スケルトンに転生した。冒険者に倒され続ける毎日だったが、冒険者を倒すとレベルアップするんだな

もぐすけ

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ミント篇

力で支配するには

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 リズたちが朝食を済ませてから、サーシャの孤児院へと向かった。

「ランバラル伯爵だが、ようやく動けるようになったらしい。まだサーシャのことを諦めていないようなので、俺たちに手を出すとどうなるかをよく分かってもらおう」

「チャームは使わないのですか?」

「必要に応じて使うぞ。だが、王都でいつチャームが切れるか分からないだろう。そのときにお前たちに安易に手を出せないようにしておきたい。サーシャは教会が守ってくれるとは思うし、そう簡単にはやられないとは思うがな」

「伯爵に何をするつもりですの?」

「俺たちには敵わない、敵にするより味方につけた方がいいと分からせるのさ。しかも、本人が手を組むことを選択したと思わせることが重要だ。実際には俺たちの力に屈服しているのだがな」

 暴力で従わせるのはいっときのことでしかないし、ネチネチと暴力行為を繰り返して洗脳するようなことを子供たちにはして欲しくはない。

 力をちらつかせて、俺たちとは味方でいた方がいいと思わせることが重要だ。そして、力で押さえつけるのではなく、伯爵が俺たちの力を利用できると思わせ、あたかも対等であるかのように錯覚させることが重要だ。

「どうすればいいのかな?」

 アリサはこういう謀りごとが大好きだ。目を輝かせている。

「その場で俺がリズに憑依したり、思念で指示したりする。リズが今回のリーダーだ。アリサとサーシャはリズに従っていると思わせるようにしてくれ」

「分かった。何だか面白そう」

「かしこまりましたわ」

 俺たちが圧倒的な暴力を持っていること、敵にすると殺されることをまずは体で分からせたい。その上で組むことのメリットを理解させ、協力させるようにするのが目的だ。セフィラスがリズから召喚されたアンデッドだということも印象付けたい。

 俺たちは院長に軽く挨拶を済ませたあと、伯爵が怪我の療養をしている客室に入って行った。ちなみに院長から伯爵にはこれまでの経緯は説明済みで、怪我が治り次第、孤児院を出るようにと通達済みだ。

 俺たちはノックもせず、客室のドアを開けた。

 突然の侵入者に驚いた伯爵だが、すぐに俺たちだと気づき、噛み付いてきた。

「サーシャ、貴様らっ!」

 客室には伯爵と恐らく執事のような人物が立って話をしているところだった。

「伯爵、調子はどう? もう歩けるようにはなったみたいね」

 リズには俺が憑依している。伯爵はセフィラスが話を始めると思っていたのだろう。リズが話し始めて意外だったようだ。少し腑に落ちないような顔をしてリズに話してきた。

「ああ、ようやくだ。よくもあんなに酷いことが出来たものだな。決して許さんからな。ランバラル家の総力をもって、お前たちを殺して、サーシャを取り戻すからな」

 さすが貴族だ。あの程度では心は折れないか。俺はしばらくリズに憑依して話を進めることにした。

「そう。全く分かっていないのね」

「何がだ?」

「これから分からせてあげる」

「な、何をする気だ」

「まずは、そこの執事さんかしら? 退場してもらうわね。チャーム。あなた名前は何ていうの?」

「セバスチャンです」

 やはり執事だ。セバスチャンていうからには執事に違いない。

「セバスチャン、後で呼ぶから、部屋の外で待っていて」

「かしこまりました」

「あ、おい、セバス。どうしたんだっ」

 伯爵が驚いて、セバスチャンの顔をまじまじと見ている。

「旦那様、後ほど参ります」

 そう言い残して、セバスチャンは部屋を出て行った。

「お前、セバスに何をした!?」

「魅了系の魔法をかけたの。いつ効果が切れるかは人によって様々だけど、しばらくはセバスチャンは私の盟友よ」

「そ、そんなことが……」

「私は出来るの。魅了系の魔法は通常は好印象を与える程度だけど、私の場合、同性は親友、異性は盟友か恋人に出来るのよ」

「お前はいったい、何者だっ!?」

「それは最後に教えてあげる。それよりもまず、私のお姉様を紹介するわね。時空系魔法を得意とする魔女よ。アリサ、伯爵にグラビティでご挨拶して」

「はい。伯爵、アリサだよ。よろしくね。グラビティ」

「ぐおっ」

 伯爵が強烈な重力で床に押し付けられる。

「あははっ、床にベチャって貼り付いていてバカみたい」

 アリサは演技ではなく、本当に楽しんでいるんじゃないか?

