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出産
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私はノルランド帝国の国境の街で、無事男の子を出産した。
出産ってものすごく痛いのね。
後で知るのだが、私よりも三日前に、フローラは王都の郊外で女の子を産んだ。
トーマスとマークは一週間後にそれぞれ自分の子供が産まれたことを知った。
出産後、落ち着いたところで、皇帝からの迎えの一団に案内され、帝都へと入った。
隣国の元皇太子が、現皇太子妃とその嫡男をさらって亡命したことは、帝国ではビッグニュースとなっていた。
「ようこそ来られた。帝都で不自由はございませんかな?」
皇帝は柔和な表情の初老の男だった。
軍事国家を率いる皇帝は、もう少しイカつい感じかと勝手に想像していた。
「はい、よくしていただいて、皇太子妃もご満足されておられます」
トーマスが亡命の主役であるため、彼が応答した。
私は横で静かに座っていればいいはずだった。
「そなたがマークの妃となられた方か」
マークはずっと帝国の人質だった。
「はい、エイミーと申します。皇帝陛下」
「ふむ。あの悪ガキがよくも、こんな美人をめとったものじゃのう。いろいろと調べさせてもらったが、王立学園を首席で卒業されておる。まさに才色兼備じゃの」
「勉強は嫌いだったのですが、マークに教わりまして……」
「あやつは帝国でも断トツで優秀じゃったからな。このまま帝国にいて、わしの後を継げ、とかなり本気で口説いたのじゃが、自分よりも優秀な兄を身代わりに献じるから、帰してほしいというので、帰したのだ」
帝国は徹底的な実力主義で、皇室よりも優秀な男子がいる場合は、皇室に婿入りさせて皇位を継がせるという。
今の皇帝も皇室の出ではないらしい。
むしろ、皇室出身の皇帝はほとんどいないらしい。
「で、トーマス殿はマークよりも優秀なのかな?」
「どうでしょうか。子供の頃は負けたことはありませんが、弟が帝国に行く前の話ですから」
「トーマス殿の力量はおいおい確かめさせてもらう。エイミー殿はあのマルソー家の出と聞いておる。そなたはマルソー家の兵をどれぐらい集められる?」
え? どういう意味かしら?
トーマス様を横目でチラリと見るが、助けてはくれないようだ。
私への質問は私が答えないといけないということか。
「私に兵の召集権はございませんが、王国がマルソーを攻めれば、私の元に自然と集まって来るでしょう。もちろん、皇帝陛下が受け入れてくださる、というのが前提ですが」
「ふむ、なるほどのう。トーマス殿を皇帝にすれば、帝国がそのまま攻められることはないかな?」
トーマス様が皇帝という可能性もあるの? すごい国ね。
「受け入れてくれた国を攻めるなど、どなたが皇帝であろうと、マルソーにそのような不義理を働くものはおりません」
「そうか。満足の行く回答じゃ。エイミー殿、トーマス殿、貴殿たちを国賓としてお迎えしたい。色々と不躾な質問ですまなかった。貴殿たちの本心を確かめたかったのじゃ。許して頂きたい」
「ごくごく普通の質問でございましたよ。この程度で謝罪されてしまいますと、今後、私から質問出来なくなってしまいます」
「何と。これは一本とられたわい。はっはっは、エイミー殿、何でも質問されるとよい」
皇帝陛下は柔和な笑顔を見せた。
「トーマスが仮に皇帝となる場合、皇室のどなたかに婿入りすることになるのでしょうか」
「うむ、前例ではそうなる」
「女は皇帝になることは出来るのでしょうか」
「過去に前例はないな。ただ、どちらも前例がないというだけだ。帝国では力が正義ゆえ、前例を覆す力があれば、何だって出来るぞ」
「お答えいただき、ありがとうございます」
