かつて最弱だった魔獣4匹は、最強の頂きまで上り詰めたので同窓会をするようです。

カモミール

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2章:セントフィリアの冒険

25話.オルゴラズベリーの借金返済の冒険⑤:仲直りの決意

「うっ」

目が覚めると、そこはどこかの洞穴の中だった。
天井の少し欠けたところから光が差し込んでいる。

近くから波音がした。

他にもジメジメとした空気と僕が寝そべっていた硬い岩。

そして、ピチャリ、ピチャリと反響する水滴から僕は自分の現在地を判断する。

ここはおそらく、都市の外れにある洞穴、テナウ洞窟だろう。

セントラルフィリアは港町だ。
海岸に繋がる洞穴もいくつかあり、それらは観光地になっていた。

だが、魔獣四王の集結により観光客は寄り付かなくなった。

身代金等を目的として、誘拐事件を起こすのならば、絶好の隠れ家になる場所だろう、
と攫われた当人である領主の息子ロイド・エル・ハートブルクはそう推測した。

その推理は街を細かく知るものにしかできないもので、それは間違いなく領主の資質の1つであるが、本人はそのことに気づいていなかった。余談ではあるが。


さて、

僕は自身の状況を確認する。
両腕はロープで縛られていた。

口は塞がれていなかったが、おそらく叫んでも誰も来ないだろう。誘拐犯以外は。
バリュウ)
誘拐されたあの時、誘拐犯はおそらく馬龍ばりゅうと呼ばれる竜種の小型モンスターに馬車を全速力で引かせ、力づくで僕を無理矢理その馬車に乗せたんだろう。

だが、あの時は側にオルもいた。ふと思う。
魔獣四王のオルならば、あの状況でも僕を助けられたのではないかと。

そうしなかったのは、きっと僕に怒っているからだ。
そう考えると、胸が苦しくなる。

「お!お目覚めかな?」
そう言って、話しかけてきたのは、僕を誘拐した怪しい男だ。

小太りで、全身黒ずくめのスーツを着ており、帽子も黒だった。サングラスもしていて、顔はイマイチ分からない。

男はニヤニヤと薄笑いを浮かべ、胡散臭い顔でこちらに近づいてくる。

他にも仲間が2人いるようだった。彼らも小太りの男と同じような黒スーツの格好をしているが、どちらも小太りの男と違い長身だった。

「近寄るな!僕は、あの偉大な領主、カイル・エル・ハートブルクの息子、ロイド・エル・ハートブルクだぞ。こんな事してどうなるか分かってるのか」
精一杯の虚勢を張る。こんな状況でも屈してはいけないことだけは、自分の立場を1番理解しているからこそわかっていた。

「ええ、わかってますとも。だからこそ、あなたを誘拐したのですから。大都市の領主の息子ともなれば、一体いくらもらえるんでしょうかねぇ。考えるだけで震えが止まりませんよ」

