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終結
帰還
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ジークは皆に本堂での出来事を話した。
「全部解決じゃないの。イグジットで帰還して、順番にやっちゃおうよ」
アンジェラはノリノリだ。っていうか、もうやることしか考えていない。
「そろそろ、エイデンに代わる時間だな、アン、また二日後な」
「うん」
エイデンが表層に現れた。
「お嬢様方、状況をお教え下さい」
「エイデン様、私が逆エスコート致しますわ。皆さん、帰りますわよ」
***
ホワイトイーグルがダンジョンを制覇したことはすでに国中に知れ渡っていた。国王から褒美も出るそうで、王宮への招待状も組合に届いていた。
組合長のヨーダは、孫娘の快挙に目を細めていたが、結婚したいと連れて来た男が、先日アンジェラとリサが取り合っていた男だと知り、目を見開いた。
「この男には三人も入っているのか。今は紫のオーラしか見えんが、紫のオーラはお主だったんじゃな。三分の一しか連れそえんが、そっちの方がかえって長続きするかもしれんの。孫娘をよろしく頼むぞ」
「はい、二人で幸せになります」
「エイデン様、今日は我が家にお泊まりになって下さいまし。両親にもお会いして下さいまし」
「分かりました。リサ様、アンジェラ様、しばし失礼致します。明日の祝賀会でマモル殿に代わります」
「あ、祝賀会はジークにして。ダンジョンで一番活躍したのはジークだから」
「リサ、ありがとう!」
アンジェラはすごく嬉しそうだ。
「分かりました。明日はジーク殿に代わります」
エイデンとイメルダは手をつないで、組合を出ていった。
「さあ、私は今日は宿屋に泊まるけど、リサはどうするの?」
「そうね、道場に一度帰りたいところだけど、私も宿屋に泊まるかな。ねえ、一緒に泊まらない?」
「もちろんいいわよ」
***
「私たち、まさか仲良しになるなんて思いもしなかったわ」
「お互い十八で同い年でしょう。私は剣の道、あなたは魔法の道でブラックイーグルに入るまではあまり交わりはなかったけど、あなたの名前はよく聞いたわ」
「私もよ、疾風のリサって、同い年で凄いのがいるってね」
「魅了のアンジェラもね」
「マモルは二つ上でしょ? 同じ道場だったんでしょう?」
「ええ。マモルはある日、隣の家に引っ越して来たお隣さんだったの。子供の頃はすごく仲が良かったんだけど、マモルは剣術が嫌いでね。誰よりも才能があって、父もすごく期待していたのだけど、歌や踊りしかしなくなって、父から破門されたのよ」
「そうだったのね」
「私もマモルの才能が羨ましかったから、剣を捨てたマモルをすごく罵ったわ。でも、彼は寂しく笑うだけで。それから私は剣の道に生きることにしたの」
「疾風のリサの転機ね」
「そうね。父が残念そうだったから、私がって思ったのよ。マモルはその後、引っ越してしまったんだけど、何度かマモルを学校の前で待ち伏せして、竹刀で打ちのめしたわ。本当はマモルに褒めて欲しかったの。でも、彼は優しく微笑むだけだったわ。褒めてくれないのよ」
「それすごい有名よ。リサが虐めている美青年がいるって。あなたすごく人気あったから、マモルは結構他の男子たちにも虐められるようになったのよ。あの優しさだから、相手も図に乗ちゃってね」
「それ知っていたわ。いい気味だと思ってたの。私が真剣に取り組んでいる剣の道を軽んじるからだって。それに、マモルが本気出したら、誰も喧嘩で彼に勝てないから、大怪我にはならないと思ってたわ。逃げ足も早いしね。お母様が悲しまれることはしないはずだから」
「マモルって強いの?」
「喧嘩する気になればね。一度だけマモルが怒ったのを見たことがあるの。まだ道場にいたとき、父の娘ってことで、兄弟子たちが悪ふざけで私を稽古で虐めたことがあったの。そのとき、いつもは素振りしかしないマモルが、兄弟子たちに掛かり稽古を挑んで、相手が泣いて謝るまでコテンパンに痛めつけていたわ。まるでジークね」
「そうね、ジークは手加減しないわよね。私の頚動脈は手加減してくれたけど。ねえ、認めてもらいたかったのは、お父さん? それともマモル?」
「両方かな? でも、今でも父は、マモル君はどうしたって、聞くのよ。結婚しますって言ったら、すごく驚くと思うよ」
「ゴンゾウさんね」
「ふふ、そう。その後もマモルに会いに行っては、蹴飛ばしたり、ビンタしたり、とにかくちょっかい出しまくったわ。冒険者になる時の手続きやら引っ越しやら、全部やらせたわ。頼めば何でもやるのよ。ただ犬になれって言ったら、微笑むだけだったけど」
「ああ、その頃から私もマモルを見かけるようになったわ。リサの奴隷がいるってね。初めて見たとき、思った以上に可愛い顔していてびっくりしたわよ。マモルはサド女から注目の的だったわよ」
「あなたはサド女?」
「そうね。マモルにはそうだったかな。とにかくマモルには腹が立ってさ。私たち兄妹の生き様を否定される気持ちになったからね。精神魔法を人に放ったのはマモルだけよ」
