7 / 23
~7~
しおりを挟むあの茶会の席から1か月が経とうとしている。その間、距離をおきたいという彼女の言葉の通り、連絡はせずに事態を静観していたが、約束通りアルバートとアリーシャは手紙のやり取りをしていた。
1か月の間で10通。ほぼ1週間に2回の割合だ。
これはもう、なんていうか、恋人通しでもこんなに手紙をやりとりするものなのだろうか?
アルバート宛ての手紙を管理するのも側近である俺の仕事だ。
今日の手紙の中にアリーシャからの物が含まれているのを確認できた
「あ、アリーシャ嬢からの手紙だ。」
花の絵の描かれた薄い桃色の封筒を手に取り、ペーパーナイフで嬉しそうに封を開ける。
その姿は恋に浮かれた人のそれである。
読むにつれ段々と笑顔が険しくなってくる。なにかあったのだろうか?
「手紙のやりとりも頻繁なようだが、どうなんだ?順調なのか?」
それとなく聞いてみるが
「どうなんだろう?別に普通じゃないか?」
いや、聞きたいのはそんな答えじゃないんだよ。もっと具体的な事が聞きたいんだよ。と思うが、仲介役を買ってでた手前そんなことも聞けるわけもなく。
するとドアの前から「ブフフ」と笑い声が聞こえる。
「アル、マルクスはもっと具体的な事が聞きたいんだよ。手紙の内容とか、二人の仲がどれくらい親密になったのかとかさ。
まったくいい加減素直になればいいものを。」
ドアの前で警護をしていたルドルフがニヤニヤした顔で口を挟んでくる。
「いや、そういうわけではないが。仮にもまだ婚約者ではあるし、ハミル家からもなんの音沙汰もない。距離をおきたいと言われた以上、こちらから動くのもどうかと思ってな。」
「ふ~ん。いくら距離をおきたいって言われたってさあ、ここは男から謝罪するべきなんじゃないの?仮にも婚約者なんだし。もし婚約解消するにしたってわだかまりは残さない方が良いだろうしねえ。」
壁に寄りかかりながら腕を組み、さも偉そうに忠告してくるルドルフだが、いや、まったくその通りでぐうの音も出ないとはこのことだと感心した。
「実はアリーシャ嬢からの手紙は、庭園の薔薇が満開だろうから案内してくれないかという内容だったんだ。さすがにどうしたものかと思ったけど、、、マルクスと一緒なら大丈夫な気がするんだが?どうだろう?」
そう言ってまっすぐな目で俺を見てくる。もう、こいつの中では答えは出ているんだろうに。
「そうだな。俺が側にいれば周りの目も大丈夫だろう。庭園を散策した後、お茶にすれば問題ないんじゃないか?」
アルバートの欲しい答えを出してやるのも側近の務めだ。
「そうだな。わかった。じゃあ、そのようにアリーシャ嬢に返事を書くよ。
協力ありがとう。マルクス。」
嬉しそうに机に向かい、さっそく返事を書き始める姿にもう何も言う事はできない。
「おいおい、本当に大丈夫なのか?俺は知らんぞ。」
ルドルフが相変わらず上から目線で何やらつぶやいている。
ま、なんとかなるだろう?そんな風にその時の俺は考えていた。
0
あなたにおすすめの小説
王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】
mako
恋愛
以前の投稿をブラッシュアップしました。
ランズ王国フリードリヒ王太子に嫁ぐはリントン王国王女クラリス。
クラリスはかつてランズ王国に留学中に品行不良の王太子を毛嫌いしていた節は
否めないが己の定めを受け、王女として変貌を遂げたクラリスにグリードリヒは
困惑しながらも再会を果たしその後王国として栄光を辿る物語です。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない
miniko
恋愛
平凡な女子高生が乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。
断罪されて平民に落ちても困らない様に、しっかり手に職つけたり、自立の準備を進める。
家族の為を思うと、出来れば円満に婚約解消をしたいと考え、王子に度々提案するが、王子の反応は思っていたのと違って・・・。
いつの間にやら、王子と悪役令嬢の仲は深まっているみたい。
「僕の心は君だけの物だ」
あれ? どうしてこうなった!?
※物語が本格的に動き出すのは、乙女ゲーム開始後です。
※ご都合主義の展開があるかもです。
※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした
おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。
真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。
ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。
「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」
「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」
「…今度は、ちゃんと言葉にするから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる