スケルトンに転生した。冒険者に倒され続ける毎日だったが、冒険者を倒すとレベルアップするんだな

もぐすけ

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ミント篇

聖女検定試験(本戦):サーシャの視点

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「サーシャ、頑張ってね」

 リズとアリサに背中を押されて、私は王都郊外にある聖女検定の本選会場に入った。

 地方での検定試験に合格した十四歳と十五歳の美少女が、全国から二百名以上集結していた。この中から十三名が聖女候補となる。

 試験の内容は、王都郊外にあるキャピタルダンジョンのアンデッドフロアの最奥の五部屋にそれぞ出現するリッチー二十体の浄化のタイムトライアルだ。

 屋外に設けられた特設会場に椅子が並べられており、受験生は自分の番号がかかれた椅子に着席する。私は225番で、後ろから三番目だった。

 リッチーの部屋直通の銀の魔法昇降機が五台設置されており、受験生は空いた部屋に順番に交代で送られて行く。

 昨年の試験の最速は17秒で、合格ラインは20秒だった。私は多分10秒かからないと思うのだが、手加減しないと目立ちすぎてしまう。

 そう思っていたのだが、半分ぐらい終わったころ、受験生の一人が10秒というタイムを出した。聖女検定史上三番目の記録らしい。私はたまたまその女の子の自慢げなコメントを聞いてしまった。

「ここのリッチー、スケルトン並みに弱かったわ」

(おじさまの悪口を言うなんて、許せませんわ)

 それに10秒が三番目ってことは、過去に一桁の人がいるってことで、本気を出しても大丈夫だということだ。

(全力で行かせていただきますわ)

 私はとても気が楽になった。手加減の加減を間違えると落ちてしまうというのが、自分では気がつかなかったが、かなりのプレッシャーだったようだ。

 ようやく自分の番になり、一番左の銀の箱に入り、リッチー部屋へと降ろされた。10秒の記録が出た部屋だ。

 部屋に足を踏み入れた途端に、リッチーが一斉に出現する。霊視のスキルを入手してから初めての戦闘だったが、こんなにクリアに霊体の場所が見えるとは思わなかった。

(すごくよく見えましてよ)

「オラクル」

 女神の声が二十体のリッチーに正確に確実に吸い込まれて行く。瞬時に二十体全てのリッチーが浄化されてしまった。自分でもびっくりの結果だった。

(いくら何でもやり過ぎたかしら)

 私のタイムは2秒だった。

 会場はどよめきに包まれた。最高記録が出たらしいと、ところどころで聞こえる。しかも、これまでの記録を大幅に上回る信じられない記録だという。

 私は今更だが、出来るだけ目立たぬよう、下を向いて自席に戻ろうとしたところ、近づいて来た女性に声をかけられた。

「ねえ、あなた、なぜそんなにレベルが高いのかな?」

 私は顔をあげた。何とミントの聖女様だった。

「冒険者で鍛えましたの」

「どんだけ鍛えたのよ……。お名前は?」

「サーシャですわ」

「覚えておくわ。しっかり修行して来てね」

 ミントの聖女様はそう言って、試験官席に戻られた。

 緊張していて気づかなかったが、試験官十名のなかに二名聖女様が混じっておられた。席次第二位のミントの聖女様と首席の王都の聖女様だ。ミントの聖女様が王都の聖女様に耳打ちして、お二人で私の方を見ている。

(あの首席の座が私の目標ですわ)

 試験が全て終わり、合格者十三名が別室に呼ばれた。私は文句なしのトップ合格で、一番目に別室に入った。私の後ろに10秒の子が続いた。今年は私とこの子が例年に比べて断トツのタイムで、他の合格者は例年並みだった。

 部屋ではシスターから今後についての説明があった。修行開始は一週間後からで、今日から聖女宿舎への入居が可能だという。希望者はこのまま教会の馬車で宿舎まで送ってもらえるらしい。

 私は合格証を受け取り、教会の馬車を希望した。

「では、ご家族やお知り合いにお別れをして、16時にもう一度、こちらにお越しください」

 私は会場を出て、リズとアリサを探した。リズが私に気づいて、手を振っている。私は彼女たちのところに走って行った。

「リズ、アリサ、受かりましたわ」

「うん、おめでとう。2秒で倒した人がいるって、みんな話してたけど、やっぱりサーシャなのね?」

 アリサがちょっと自慢げなのはおかしかった。

「ええ、自分でもびっくりですわ。5秒はかからないと思いましたが、まさか2秒とは驚きましたわ」

「控えめなサーシャらしからぬ派手なデビューね。これから三年間頑張ってね。私たちも頑張るから」

 リズの目がうるうるしている。おじさまに会うまでは泣かずに頑張ろうって三人で誓いましたのに。

「ええ、それで、このまま聖女宿舎に参りますの。ここでお別れですわ」

「そっか。いざ別れるとなると寂しいな」

「アリサには私がついてるって」

「そうね。サーシャは一人で大変だけど、三年後におじさんをびっくりさせるために、お互いがんばろう」

 私はリズ、そして、アリサとしっかりとハグをした。

「ええ、頑張りますわ。リズもアリサも頑張って下さいまし。それでは、ご機嫌よう」

 私は何とか泣かずに二人と別れの挨拶ができた。

 会場に戻ると、二番目の子が私に話しかけて来た。後ろに二人いるが、この子たちも合格者だ。

「あなた、サーシャっていうのね。ご家族はお見えになっていなかったようだけど、孤児って噂は本当なのかしら」

 私が無視して通過しようとすると、別の子が私の前に出た。

「おどきになっていただけるかしら」

「ふん、孤児のくせに貴族のアクセントで話して、上手く化けているわね」

「何か御用かしら?」

「トップ合格していい気になっているみたいだから、気合を入れに来てあげたのよ」

「それはご丁寧に。でも、気合いは間に合っておりますわ。おどきになって。それとも、教会の方々がご覧になっているここで、問題を起こす気かしら?」

「あはは。あなた私のこと知らないようね。私はマーガレット・レイマーウッド、教皇の姪なのよ。問題にはならないわ。気合いのビンタ、受けなさいよ」

 私は会場を見渡して、首都の聖女がこちらの方を見ていることに気づいた。何とかなりそうだ。

「よろしくってよ。どうぞ」

 私は右の頬をどうぞって感じで、マーガレットに向けた。

「あら、案外素直ね。じゃあ、行くわよ」

 私はマーガレットのビンタを右頬に受けた。そして、すぐに思いっきり、マーガレットの右頬を打ち返した。マーガレットが吹っ飛んでいく。死なないように手加減したが、失神してしまったようだ。

 他の二人は口を開けたまま固まってしまっている。

「お返しですわ。早くお友達をキュアして差し上げて。では、ごきげんよう」

 私はそう言い残して、先ほどの別室に向かった。その途中で、案の定、首都の聖女様から声をかけられた。

「元気でいいな。私が目に入ったから、教皇の姪をぶっ飛ばしたのか?」

「はい、先に手を出したのはマーガレットだと証言していただけるかと思いまして」

「証言しなかったら?」

「マーガレットが自分自身で証言したくなるまで、彼女をぶちのめしますわ。そういうのは必要な暴力だと養父ちちから学んでおりますの」

「ふふふ。楽しみだな。大丈夫だ。マーガレットのためにもちゃんと証言するよ。妹は少し苦労した方がいいしな」

 そうだった。首都の聖女様も教皇の姪だった。マーガレットのお姉様なのか。

(おじさま、早くも色々な方から注目されておりますが、ここにいる全員をひれ伏させるためには、早かれ遅かれ注目されてしまうと割り切りますわ。おじさまの天敵である聖女を逆におじさまの力とすること。それが私の使命ですわ)
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