スケルトンに転生した。冒険者に倒され続ける毎日だったが、冒険者を倒すとレベルアップするんだな

もぐすけ

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ミント篇

悪魔退治:第三者視点

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 悪魔退治の依頼は教会に来る。

 ミントに拠点をおくデクスター侯爵家の令嬢に悪魔が取り憑いたという一報を受け、教会の初動部隊が駆け付けたが、滅多に受肉しない伯爵級の悪魔だと認定し、何も出来ずに退却した。

 侯爵級以上は聖女の出動となるが、伯爵級ということで、地方の教会のエクソシスト部隊に悪魔払いの依頼が来た。

「ふっ、久々じゃないか。ここでポイントをためて、今度こそ枢機卿の推薦をもらわねば」

 サーファーのように日焼けした肌に色落ちした髪の毛、きらりと白い歯が光る三十代イケメン、クラウス司教の独り言であった。

 クラウスの独り言はまだ続く。

「シスターアネモネの力が必要だな。彼女に出動要請をしないとね」

 髪を手でかき揚げ、顎をキュッと上にあげ、髪を揺らして整えた。カッコつけの極みだ。

 クラウス司教は指をパチンと鳴らしたが、誰も来ない。仕方なく、クラウスは大声で叫んだ

「おーい、誰か」

 年若い助祭が駆けつけて来た。

「はい、司教様」

「シスターアネモネに使者を出せ。デクスター侯爵家で悪魔狩りだ。取り憑かれたのはジュリエッタ嬢、十六歳だ。シスターアネモネへの迎えの馬車も手配しろ」

 助祭に伝言をして、クラウスは悪魔払いの準備を始めた。聖水、十字架、聖書を革のカバンに詰め込み、司教服に身を固めた。

「ふっ、美男美女のエクソシストが参上しますよ。待っていて下さい、ジュリエッタ嬢」

 ようやくクラウスの独り言が終わった。

***

 クラウスがデクスター邸に着いて、そのまま馬車のなかで待っていると、アネモネの馬車が到着した。

 クラウスはアネモネの上司ではあるが、ここはレディをもてなす騎士でありたい。急いで馬車を降り、アネモネの馬車へと駆けつけた。アネモネが馬車から降りるときに手を貸すためである。

 ところが、アネモネはボーンを随行していた。クラウスが虚をつかれている間に、アネモネもボーンも馬車からしなやかに飛び降りた。

「シスターアネモネ、シスターボーンを連れて来たのか?」

「はい、クラウス司教。経験を積ませるためです」

「今回の悪魔は伯爵級だぞ。未経験のシスターボーンには少し危険ではないか?」

「大丈夫です。司教もおられますし」

「む、それはそうだが……」

(まあ、よい。シスターボーンに格好の良いところを見せる良い機会だ)

 クラウスはアネモネとボーンを後ろに引き連れ、悪魔憑きの娘のいる部屋に向かった。

 部屋に入ると、血まみれの山羊が転がっていて、目を覆いたくなるほどの惨状だった。

 その部屋の奥の方にあるベッドの上で、ネグリジェ姿のジュリエッタが上半身だけ布団から起こした状態で座っていた。

「げっげっげ、エクソシストのお出ましか。ん? お前は……!?」

 クラウスは悪魔の言うことを無視した。悪魔がアネモネの方を見ているようだが、つられて振り返って命を落とすケースもある。悪魔の戯言に付き合わないことは、エクソシストにとって、とても重要なことだった。

 クラウスが聖水をジュリエッタにかけると、シュウウという音と共に湯気が立ち上った。

「ふん、聖水なんぞ、効きはせん」

 悪魔はそう言っているが、これも無視だ。効いていないはずはないのだ。

 クラウスは聖書を開き、神の言葉を朗読し始めた。悪魔が苦しそうにうめき出した。

 気のせいか、クラウスの後ろで奇妙な音が聞きえる。クラウスの死角で、ボーンが苦しんでもがいている音だった。

(なんの音だ? いかん、集中せねば)

 クラウスは一瞬気をそらしたが、すぐに集中し直した。

 もう一度、クラウスは聖水をジュリエッタに浴びせた。

「ギャアアアアアアア」

 今度は悪魔も痩せ我慢出来なかったようだ。いや、違う。悪魔が別の悪魔から、無理矢理ジュリエッタの体外に押し出されている。

 悪魔の霊体は受肉した状態でないと、この世に存在出来ない。伯爵級悪魔は地獄に強制送還された。

 そして、代わりにジュリエッタの体に取り憑いたのは、君主級悪魔だった。

「おう、久しぶりだな。アバドンだ」

 ジュリエッタはアネモネを睨んだ。突然、ベッドが宙に浮き、クラウスを吹き飛ばし、アネモネの側でとまった。クラウスは壁に打ち付けられ、そのまま意識を失った。

「デーモンリングを返してもらおう」

 ジュリエッタの顔がアネモネの顔に触れるぐらいまで近づいたが、アネモネはステップバックした。

「アバドン、しつこいわね。オーラ」

 アネモネのステータスが三倍に跳ね上がる。

(ボーン様、少し時間を稼いで。ホーリーじゃないとあいつは退治出来ないわ)