「くっ」

「ん、偉いね。貴族の矜持かな。命乞いとかしないんだね。このまま潰せるけど、アリサ、もうやめてあげて」

 俺はアリサが変な女王様になってしまわないように、早めに止めることにした。伯爵がよろよろと立ち上がった。

「ゆ、許さん、許さんからなっ」

「あら、まだ私たちに勝てるみたいなことを言ってるわね。じゃあ、サーシャの力を見せてあげようか。サーシャ、伯爵を殴って。でも、殺しちゃだめよ。伯爵には入学手続きをお願いしないといけないから」

「サーシャ、な、何を」

 たじろぐ伯爵に、サーシャはにっこりと微笑み、かなり手加減して、フックを食らわせた。

 伯爵は横に吹っ飛び、床に転がった。

「伯爵分かった? サーシャはめちゃくちゃ強いのよ。今のはちょこんと叩いた程度だけど、腰を入れて殴ると、即死しちゃうから」

 伯爵が顔を押さえてうずくまっている。サーシャはあんな伯爵でも心配そうに見ている。ちょっと俺には小悪魔的なところを見せるが、サーシャは優しい子なのだ。

「あら? サーシャ、あれでも強すぎたみたいよ。治療してあげて」

「はい。キュア」

 伯爵が驚いた顔で頬を触っている。

「サーシャには聖女の素質があるの。治癒力と神聖力が高いのよ。綺麗に治るでしょう」

「サーシャにこんな力があったとは……」

「サーシャは聖女修行を始めるから、もう手を出せないわよ。それに、仮に手を出しても、即死だから。分かったでしょう」

「お前たちはいったい……」

「最後に私の紹介をするわね。私の名はリズ。ネクロマンサーよ。そこの男は私が召喚した堕天使なの。セフィラス、伯爵にタイキックしてあげて」

「ちょ、ちょっと待て、ようやく治ったんだ」

 俺はここでセフィラスに憑依し、伯爵にキックをかました後、再びリズに憑依し直した。

「うぎゃっ」

「どう? 私たちを殺すなんて言っていたけど、誰に私たちを殺させるの? 私たちは最強なのよ。それよりも手を組んだ方がいいでしょう。私たちはお金も沢山持っているのよ」

 伯爵は四つん這いになって脂汗をかきながらも、懸命に計算しているようだった。

「わ、分かった。よく分かったから、これを治してくれないか」

 伯爵は観念したようだった。

「サーシャ、治してあげて。セフィラス、後の交渉は任せたわよ」

「はい、キュア」

「では、お姉様方、我々はお茶でもいただきに参りましょう。では、ごきげんよう」

 リズたちは部屋を出て行った。俺はセフィラスに憑依している。

「では、伯爵。ビジネスの話をしよう」

 ここからの内容はリズに思念で送る。どのように仕上げるのかを教えるためだ。リズからアリサ、サーシャにも伝わるだろう。

「ビジネス?」

「そうだ。我々はお前の伯爵家の権威が必要だ。対価を支払って、権威を使いたい。お前は我々の力が必要になるときがあるのではないか? それ相応の対価で、我々は力を貸すぞ」

「なるほど、ビジネスか」

「そうだ。まず最初の取引だが、リズ様とアリサ様をセントマリア女学院に入学させて欲しい。それと王都でのリズ様、アリサ様の護衛だ。お前の力ならできるだろう。もちろん、対価は支払う」

「無論可能だが、入学手続きはいいとして、護衛など必要か?」

「あの力を王都で見せつけてもいいのか? 今はお前だけが、あの方々の力を知っているのだぞ」

「なるほど。そういうことか。入学するときの彼女たちの素性はどのようにすればいい?」

「お前の親戚ということで紹介してくれ」

「私の養女ではダメなのか?」

(俺に懐いている二人が許すはずがないな)

「殺されるから、やめた方がいい。あの方々は、たとえ形式上だとしても、誰かの下につくのがお嫌いなのだ」

「わ、分かった」

「お前にはチャームをかけなくても良さそうだな」

「相互利益があるのであれば、サーシャも諦めるし、手も組むさ。私にチャームは不要だ」
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