スケルトンに転生した。冒険者に倒され続ける毎日だったが、冒険者を倒すとレベルアップするんだな

もぐすけ

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王都篇

サーシャの決断

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「サーシャ、起きて。日が暮れたわ。行くわよ」

 サーシャは眠ってしまっていた。目を覚ましたが、自分のいる場所を思い出すのに少し時間がかかっている感じだ。

「大丈夫? 寝ぼけてない?」

「クレア、大丈夫ですわ」

 サーシャがいつもの美しさを取り戻した。クレアは壁を見ながら、サーシャにささやいた。

「今は使用人部屋に誰もいないわ。部屋に出るわよ」

 二人は壁を通過して使用人の部屋に入った。

「ドアを出て左に真っ直ぐ五メートルで井戸よ。一緒に行って、私が井戸の中に入るから、桶の上下をお願いね」

 そう小声でクレアが説明して、目を閉じて索敵している。

「今よっ」

 クレアとサーシャは井戸に向かって歩いた。走るのは目立つからだ。二人は井戸に着いた。クレアが井戸の中に入り、桶に足をかけ、つるべに両手でつかまった。

「下ろして」

 サーシャはゆっくりと桶を下ろしていった。井戸の中は暗くて見えないが、霊視でクレアの霊体がどこにいるのかは見える。

 桶が井戸の水面に達し、クレアが水に潜ったようだ。

 サーシャは辺りを見回した。使用人の住居区は井戸を中心に円状に建物が並んでおり、すっかり日は落ちているが、部屋のランプの灯りが外に漏れていて、井戸の辺りをそれなりに明るく照らしている。夕食の時間帯だからか、時折大きな笑い声が建物から聞こえてくる。

 しばらくして、つるべにトントンと合図があった。

 人が近づいて来たが、サーシャは構わず桶を上げた。クレアがチャームをかけるだろうと思ったからである。それに、手を止めるのは不自然だと思った。

「姉ちゃん、誰だ?」

 男の声だった。サーシャは無視して桶を引き上げた。

 クレアがスケルトンを背負って、井戸の上に現れた。

「な、なんだあ!?」

 男が目を見開いて驚いている。骸骨を背負ったずぶ濡れの女が、井戸を上がって出て来たのだ。驚かない方がおかしい。

「チャーム」

 クレアが男にチャームをかけ、指示を出した。

「井戸に物が落ちたので、拾って来て」

「あ、ああ」

 男はクレアの言葉に従って、よろよろと井戸に近づいていく。

「え? え?」

 サーシャは驚いた。

 男は井戸に飛び込んだ。あの高さだ、絶命しているだろう。

「スケルトンを見られたのは不味かったわ。人は転生するの。殺生は好きではないけど、自分の身を守るためなら躊躇しないわ。アンデッドですもの。それに、平民の人生は早く終わらせてあげた方が、本人のためよ」

「私も早く死んだ方がいいと……?」

 サーシャは自分でも驚くほど低く冷たい声を出していた。

「言い方が悪かったわ。ごめんなさい。ここで貴族の命令に従って、日々をなんとなく過ごしている人っていう意味に取ってね。あなたは違うわ。さあ、早く逃げるわよ。これ以上、井戸に身投げをさせたくはないでしょう」

「はい」

 とりあえず、サーシャはクレアの言う通りにすることにした。

 二人は使用人の部屋に駆け込み、壁を通過した。

 クレアがスケルトンを布に包んで、背中にくくりつけた。

「さあ、カフェまで戻るわよ」

 二人は無言のまま、カフェの女子トイレに到着した。

「サーシャ、今回の仕事はこれで終わりだけど、この後はどうするつもり? もし、私の仕事を手伝ってくれるなら、このまま契約を続行したいのだけど」

「どんなお仕事ですの?」

「トイレじゃなんだから、夕食を一緒にどう? もちろん、私の奢りよ。ここのカフェは食事も美味しいのよ。人に憑依すると、ご飯が食べられるのが最高なの」

「頂きますわ」

 サーシャはおじ様が冒険者や奴隷商人を躊躇しないで殺していたことを思い出していた。おじ様は悪人しか殺さない、という線引きがあった。クレアは自分を守るために殺すという線引きをしている。無差別に殺人を楽しんでいるわけではない。

 そう考えて、サーシャはクレアの話を聞くことにしたのだ。

「そう、よかった。さっきの件で見限られたかと心配していたの。ここはね、シチューが絶品なのよ。きっと気に入ってくれると思うわ」
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