20 / 20
~20~ 完結
しおりを挟む
セイラとロベルトはその後、婚約を正式に結んだ。
醜聞まみれの侯爵令嬢ではあるが、新しく爵位を継いだガーラント辺境伯は全く気にしてはいなかった。
むしろ婚約者を領地に閉じ込め、愛で続けているともっぱらの噂である。
王都から遠く離れた辺境の地にあり、夜会や社交界とは縁遠くなってはいるが、むしろ邪魔が入らないことを良いことに、領地のあちらこちらで二人の仲睦まじい姿を目にすることができると言う。
挙式をあげたらすぐにでも世継ぎを見ることが出来るだろうと、領民たちは皆楽しみにしているのだった。
ガーラント領地にある見張り塔の上に二人の影が映る。
夕日に照らされたその土地は、黄金に輝き波打つ麦穂と、たわわに実る果樹が光輝いていた。
塔の上に並び立つ二つの影は、互いに寄り添うように支え合い沈む夕日を眺めていた。
「セイラ、我がガーラント家領地はこれから益々栄えていくことになる。
辺境地とは言え、今や和平で結ばれた隣国と戦になることはまずない。
むしろ、これからは互いに親交を深め人々の往来も盛んになるだろう。
そうすれば我が領地が、旅行く人達の休息の地となることになる。
そのためには農作物だけではなく、宿も必要になるし、土産物になる特産品の需要も出てくるだろう。
平和になったとは言え、国の危機を守るため軍事の要としての役割も果たさねばならない。
忙しくなるが、その分やりがいもある。
君には苦労をかけるが、一緒にこの地を守って欲しい」
広大な土地を眺めつつ、ロベルトはセイラに言った。
「ロベルト様。私はこの地と民のために生きると決めて嫁いでまいりました。
これからはロベルト様をお支えし、この地を一緒に盛り立てていくつもりです」
「ありがとう。セイラの存在が私に勇気を与え、奮い立たせてくれる。
君がいなければ、今この場所に立つ勇気は持てなかったと思う」
「まあ、そのような弱腰でどうなさいます。
領主をお支えするのが妻になる私の役目。存分に頼ってくださいませ」
「王都とは違い、何から何まで発展途中だ。賑やかな街も綺麗な行楽地もない。
今までのような華やかな社交の場もない。若い君にはつまらない場所だろう」
「何をおっしゃいます。私、この地に来られてよかったと思っておりますのに。
噂やゴシップばかりの社交界ではなく、この地の人たちは皆、私を歓迎してくれます。
誰も私を悪く言う人は一人もいません。
それに、この前は婦人の方たちと一緒にパンを焼きました。とても楽しかったんですよ。今度うまく焼きあがったら、一緒に食べてくださいね」
「ああ、それは楽しみだ。セイラが作る物なら何でも美味いに決まっている。
私は良い妻を娶ったのだな」
二人は見つめ合い、クスクスと笑い合う。
「ロベルト様、正確には私はまだ、あなたの妻ではありませんわ。
まあ、婚約者ではありますが・・・
最近、王都のような場所ではなく、この広い大地で優しい領民の皆さんに愛されて、私たちの子どもを育てられたらと考えるようになりました。
きっとのびのびと育ち、優しく広い心の人間になると思いませんか?」
セイラがロベルトを見上げ、強請るように問いかける。
「・・・セイラ?」
ロベルトは口元に手を置き、頬を赤く染め視線を外した。
「ロベルト様?どうなさいました?顔が赤いですが、夕日のせいではないですよね?」
「君が、その、、、子どもをと、いや、よからぬ妄想をした私がいけない。すまない」
その言葉に「はっ」と気がついたセイラもまた、頬を赤らめ俯いた。
「その、どうだろう、ここは辺境地だ。今更だが誰の目にも触れることはない。
妻としての教育期間などと言うが、この地で妻に求めることはそう多くはない。
いわゆる淑女教育も領地経営も君には必要ではないと思う。
むしろ、今の君のように領民とうまく渡りあってくれる社交術の方が必要だと思うし。
そして何より、この地を支える人数はいくらあっても足りないほどだ。
だから、その、一日も早い、そう、跡取りを・・・何人いても良いと、思うのだが」
ロベルトは言いながら、どんどん顔を赤らめていく。
それを見るセイラも、どんどん顔を赤くし、夕日に照らされた二人の顔はそれ以上に赤く輝いていた。
その後間もなくして、二人は挙式をあげた。
ガーランド領地にある教会で挙式を行い、披露宴はガーランド邸で何日にも渡り宴が続いた。
貴族間での付き合いの他に、領民たちも自由に参加できるガーデンパーティーも行い、新しい領主と妻を惜しげもなく披露するのであった。
そこには綻びを修復した、かつての婚約者と親友も並んで姿を現した。
高い塔の上で並び寄り添い合う二つの影を、領民たちは見上げながら未来に夢を抱くのだった。
そして年々増えるその影にまた、幸せと希望を自分たちの未来に映しつつ、この地は発展を続けていくことになる。
醜聞まみれの侯爵令嬢ではあるが、新しく爵位を継いだガーラント辺境伯は全く気にしてはいなかった。
むしろ婚約者を領地に閉じ込め、愛で続けているともっぱらの噂である。
王都から遠く離れた辺境の地にあり、夜会や社交界とは縁遠くなってはいるが、むしろ邪魔が入らないことを良いことに、領地のあちらこちらで二人の仲睦まじい姿を目にすることができると言う。