私とトーマス様は、皇宮の一室どころか、一棟をそれぞれ与えられ、国賓どころか、皇族並みの待遇で受け入れられた。
出産ってものすごく痛いのね。
後で知るのだが、私よりも三日前に、フローラは王都の郊外で女の子を産んだ。
トーマスとマークは一週間後にそれぞれ自分の子供が産まれたことを知った。
出産後、落ち着いたところで、皇帝からの迎えの一団に案内され、帝都へと入った。
隣国の元皇太子が、現皇太子妃とその嫡男をさらって亡命したことは、帝国ではビッグニュースとなっていた。
「ようこそ来られた。帝都で不自由はございませんかな?」
皇帝は柔和な表情の初老の男だった。
軍事国家を率いる皇帝は、もう少しイカつい感じかと勝手に想像していた。
「はい、よくしていただいて、皇太子妃もご満足されておられます」
トーマスが亡命の主役であるため、彼が応答した。
私は横で静かに座っていればいいはずだった。
「そなたがマークの妃となられた方か」
マークはずっと帝国の人質だった。
「はい、エイミーと申します。皇帝陛下」
「ふむ。あの悪ガキがよくも、こんな美人をめとったものじゃのう。いろいろと調べさせてもらったが、王立学園を首席で卒業されておる。まさに才色兼備じゃの」
「勉強は嫌いだったのですが、マークに教わりまして……」
「あやつは帝国でも断トツで優秀じゃったからな。このまま帝国にいて、わしの後を継げ、とかなり本気で口説いたのじゃが、自分よりも優秀な兄を身代わりに献じるから、帰してほしいというので、帰したのだ」
帝国は徹底的な実力主義で、皇室よりも優秀な男子がいる場合は、皇室に婿入りさせて皇位を継がせるという。
今の皇帝も皇室の出ではないらしい。
むしろ、皇室出身の皇帝はほとんどいないらしい。
「で、トーマス殿はマークよりも優秀なのかな?」
「どうでしょうか。子供の頃は負けたことはありませんが、弟が帝国に行く前の話ですから」
「トーマス殿の力量はおいおい確かめさせてもらう。エイミー殿はあのマルソー家の出と聞いておる。そなたはマルソー家の兵をどれぐらい集められる?」
え? どういう意味かしら?
トーマス様を横目でチラリと見るが、助けてはくれないようだ。
私への質問は私が答えないといけないということか。
「私に兵の召集権はございませんが、王国がマルソーを攻めれば、私の元に自然と集まって来るでしょう。もちろん、皇帝陛下が受け入れてくださる、というのが前提ですが」
「ふむ、なるほどのう。トーマス殿を皇帝にすれば、帝国がそのまま攻められることはないかな?」
トーマス様が皇帝という可能性もあるの? すごい国ね。
「受け入れてくれた国を攻めるなど、どなたが皇帝であろうと、マルソーにそのような不義理を働くものはおりません」
「そうか。満足の行く回答じゃ。エイミー殿、トーマス殿、貴殿たちを国賓としてお迎えしたい。色々と不躾な質問ですまなかった。貴殿たちの本心を確かめたかったのじゃ。許して頂きたい」
「ごくごく普通の質問でございましたよ。この程度で謝罪されてしまいますと、今後、私から質問出来なくなってしまいます」
「何と。これは一本とられたわい。はっはっは、エイミー殿、何でも質問されるとよい」
皇帝陛下は柔和な笑顔を見せた。
「トーマスが仮に皇帝となる場合、皇室のどなたかに婿入りすることになるのでしょうか」
「うむ、前例ではそうなる」
「女は皇帝になることは出来るのでしょうか」
「過去に前例はないな。ただ、どちらも前例がないというだけだ。帝国では力が正義ゆえ、前例を覆す力があれば、何だって出来るぞ」
「お答えいただき、ありがとうございます」
私とトーマス様は、皇宮の一室どころか、一棟をそれぞれ与えられ、国賓どころか、皇族並みの待遇で受け入れられた。
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