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王太子だって恋がしたい ~アルバート編~
~その3~
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「姫様、お疲れでしょう。どうぞ横になられてください。それともお茶にされますか?」
ソフィアの部屋では、リジュー王国から連れてきた侍女マリアが、ソファーに座る主を気遣い声をかけた。
「ありがとう。じゃあ、お茶を頼もうかしら。マリアも疲れたでしょう? 一緒にいただきましょう」
テーブルに並べられたお茶とお菓子をつまみながら、二人は先ほどの様子を話し始めた。
「それにしても、王太子殿下は絵姿のままでございましたね。普通は見た目良く書きたがるものですが、そこは誠実さを感じました」
今現在、この部屋にはソフィアとリジュー国から連れてきた侍女マリアの二人だけ。セナン王国付の侍女は下がらせた。
本来なら不敬罪に値するような発言も、幼い頃からソフィアに付き従う侍女との関係性で、この場は許された。
「子供の頃にお会いした時の面影があるわ。どうしたらいいの? 顔が……顔が……」
ソフィアは両手で顔を覆い、膝に突っ伏すように身もだえた。
「姫様、良いではないですか。もう覚悟を決めて、そのままのお姿をさらせばよいのですよ。あの方ならきっと喜んでくださるのではないですか?だって、それこそ姫様に見惚れていましたもの。ふふふ」
「ダメに決まってるでしょう? こんなニヤけた、だらしのない顔を見たら嫌われてしまうわ。そうしたらもう、立ち直れない。国に帰るしかないじゃない。そんなの嫌よ!」
マリアは「ふぅ」とため息をついて紅茶を口に含んだ。
この姫様はこうなったら手が付けられない。好きなだけ悩んでモジモジした後はすっきりとなることを知っているので、彼女の気のすむまで放っておくことにした。
アルバートとソフィアの出会いは10年前にさかのぼる。
当時13歳になろうかと言う年齢だったアルバートは、父王と一緒にリジュー王国へ訪問したことがあった。
リジュー王国は側室制のある国で、国王には全部で8人の子がいる。
ソフィアはその中でも一番下の王女として皆に愛され、可愛がられていた。
その中でも比較的年の近かったすぐ上の兄とアルバートは、滞在中行動を共にすることが多かった。
そして、アルバートは遊び相手としてソフィアにも付き合ってくれた。騎士を目指す兄と違い、アルバートはとても優しく、紳士的に接してくれた。
弟しかいないアルバートにとって当時9歳のソフィアは、フワフワしたドレスを着たお人形のような存在だったのだ。
たった1週間の滞在ではあったが、少女は恋に落ちてしまった。
優しく、少しだけ大人の雰囲気を纏う異国の少年をずっと、心に秘めたまま彼女は大人の女性へと成長した。
彼女も適齢期を迎え婚姻の相手を探す段階になっても、ソフィアは踏ん切りがつかなかった。王女として国のためにも結婚をしない選択肢はない。
それでも、初めて好きになった人を心に秘めたまま嫁ぐことは出来ずに、ずっとわがままを通し続けてきた。
そんな時、降ってわいたようなこの縁談にソフィアはすぐに飛びついた。
『ウジウジと待った甲斐がありましたね』と、毒舌を吐くマリアの言葉も全く気にならなかった。
それなのに、やっと会えたというのに、ソフィアはアルバートの顔を真っすぐ見ることができなかった。
拗れにこじらせた初恋は、その絵姿を見てはニヤつき、共に過ごす新婚生活を夢見ては頬を赤らめ、全く持って王 女としての体をなしていない。
何度も広げ、縁取りがボロボロになった絵姿を見つめながら、ソフィアはソファーの上でウジウジ、ゴロゴロ、ニヤニヤしていた。
『コンコン』
突然のノックの音。とたんにソフィアは飛び起き、座ったまま居住まいを正して、王女らしい体制を整えた。
マリアがドアのそばで確認をすると、慌てたようにソフィアの元まで脱兎のごとく走りよる。
「ひ、ひ、ひめさま。お、おう、おう、お……」