 アネモネはアバドンに気づかれないように、ボーンに思念で通話した。

(分かった。間違っても、俺に当てるなよ。ってか、アネモネはオラクルだけでなく、ホーリーも使えるのかよ)

 ボーンはアバドンとアネモネの間に割って入った。

 アバドンはジュリエッタの顔で意外そうな表情をしてボーンを見つめた。

「お前、心臓はどこにあるんだ?」

(き、来た)

 ボーンは息を止め、鑑定を妨害した。逆にボーンが鑑定を行うが、何も見えなかった。

 ボーンはデュエルを唱えた。ボーンの霊体の分身が作成され、二体となる。

 アバドンからボーンに対して猛攻撃が開始されたが、二体のボーンが全てを受け止めて、アネモネを必死でかばった。

 ただし、ボーンからは、ジュリエッタの体を傷つけてしまうため、迂闊に攻撃をしかけられない。

(そうだ)

 ボーンは閃いた。ボーン二体のうち、一体の方が倒れているクラウスから聖水の瓶を取り出した。そして、ジュリエッタの側まで瞬時に移動し、聖水をジュリエッタの口から注ぎ込んだ。

「グオ、ごぼぼぼぼぼぼ」

 ボーンの俊足でなければ出来ない技だったかもしれない。さすがのアバドンもこれには面食らったようで、攻撃の手を止めて、聖水を体外に吐き出そうとしている。

 ボーンは聖水を吐き出されないようジュリエッタの口を抑えた。ボーンの手に聖水がかかって、シュウシュウ煙を立てている。だが、アバドンの方はもっと苦しそうだ。ボーンは聖水をさらにもう一本ジュリエッタの口に注ぎ込んだ。

 アバドンは必死になって激しくボーンに攻撃を加えるが、どんなに攻撃してもボーンは倒れない。アバドンはボーンの正体にようやく気づいた。

「お前はアンデッド……」

 だが、アバドンは気づくのが遅すぎた。

「ホーリー」

 アネモネがホーリーを放った。青白い光がジュリエッタを包み込む。ボーンの一体の方はうまく避難出来たが、ジュリエッタに聖水を飲ませていたもう一体の方が、青白い光に包まれた。

 激しく体全体がシェイクされるような感覚に耐え、ボーンはすんでのところで、デュエルを解除した。ホーリーに包まれていた方のボーンが、危機一髪でホーリーから逃れ、二体のボーンが合体した。

 一方で、アバドンは、ジュリエッタの体内から脱出できないまま、浄化されていった。

『レベルが3673になりました。センドの魔法を覚えました。天使のスキルを覚えました。悪魔のスキルを覚えました。魔王のスキルを覚えました。全知のスキルを覚えました。予知のスキルを覚えました。支配のスキルを覚えました。憑依のスキルを覚えました。使徒のスキルを覚えました。蟲使のスキルを覚えました。偽装のスキルを覚えました。魅惑のスキルを覚えました。傀儡のスキルを覚えました。変装のスキルを覚えました。転生のスキルを覚えました。霊感のスキルを覚えました。霊視のスキルを覚えました。舞踊のスキルを覚えました。演奏のスキルを覚えました。離脱のスキルを覚えました。語学のスキルを覚えました。無音のスキルを覚えました。迷彩のスキルを覚えました。分裂のスキルを覚えました。修復のスキルを覚えました。複製のスキルを覚えました。一度に覚えられるスキルに達しました』

『従者リズのレベルが3673になりました。プロキシーの魔法を覚えました』

『従者アリサのレベルが3673になりました。ディメンションの魔法を覚えました』

『従者サーシャのレベルが3673になりました。ホーリーの魔法を覚えました』

(なんか、とんでもない力が手に入った気がするが、それより、アネモネ。やっぱり俺にホーリーを当てたじゃないか)

「二体いたから、どっちか生き残ると思ったのよ。でも、ボーン様の片割れがギリギリまでジュリエッタの口をふさいでいたから、アバドンに逃げられなくて済んだわ。300年ほど追われていて、大変だったのよ。君主級の悪魔を浄化したなんて、人類史上初めてじゃないかしら」

(俺も巻き添えで浄化されそうになったがな)

「もう、いつまでもぐずぐず言わないの。さあ、クラウス司教を起こすわよ」
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