男は下衆な顔で笑う。正直怖い。けど、父上の邪魔はしたくない。今こんな誘拐事件が明るみになれば、街の治安は悪くなる一方だ。復興も益々難しくなるだろう。

「来るな!舌を噛みちぎるぞ。そうなったらどうなるかわかるだろ!」
強気な態度を見せる。が、ハッタリだ。だが効果はあったらしい。

「よせっ!クソ生意気なガキめ!お前に死なれちゃ面倒なんだよ」
小太りの男はもうインテリの仮面をとり、本性を表した。

小物め。と内心毒づく。

すると、後ろにいた男がすごいスピードでこちらに駆け寄り、僕に蹴りを入れた。
「あうっ!」

僕は洞窟の岩に叩きつけられる。頭がガンガンして、うまく考えがまとまらない。

「人質なんて、生きてりゃ何したっていいんですよ。旦那。気絶させて黙らしておきましょう。最悪死んでも口八丁、手八丁で何とかできますって」
「おう、そうだな」

だめだ。やっぱり僕じゃ抗うこともできない。
「助けて。オル」

心の中で反射的に思って口に出してしまった。
ハッとする。

なんてね。僕にそんなこと思う資格なんてないのに。

どうせ死ぬなら、もっと踏み込んでみればよかったなぁ。

その時。

途轍もなく大きな爆発音がした。
ガラガラと音を立てて岩が崩落し、
洞窟が半壊する。

「なっ!?なんだ?いったい」
小太りの男は慌てふためいている。

「おー、いたいた。よかった。無事かぁ」

洞窟が崩れたことにより、半暗闇だった洞窟に、大量の光が差し込んだ。

その光の中から表れたのはやっぱり予想通りの人物だった。

「来てくれたんだ」
「もちろん、助けに来たぜ!ロイ。にしし」

ギザギザの歯を剥き出しにして、満面の笑みでオルは言った。


◇◇


「な、なんだ一体?あれは、ガキ?おい、お前一体何者だ!さっきの爆発と関係があるのか、なぁ!!」
小太りの男がこちらを見て、凄む。

だが、オルはそんな事お構いなしだ。

トコトコとこちらに駆け寄り、倒れた僕を起こしてくれた。

「大丈夫か?」
オルは爪で僕の両手を縛るロープを切ってくれた。
「うん、何とか」

だが、蹴られた時にできた僕の頬の痣と転んでできた擦り傷を見て、オルの顔が歪む。

「その傷」
「大丈夫、なんともないから」
「ちょっと待っててな」

くるりと振り返り、オルは言った。
「これやったのお前らか?」

小太りの男はその問いに答えずに、啖呵をきる。
「こっちの質問の方が先やろがい。ボケが。お前が何者かしらねーけどな、こっちには大事な計画があるんじゃ、邪魔してくれやがって。おい、やっちまえ」

長身の男2人が、オルに向かって走る。
「消えてろ!ガキ」
さっき、僕にやったように蹴りをかます気だ。

あの2人の動きが、素人離れしていることは僕でも分かった。
詳しくは知らないが、冒険者や騎士など魔獣と戦うプロたちはきっとこんな動きをするんだろう。

けど、所詮その程度だ。本物の怪物には敵わない。

「うるせぇよ」
今までのオルからは信じられない冷たい声でオルは言い、
手のひらを大きく開いて、オルは長身の男の顔を掴むと、思いっきり地面に叩きつけた。

硬い洞窟の岩が粉々に砕け散る。
長身の男はピクリとも動かなくなった。

生きてる、のかな?

「な!?」
もう1人の長身の男は狼狽しているが、容赦はない。
オルは目にも映らない速さで男に近づき、蹴りを入れた。

長身の男は吹き飛び、これまたピクリとも動かなくなった。

「オル…」
オルは怒ってくれているのだ。僕のために。

「なっ!なんなんだよぉ、おまえぇ!!」
小太りの男は、尻もちをつき後退りするが、オルは歩いて近いた。

「よくも、私の友達を傷つけたな。絶対に許さない。グチャグチャにしてやる」
「ひっ、ひぃぃぃ」

オルの発言を聞き、小太りの男は泡を拭いて気絶する。
ズボンからは、液体が流れ出てきていた。それが何かは触れないでおこう。

この状況じゃ仕方ないとは言え、やっぱりこの小太りの男、小物だったか。

と僕は心の中で思った。

それにしても友達か。

「さっ、終わったぞ。帰ろう。私ロイに言いたいこともあるし」
寂しげに笑ってオルが言う。

「僕も一言言いたい事があるんだ。オル!」

やっぱり、僕もオルにちゃんと向き合うべきだ。
そして、僕はオルに近づく。

その時だった。

バコォンという、またもや洞窟が崩壊する音がした。

不運なことにその衝撃は僕を巻き込んだ。

あまりに一瞬のことに何が起きたか分からないまま。吹き飛ばされる。

辛うじて見えたのは、とてつもなく巨大なタコ足とオルが驚いている顔だ。

これは、やば…

意識が遠のく。

オルの顔が驚きの色から絶望の色に変わったのが分かった。


ああ、クソッ。まだオルに言えてないことがあるのに。

今ならちゃんとオルと向き合えそうなのに。

そのまま僕は瞼を閉じた。






___________________________

読んでくださり、ありがとうございます。

次回投稿は4月7日(金)の20時からになります。


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