47 / 55
王都篇
必然の出会い
しおりを挟む
サーシャはマーガレットを縛り上げ、馬車の荷台に放り込み、馬を走らせた。
先ほどまでは怒りに任せて行動してしまったが、マーガレットを連れ去ったのは、かなりまずいことだとようやく気づいた。
(教会を本気にさせてしまいますわ)
ただ、普通に聖女修行したかっただけの自分の人生、そして、その人生はおじ様が用意してくれたものなのに、それを理不尽に滅茶苦茶にしたマーガレットの仕打ちはどうしても許せなかった。
聖女候補はサーシャを除いて全員が貴族の令嬢だ。サーシャのみ平民で、しかも、孤児だ。マーガレットは極端だが、他の聖女候補や教師陣もサーシャには冷たかった。
この国というか、人間社会は、立場の弱い者を虐めて搾取することを是としている。奴隷は最も弱い立場にあり、尊厳や命までもが簡単に踏み躙られる。そこから脱却したと思ったのだが、自由市民も貴族からすれば、奴隷と同じだった。
(おじ様は誰にでも平等に接してくれますのに。おじ様が王様だったらよろしかったのに)
サーシャはボーンに会いたい一心でミントに向かおうとしていたが、自分のしでかしたことで、ボーンに迷惑がかかることに今更ながら気づいた。
(おじ様のところには帰れませんわ)
サーシャは馬を反転させ、元来た道を戻り、聖女宿舎に帰った。
聖女宿舎では聖女候補たちが従業員たちの手当てを済ませて、食堂に集まって善後策を話し合っていた。
サーシャはマーガレットの縄をほどいて解放した。サーシャは聖女候補たちに訴えた。
「マーガレットが執拗に私に嫌がらせをして来たことは皆さんもご存知かと思いますわ。独房に入れられて、餓死させられるところでしたが、そうまでして、私に聖女修行をさせない理由を教えて頂きたいの。そのために戻って来ましたわ」
マーガレットはすっかり怯えて何も言えなかったが、マーガレットが従えている二人が口々に言った。
「あなたが貴族ではないからですわ」
「そうですわ。ここは貴族の世界、平民はお呼びでなくてよ」
「あなたがどんなに強くても、私たちはあなたを排除し続けるわ」
残りの聖女候補たちも同じ考えであることは、目や口元で分かった。
「分かりましたわ。出て行きます……」
サーシャはまだ十四歳だ。今は身分社会の絶対的な壁に屈するしかなかった。
(おじ様、私、悔しい……。おじ様が大切にしてくれる私を大切にしないこの人たちを許せない)
サーシャは再び聖女宿舎を出て、馬にまたがり、王都の冒険者組合に向かった。このままミントに帰ることも考えたのだが、リズやアリサは頑張っているはずだ。彼女たちを裏切れないと思い、三年間、自分なりに修行してみようと考えたのだ。
王都は聖女宿舎から馬で十分ほど行ったところにある。王都は城塞都市だが、自由民であれば出入りは自由だ。
冒険者組合に入ると、昼過ぎだったので、人はまばらだった。組合が混むのは朝夕だ。
掲示板で仕事を探していると、誰かが近づいてくる。さっさくナンパかとサーシャはウンザリしたが、意外にも声をかけて来たのは、二十歳ぐらいの美しい女性だった。
「あなた、確かあのスケルトンの仲間よね。一人なの? 仲間はどうしたの?」
サーシャは霊視ができる。よく注意しないと分からなかったが、目の前にいる女性に霊体が二つ見えた。
「憑依?」
女性がピクリとして、サーシャをじっと見て、驚いている。
「あなた、レベルがとんでもないじゃない。あ、ごめんなさい。鑑定しちゃったわ。憑依がバレたのは霊視のスキルね」
「スケルトンクイーンのお姉様?」
「そう。クレアと呼んで。あなたは?」
「サーシャですわ」
「あなた凄い美少女だから、すぐにあのスケルトンの仲間だと分かったけど、他の仲間はどうしたの?」
サーシャは涙をぽろぽろ流し始めた。
「あらら。さてはあのロリコンに変なことされたのね。いきなり私の腕を握ったり、スケベトンなのよ、あの男はっ」
「い、いえ、違いますわ」
「話を聞かせて。そうね、仕事探しているのでしょう? 私が雇うってのでどう? そこの貼り紙が私のよ。護衛を探しているのだけど、あなた以上に強い人はいないでしょ。それに女性だと気が休まるわ。給与は弾むわよ。冒険者組合通す? それとも、私と直接契約する?」
相変わらずペースの速い人だと思いつつも、サーシャはこの女性となら、いい修行ができるのではないかと思った。
「お願いしますわ。契約はどちらでも構いませんわ」
「じゃあ、直接契約で。よろしくね。さあ、行くわよっ。事情は行く途中で聞くわ」
「どこですの?」
「王宮よ」