「マリア? どうしたの? 落ち着いて」
「ひ、姫様。王太子様がいらっしゃっています」
「えっ?!!」
ソフィアの部屋では、リジュー王国から連れてきた侍女マリアが、ソファーに座る主を気遣い声をかけた。
「ありがとう。じゃあ、お茶を頼もうかしら。マリアも疲れたでしょう? 一緒にいただきましょう」
テーブルに並べられたお茶とお菓子をつまみながら、二人は先ほどの様子を話し始めた。
「それにしても、王太子殿下は絵姿のままでございましたね。普通は見た目良く書きたがるものですが、そこは誠実さを感じました」
今現在、この部屋にはソフィアとリジュー国から連れてきた侍女マリアの二人だけ。セナン王国付の侍女は下がらせた。
本来なら不敬罪に値するような発言も、幼い頃からソフィアに付き従う侍女との関係性で、この場は許された。
「子供の頃にお会いした時の面影があるわ。どうしたらいいの? 顔が……顔が……」
ソフィアは両手で顔を覆い、膝に突っ伏すように身もだえた。
「姫様、良いではないですか。もう覚悟を決めて、そのままのお姿をさらせばよいのですよ。あの方ならきっと喜んでくださるのではないですか?だって、それこそ姫様に見惚れていましたもの。ふふふ」
「ダメに決まってるでしょう? こんなニヤけた、だらしのない顔を見たら嫌われてしまうわ。そうしたらもう、立ち直れない。国に帰るしかないじゃない。そんなの嫌よ!」
マリアは「ふぅ」とため息をついて紅茶を口に含んだ。
この姫様はこうなったら手が付けられない。好きなだけ悩んでモジモジした後はすっきりとなることを知っているので、彼女の気のすむまで放っておくことにした。
アルバートとソフィアの出会いは10年前にさかのぼる。
当時13歳になろうかと言う年齢だったアルバートは、父王と一緒にリジュー王国へ訪問したことがあった。
リジュー王国は側室制のある国で、国王には全部で8人の子がいる。
ソフィアはその中でも一番下の王女として皆に愛され、可愛がられていた。
その中でも比較的年の近かったすぐ上の兄とアルバートは、滞在中行動を共にすることが多かった。
そして、アルバートは遊び相手としてソフィアにも付き合ってくれた。騎士を目指す兄と違い、アルバートはとても優しく、紳士的に接してくれた。
弟しかいないアルバートにとって当時9歳のソフィアは、フワフワしたドレスを着たお人形のような存在だったのだ。
たった1週間の滞在ではあったが、少女は恋に落ちてしまった。
優しく、少しだけ大人の雰囲気を纏う異国の少年をずっと、心に秘めたまま彼女は大人の女性へと成長した。
彼女も適齢期を迎え婚姻の相手を探す段階になっても、ソフィアは踏ん切りがつかなかった。王女として国のためにも結婚をしない選択肢はない。
それでも、初めて好きになった人を心に秘めたまま嫁ぐことは出来ずに、ずっとわがままを通し続けてきた。
そんな時、降ってわいたようなこの縁談にソフィアはすぐに飛びついた。
『ウジウジと待った甲斐がありましたね』と、毒舌を吐くマリアの言葉も全く気にならなかった。
それなのに、やっと会えたというのに、ソフィアはアルバートの顔を真っすぐ見ることができなかった。
拗れにこじらせた初恋は、その絵姿を見てはニヤつき、共に過ごす新婚生活を夢見ては頬を赤らめ、全く持って王 女としての体をなしていない。
何度も広げ、縁取りがボロボロになった絵姿を見つめながら、ソフィアはソファーの上でウジウジ、ゴロゴロ、ニヤニヤしていた。
『コンコン』
突然のノックの音。とたんにソフィアは飛び起き、座ったまま居住まいを正して、王女らしい体制を整えた。
マリアがドアのそばで確認をすると、慌てたようにソフィアの元まで脱兎のごとく走りよる。
「ひ、ひ、ひめさま。お、おう、おう、お……」
「マリア? どうしたの? 落ち着いて」
「ひ、姫様。王太子様がいらっしゃっています」
「えっ?!!」
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