挙式をあげたらすぐにでも世継ぎを見ることが出来るだろうと、領民たちは皆楽しみにしているのだった。
ガーラント領地にある見張り塔の上に二人の影が映る。
夕日に照らされたその土地は、黄金に輝き波打つ麦穂と、たわわに実る果樹が光輝いていた。
塔の上に並び立つ二つの影は、互いに寄り添うように支え合い沈む夕日を眺めていた。
「セイラ、我がガーラント家領地はこれから益々栄えていくことになる。
辺境地とは言え、今や和平で結ばれた隣国と戦になることはまずない。
むしろ、これからは互いに親交を深め人々の往来も盛んになるだろう。
そうすれば我が領地が、旅行く人達の休息の地となることになる。
そのためには農作物だけではなく、宿も必要になるし、土産物になる特産品の需要も出てくるだろう。
平和になったとは言え、国の危機を守るため軍事の要としての役割も果たさねばならない。
忙しくなるが、その分やりがいもある。
君には苦労をかけるが、一緒にこの地を守って欲しい」
広大な土地を眺めつつ、ロベルトはセイラに言った。
「ロベルト様。私はこの地と民のために生きると決めて嫁いでまいりました。
これからはロベルト様をお支えし、この地を一緒に盛り立てていくつもりです」
「ありがとう。セイラの存在が私に勇気を与え、奮い立たせてくれる。
君がいなければ、今この場所に立つ勇気は持てなかったと思う」
「まあ、そのような弱腰でどうなさいます。
領主をお支えするのが妻になる私の役目。存分に頼ってくださいませ」
「王都とは違い、何から何まで発展途中だ。賑やかな街も綺麗な行楽地もない。
今までのような華やかな社交の場もない。若い君にはつまらない場所だろう」
「何をおっしゃいます。私、この地に来られてよかったと思っておりますのに。
噂やゴシップばかりの社交界ではなく、この地の人たちは皆、私を歓迎してくれます。
誰も私を悪く言う人は一人もいません。
それに、この前は婦人の方たちと一緒にパンを焼きました。とても楽しかったんですよ。今度うまく焼きあがったら、一緒に食べてくださいね」
「ああ、それは楽しみだ。セイラが作る物なら何でも美味いに決まっている。
私は良い妻を娶ったのだな」
二人は見つめ合い、クスクスと笑い合う。
「ロベルト様、正確には私はまだ、あなたの妻ではありませんわ。
まあ、婚約者ではありますが・・・
最近、王都のような場所ではなく、この広い大地で優しい領民の皆さんに愛されて、私たちの子どもを育てられたらと考えるようになりました。
きっとのびのびと育ち、優しく広い心の人間になると思いませんか?」
セイラがロベルトを見上げ、強請るように問いかける。
「・・・セイラ?」
ロベルトは口元に手を置き、頬を赤く染め視線を外した。
「ロベルト様?どうなさいました?顔が赤いですが、夕日のせいではないですよね?」
「君が、その、、、子どもをと、いや、よからぬ妄想をした私がいけない。すまない」
その言葉に「はっ」と気がついたセイラもまた、頬を赤らめ俯いた。
「その、どうだろう、ここは辺境地だ。今更だが誰の目にも触れることはない。
妻としての教育期間などと言うが、この地で妻に求めることはそう多くはない。
いわゆる淑女教育も領地経営も君には必要ではないと思う。
むしろ、今の君のように領民とうまく渡りあってくれる社交術の方が必要だと思うし。
そして何より、この地を支える人数はいくらあっても足りないほどだ。
だから、その、一日も早い、そう、跡取りを・・・何人いても良いと、思うのだが」
ロベルトは言いながら、どんどん顔を赤らめていく。
それを見るセイラも、どんどん顔を赤くし、夕日に照らされた二人の顔はそれ以上に赤く輝いていた。
その後間もなくして、二人は挙式をあげた。
ガーランド領地にある教会で挙式を行い、披露宴はガーランド邸で何日にも渡り宴が続いた。
貴族間での付き合いの他に、領民たちも自由に参加できるガーデンパーティーも行い、新しい領主と妻を惜しげもなく披露するのであった。
そこには綻びを修復した、かつての婚約者と親友も並んで姿を現した。
高い塔の上で並び寄り添い合う二つの影を、領民たちは見上げながら未来に夢を抱くのだった。
そして年々増えるその影にまた、幸せと希望を自分たちの未来に映しつつ、この地は発展を続けていくことになる。
16
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(16件)
あなたにおすすめの小説
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる
鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳――
それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。
公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。
だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、
王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。
政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。
紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが――
魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、
まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。
「……私が女王? 冗談じゃないわ」
回避策として動いたはずが、
誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。
しかも彼は、
幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた――
年を取らぬ姿のままで。
永遠に老いない少女と、
彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。
王妃になどなる気はない。
けれど、逃げ続けることももうできない。
これは、
歴史の影に生きてきた少女が、
はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。
ざまぁも陰謀も押し付けない。
それでも――
この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
殿下、私以外の誰かを愛してください。
ハチワレ
恋愛
公爵令嬢ラブリーは、第一王子クロードを誰よりも愛していました。しかし、自分の愛が重すぎて殿下の負担になっている(と勘違いした)彼女は、愛する殿下を自由にするため、あえて「悪役令嬢」として振る舞い、円満に婚約破棄されるという前代未聞の計画を立てる。協力者として男爵令嬢ミリーを「ヒロイン役」に任命し、準備は整った。
第一王子様は妹の事しか見えていないようなので、私は婚約破棄でも一向に構いませんよ?
睡蓮
恋愛
ルーザ第一王子は貴族令嬢のミラとの婚約を果たしていたが、彼は自身の妹であるマーマリアの事を盲目的に溺愛していた。それゆえに、マーマリアがミラからいじめられたという話をでっちあげてはルーザに泣きつき、ルーザはミラの事を叱責するという日々が続いていた。そんなある日、ついにルーザはミラの事を婚約破棄の上で追放することを決意する。それが自分の王国を崩壊させる第一歩になるとも知らず…。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ロベルトなぁ·····最初に主人公の矜持がどうのと元婚約者と元親友を叱責したけど、お前が無理に引き止めたから矜恃を傷つける羽目になったんじゃないかとドン引きした。
イイ感じになったと思ったら無駄に主人公の不安を煽るしなんだかなぁ〜コイツ。
やらかした元親友と、元親友のやらかしを払拭しない元婚約者とかいう高位貴族のハズのハリボテ。爵位が泣いとるわい。
綻びを修復したって、どういう経緯で修復したのかサッパリだから主人公の名誉は回復したのかどうかも分からんのに修復とは。
主人公が周りに終始振り回されてて可哀相だったなぁ。
あましょく様
貴重なご意見と感想をいただき、ありがとうございます。
多くの方からご指摘をいただいておりますが、まだまだ未熟な素人作家ゆえ、至らない点も多く読みにくい所も多々あると思いますが、そこは頭を下げるしか出来ないのですが。
ご不快な思いをさせましたこと、お詫びいたします。
申し訳ありませんでした。
一気に読みました〜!元婚約者と社交界で醜聞を流した元親友を結婚式に呼ぶ主人公の思考が理解できないのですが、、、どちらかというと元親友はざまぁされてほしかったです。
でも最後がハッピーエンドで元婚約者よりも優れた人と結婚できてよかった〜
まりぽよりん様
感想をいただきありがとうございます。
「ざまあ」を期待される方が多くて、応えられず申し訳ないです。
ざまあを書くのは私自身、なかなかストレスがかかるんです。
精神的に疲弊してしまうので、厳しいんですよね。
もう少し経験を重ねて、ご期待に添えるものが書けるように頑張ります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
まほ様
感想をいただき、ありがとうございます。
私の力不足でご不快な思いをさせましたこと、お詫びいたします。
書き始めてまだ浅く、書いた本数も少なく勉強不足でございます。
これからもっと精進し、多くの方に納得し喜んでいただけるような作品を書けるよう努力するつもりでおります。
それでも、私の書いた駄作を最後まで読んでくださいました事、心よりお礼申し上げます。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。