先ほどまでは怒りに任せて行動してしまったが、マーガレットを連れ去ったのは、かなりまずいことだとようやく気づいた。
(教会を本気にさせてしまいますわ)
ただ、普通に聖女修行したかっただけの自分の人生、そして、その人生はおじ様が用意してくれたものなのに、それを理不尽に滅茶苦茶にしたマーガレットの仕打ちはどうしても許せなかった。
聖女候補はサーシャを除いて全員が貴族の令嬢だ。サーシャのみ平民で、しかも、孤児だ。マーガレットは極端だが、他の聖女候補や教師陣もサーシャには冷たかった。
この国というか、人間社会は、立場の弱い者を虐めて搾取することを是としている。奴隷は最も弱い立場にあり、尊厳や命までもが簡単に踏み躙られる。そこから脱却したと思ったのだが、自由市民も貴族からすれば、奴隷と同じだった。
(おじ様は誰にでも平等に接してくれますのに。おじ様が王様だったらよろしかったのに)
サーシャはボーンに会いたい一心でミントに向かおうとしていたが、自分のしでかしたことで、ボーンに迷惑がかかることに今更ながら気づいた。
(おじ様のところには帰れませんわ)
サーシャは馬を反転させ、元来た道を戻り、聖女宿舎に帰った。
聖女宿舎では聖女候補たちが従業員たちの手当てを済ませて、食堂に集まって善後策を話し合っていた。
サーシャはマーガレットの縄をほどいて解放した。サーシャは聖女候補たちに訴えた。
「マーガレットが執拗に私に嫌がらせをして来たことは皆さんもご存知かと思いますわ。独房に入れられて、餓死させられるところでしたが、そうまでして、私に聖女修行をさせない理由を教えて頂きたいの。そのために戻って来ましたわ」
マーガレットはすっかり怯えて何も言えなかったが、マーガレットが従えている二人が口々に言った。
「あなたが貴族ではないからですわ」
「そうですわ。ここは貴族の世界、平民はお呼びでなくてよ」
「あなたがどんなに強くても、私たちはあなたを排除し続けるわ」
残りの聖女候補たちも同じ考えであることは、目や口元で分かった。
「分かりましたわ。出て行きます……」
サーシャはまだ十四歳だ。今は身分社会の絶対的な壁に屈するしかなかった。
(おじ様、私、悔しい……。おじ様が大切にしてくれる私を大切にしないこの人たちを許せない)
サーシャは再び聖女宿舎を出て、馬にまたがり、王都の冒険者組合に向かった。このままミントに帰ることも考えたのだが、リズやアリサは頑張っているはずだ。彼女たちを裏切れないと思い、三年間、自分なりに修行してみようと考えたのだ。
王都は聖女宿舎から馬で十分ほど行ったところにある。王都は城塞都市だが、自由民であれば出入りは自由だ。
冒険者組合に入ると、昼過ぎだったので、人はまばらだった。組合が混むのは朝夕だ。
掲示板で仕事を探していると、誰かが近づいてくる。さっさくナンパかとサーシャはウンザリしたが、意外にも声をかけて来たのは、二十歳ぐらいの美しい女性だった。
「あなた、確かあのスケルトンの仲間よね。一人なの? 仲間はどうしたの?」
サーシャは霊視ができる。よく注意しないと分からなかったが、目の前にいる女性に霊体が二つ見えた。
「憑依?」
女性がピクリとして、サーシャをじっと見て、驚いている。
「あなた、レベルがとんでもないじゃない。あ、ごめんなさい。鑑定しちゃったわ。憑依がバレたのは霊視のスキルね」
「スケルトンクイーンのお姉様?」
「そう。クレアと呼んで。あなたは?」
「サーシャですわ」
「あなた凄い美少女だから、すぐにあのスケルトンの仲間だと分かったけど、他の仲間はどうしたの?」
サーシャは涙をぽろぽろ流し始めた。
「あらら。さてはあのロリコンに変なことされたのね。いきなり私の腕を握ったり、スケベトンなのよ、あの男はっ」
「い、いえ、違いますわ」
「話を聞かせて。そうね、仕事探しているのでしょう? 私が雇うってのでどう? そこの貼り紙が私のよ。護衛を探しているのだけど、あなた以上に強い人はいないでしょ。それに女性だと気が休まるわ。給与は弾むわよ。冒険者組合通す? それとも、私と直接契約する?」
相変わらずペースの速い人だと思いつつも、サーシャはこの女性となら、いい修行ができるのではないかと思った。
「お願いしますわ。契約はどちらでも構いませんわ」
「じゃあ、直接契約で。よろしくね。さあ、行くわよっ。事情は行く途中で聞くわ」
「どこですの?」
「王宮よ」
1
あなたにおすすめの小説
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる