度私が開発したものは、一本で2つの効果を得られるポーションです。製法は企業秘密ですが、2つのポーションを混ぜ合わせ、一本で2つの効力を得られるポーションを開発しました。こちらは赤のポーションと緑のポーションの効果が合わせて得られる品になっています」
「なるほど。それでこのポーションは赤色が濁っているのか」
汚い赤をしたポーションを見る。
というか説明を聞くに、それは画期的発明というやつなんじゃないか?
「それで、今クラーケン討伐のために頑張ってる冒険者さんたちの助けになるかもと思ってロイド様にお声がけしたんです。本来こういう新しいポーションを売り出すには認可が必要なんですけど、それじゃ討伐に間に合わないと思いますし、このポーションがあれば少しでもクラーケン討伐の力になるかなって」
なるほど、それでこの女の子は僕に話しかけてきたのか。
だが、こういう冒険者のことは専門外で僕にはどう答えていいのか分からない。
父は今領主の仕事で忙しいだろうから、ぼくからも連絡が取りづらいし、
かといってこの製品が、認可をスキップしてまで、クラーケン討伐隊に回すべきものなのか、冒険者素人の僕には分からなかった。
他の人に頼ろうにも、有識者に人脈もコネもないし、この女の子を信用していいかもわからないし。
せっかく呼び止めたのに、何も言うことができなかった。
やっぱり僕なんかじゃ……。
「へー。いいポーションだな」
だが、その時、後ろで聞いていたオルがひょっこり顔を出して言った。
「オル、君はもしかしてポーションに詳しいのか?」
「……友達がポーションをよく飲んで研究してるからな。私も使ったことあるし。このポーション、化学面での良し悪しは分からんけど、かなり良い素材を使ってるっていうのは感覚でわかる」
じっくりと底からポーションを見ながらオルは言う。
その姿はまるで専門家のようだった。
「そ、そうなんですよ。私、ポーションの元となる素材にはかなりこだわりがあって。品質もかなりいいものだと自負してます。けど誰も気づいてくれなくて。だから嬉しいです。そんな事言われたの初めてだから」
「ちょっと飲んでみて良いか?」
オルが言う。
「え?はい。こちら試作品ですから」
オルがゴクゴクとポーションを飲んだ。
ゴクリと息を飲み、僕とポーションの女の子はその様子を見る。
オルは手のひらを広げ、見つめながら考え込んでいた。
その様子を見ているとゾッと寒気がしたような気がした。
なにか、オルの内側からとてつもない膨大で危険な力が渦巻いているような。
オルにそんな力あるわけないし気のせいだろうか。
「……ダメだな」
「え?」
「確かに力が上がってる感覚はあるけど、効果が弱すぎ。誤差だな。これじゃクラーケン討伐には役に立たない」
オルはバッサリと言った。
そこまではっきり言わなくてもいいんじゃないか。
このポーションの子が落ち込んでしまうのではと僕は心配して彼女の方を見た。
だが、その考えは杞憂だったようだ。
「そ、そうか、2つの効果を得ると同時にそれぞれのポーションの効果を打ち消しあっちゃってたんだ。でも、普段の実験じゃ、そんな感覚気づけなかった……」
ぶつぶつと女の子は言った後目の色を変えて、身を乗り出して言った。
「あなた、名前は!?」
「うわ、何だ急に、オルだよ」
「オルちゃん。私、アリアナって言うの。そこの魔道具店やってて。良かったら、いえできれば絶対後で来て欲しいの。すぐポーション改善してくるから。明日来てねー!あ、あとロイド様、話を聞いていただき、ありがとうございました」
深々とお辞儀をし、アリアナと名乗る女の子は急いで去って行った。
はぁ、とため息をつく。
これで一件落着か。けど、オルがいなかったらアリアナのあの満足そうな笑顔は引き出せなかった。
本来そうやって民をやる気にさせるよう促すのは領主の役目なのに。
僕はやっぱりまだまだだ。
「やればできんじゃん」
落ち込んでいた僕にオルは笑って嬉しそうに言った。
「いや、僕は何もできなかったよ」
「でもアリアナ最後笑ってたよ。ロイが呼び止めたおかげだな」
「…それは君が……いや、ありがとな」
「?、どういたしまして」
ほんと、オルといると調子狂う。けど彼女の奔放さには救われてばかりだ。
そういえば、よくポーションの知識なんてあったな。
オルをみて僕は思う。
こいつもしかして冒険者なのか?でもこんな子供の冒険者がいるなんて聞いたことないしな。
「そういえば、オル!君本当何者だい?妙にポーションに詳しくて冒険者みたいだし。でもお金のことすら知らなかったり、馬鹿みたいに食ったり」
「そ、そんな事どうでもいいんじゃないかなー」
明らかにオルが動揺してるのが分かった。
怪しい……正体を隠してるのか?何のために?
けど……別にいっか。
「ま。そうだな。オルは悪いやつじゃ無さそうだし、聞かないでおいてやるよ」
そういうことにしよう。
オルの正体など僕にとってはどうでもいいことだ。
「おお、サンキュー。私が魔獣四王のオルゴラズベリーだなんて、口が裂けても言えないから助かるよー。ありがとう。ロイ」
だが、僕の気遣いなど何の意味もなかったようだ。
無邪気に笑ってオルは言った。
その屈託のなさに思わず聞き流してしまいそうになったが、今オルがとんでもないことを言ったことを僕は頭の片隅でギリギリ聞き逃さなかった。
「…‥‥はぁ!?」
ポロリとオルの口から全く予想だにしない言葉が出たのだ。
こ、こいつ今なんて言った。魔獣四王?オルゴラズベリー?
何でここであの竜王の名前が出てくるんだ?
それは最強と謡われるドラゴンの名前だった。
誰だろうと一度は耳にした名だ。
いわく、そのドラゴンは山を吹き飛ばし、同族を引きちぎり、数々の人間を襲った
怖ろしい龍だという。
凶暴さでは魔獣四王で一番とも言われている。
途中で口を滑らせたことに、オルは今気づいたらしい。
「あ、あわわわわ、い、今のなし、なし、なーーし!」
え、え?本気か?こいつ本当になんなの!?
嘘つくような奴には見えないし?
ほんとっぽいリアクション。けど、そんな事はありえないし。
え、言い間違え?
夢でも見たのかな?人の姿だし?
僕は考えることが多すぎてフリーズしたように立ち尽くした。
オルが慌てたように騒ぐ声が、不必要に周囲の目を集めていたる事にかろうじて気づいた。
「ちょ、ちょっと待って!いったんここを離れよう」
なんであろうとこんな会話、人通りの多い場所でするもんじゃない。
僕はオルの手を引き、急いでその場を離れた。
何なんだよもーーーー!?
と、僕は心の中で叫んだのだった。
とにかく落ち着ける場所に行こう。話はそれからだ。
_______
時は少し遡る。
オルゴラズベリーが真蜘羅やセレーネと別れた後、
怪鳥王フェルミナもまた、1人で行動をしていた。
「この剣、なかなかカワイイわね。これで冒険者っぽく見えるかしら」
彼女は剣が売っている店で珍妙な剣を手に取り、一人呟いた。
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