英雄の俺が転生憑依した男は、S級冒険者パーティの下働きだった。頭に来た俺は、ダンジョン攻略中に全員の荷物を持ってパーティから逃げ出してやった

もぐすけ

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逃亡

返り討ち

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「ルーカス、どうした? もうアンジェラ品はないぜ」

 ルーカスは俺を不思議なものを見るような目で見ている。他の三人は様子見している感じだ。

「お前、本当にマモルか? さっきも思ったが、目つきや雰囲気がまるっきり別人だぞ」

 俺が答えないでいると、ルーカスは剣を抜いて構えた。

「まあ、そんなことはどうでもいい。カバンのなかの金を置いて行け。そうしたら、命は助けてやる」

「ちょっと待ってくれ。今、カバンから取り出すから」

 俺はカバンを下ろして、中からヌンチャクを取り出した。

「そうそう、そうやっていつも通り、素直に言うこと聞いた方が身のためだぞ。ブラックイーグルからの追放者なんて、格好のいじめの対象だぜ。お、おい、お前、何をしている」

「ヌンチャクを取り出したのさ。待っててくれて助かったぜ」

 俺は相手の攻撃を見切れない。そのため、相手から攻められる前に、休む間もなく攻撃をする必要がある。

 俺はルーカスに向かって思い切り踏み込んだ。前世の英雄時代に、俺は数え切れないくらいの人を殺している。意表をつかれて突っ立っているルーカスの頭に、俺は躊躇なくヌンチャクを叩き込んだ。

 ルーカスは頭に強烈な一撃を受け、転倒した。さすがにA級剣士だけあって、直前にうまく急所を外したようだが、脳震盪を起こして失神している。

 俺は舞うように残りの三人に向かって行った。マモルの身体能力は期待通りだった。俺がイメージする剣技の動きにきっちりと体がついてくる。俺はヌンチャクを剣のように操り、三人の腕を折り、足を折り、鼻を折った。

 どうやら残りの三人は戦意を喪失したようだ。

「おい、お前ら。ルーカスは一人でブラックイーグルに自分を売り込みに行くつもりだぞ。あんな性格の悪いアンジェラにうつつを抜かしているダメリーダーなんて、早く見限った方がいい。ほら、ポーションだ。すぐに飲むといい」

 俺は三人にそれぞれ一つずつポーションを渡した。一つ五万ダーラはする高級品だが、投資する価値があるとみたからだ。

 ポーションを必死になって飲んでいる男たちに俺は聞いてみた。

「お前たちはルーカスについて来ただけだろう? そうじゃなかったら、もう一度、半殺しにするが、どうなんだ?」

「は、はい、その通りです。マモルさんがダンジョンの報酬を持っているので襲うから来いと誘われました。ブラックイーグルさんのお金だからと断ったのですが、マモルさんがブラックイーグルから追放されて、盗んだ金を取り戻すんだと言われて……」

 ポーションを飲んで回復した男が必死になって弁解した。

「追放されたんじゃない。自ら辞めたんだ。お前ら俺のことを舐めているようだが、見ての通りだ。俺は強えぞ。次に向かって来たら殺すからな。さて、ルーカスは殺しておくか」

 俺はカバンから魔物の肉を捌くための包丁を取り出した。

 男たち三人はまっ青になって震え上がった。

 俺がルーカスに近づいていくと、勇気ある一人が俺の前に割り込んで、土下座して叫んだ。

「か、勘弁して下さい。ルーカスにはちゃんと言って聞かせますから。殺さないで下さい。お願いしますっ」

 俺は少し迷ったが、生かしておくことにした。生かしておいた方が、アンジェラと面白いことになりそうだと思ったからだ。

「分かったよ。でも、ルーカスが俺にまた何か言って来たら、今度は全員容赦しないからな」

 俺は包丁をしまい、その場を立ち去った。

 さて、宿を引き払って、あの魔法使いに弟子入りしないとな。キースたちが出て来るまでの五日間にいくつか魔法をマスターしておく必要がある。
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