「アン、今度はあなたの話を聞かせてくれる?」
「全部解決じゃないの。イグジットで帰還して、順番にやっちゃおうよ」
アンジェラはノリノリだ。っていうか、もうやることしか考えていない。
「そろそろ、エイデンに代わる時間だな、アン、また二日後な」
「うん」
エイデンが表層に現れた。
「お嬢様方、状況をお教え下さい」
「エイデン様、私が逆エスコート致しますわ。皆さん、帰りますわよ」
***
ホワイトイーグルがダンジョンを制覇したことはすでに国中に知れ渡っていた。国王から褒美も出るそうで、王宮への招待状も組合に届いていた。
組合長のヨーダは、孫娘の快挙に目を細めていたが、結婚したいと連れて来た男が、先日アンジェラとリサが取り合っていた男だと知り、目を見開いた。
「この男には三人も入っているのか。今は紫のオーラしか見えんが、紫のオーラはお主だったんじゃな。三分の一しか連れそえんが、そっちの方がかえって長続きするかもしれんの。孫娘をよろしく頼むぞ」
「はい、二人で幸せになります」
「エイデン様、今日は我が家にお泊まりになって下さいまし。両親にもお会いして下さいまし」
「分かりました。リサ様、アンジェラ様、しばし失礼致します。明日の祝賀会でマモル殿に代わります」
「あ、祝賀会はジークにして。ダンジョンで一番活躍したのはジークだから」
「リサ、ありがとう!」
アンジェラはすごく嬉しそうだ。
「分かりました。明日はジーク殿に代わります」
エイデンとイメルダは手をつないで、組合を出ていった。
「さあ、私は今日は宿屋に泊まるけど、リサはどうするの?」
「そうね、道場に一度帰りたいところだけど、私も宿屋に泊まるかな。ねえ、一緒に泊まらない?」
「もちろんいいわよ」
***
「私たち、まさか仲良しになるなんて思いもしなかったわ」
「お互い十八で同い年でしょう。私は剣の道、あなたは魔法の道でブラックイーグルに入るまではあまり交わりはなかったけど、あなたの名前はよく聞いたわ」
「私もよ、疾風のリサって、同い年で凄いのがいるってね」
「魅了のアンジェラもね」
「マモルは二つ上でしょ? 同じ道場だったんでしょう?」
「ええ。マモルはある日、隣の家に引っ越して来たお隣さんだったの。子供の頃はすごく仲が良かったんだけど、マモルは剣術が嫌いでね。誰よりも才能があって、父もすごく期待していたのだけど、歌や踊りしかしなくなって、父から破門されたのよ」
「そうだったのね」
「私もマモルの才能が羨ましかったから、剣を捨てたマモルをすごく罵ったわ。でも、彼は寂しく笑うだけで。それから私は剣の道に生きることにしたの」
「疾風のリサの転機ね」
「そうね。父が残念そうだったから、私がって思ったのよ。マモルはその後、引っ越してしまったんだけど、何度かマモルを学校の前で待ち伏せして、竹刀で打ちのめしたわ。本当はマモルに褒めて欲しかったの。でも、彼は優しく微笑むだけだったわ。褒めてくれないのよ」
「それすごい有名よ。リサが虐めている美青年がいるって。あなたすごく人気あったから、マモルは結構他の男子たちにも虐められるようになったのよ。あの優しさだから、相手も図に乗ちゃってね」
「それ知っていたわ。いい気味だと思ってたの。私が真剣に取り組んでいる剣の道を軽んじるからだって。それに、マモルが本気出したら、誰も喧嘩で彼に勝てないから、大怪我にはならないと思ってたわ。逃げ足も早いしね。お母様が悲しまれることはしないはずだから」
「マモルって強いの?」
「喧嘩する気になればね。一度だけマモルが怒ったのを見たことがあるの。まだ道場にいたとき、父の娘ってことで、兄弟子たちが悪ふざけで私を稽古で虐めたことがあったの。そのとき、いつもは素振りしかしないマモルが、兄弟子たちに掛かり稽古を挑んで、相手が泣いて謝るまでコテンパンに痛めつけていたわ。まるでジークね」
「そうね、ジークは手加減しないわよね。私の頚動脈は手加減してくれたけど。ねえ、認めてもらいたかったのは、お父さん? それともマモル?」
「両方かな? でも、今でも父は、マモル君はどうしたって、聞くのよ。結婚しますって言ったら、すごく驚くと思うよ」
「ゴンゾウさんね」
「ふふ、そう。その後もマモルに会いに行っては、蹴飛ばしたり、ビンタしたり、とにかくちょっかい出しまくったわ。冒険者になる時の手続きやら引っ越しやら、全部やらせたわ。頼めば何でもやるのよ。ただ犬になれって言ったら、微笑むだけだったけど」
「ああ、その頃から私もマモルを見かけるようになったわ。リサの奴隷がいるってね。初めて見たとき、思った以上に可愛い顔していてびっくりしたわよ。マモルはサド女から注目の的だったわよ」
「あなたはサド女?」
「そうね。マモルにはそうだったかな。とにかくマモルには腹が立ってさ。私たち兄妹の生き様を否定される気持ちになったからね。精神魔法を人に放ったのはマモルだけよ」
「アン、今度はあなたの話を聞かせてくれる?」
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