私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ

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好きになった方が負け

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「シ、シーファ!」

 父が今にも噛み付いて来そうな雰囲気だが、全く怖くなくなってきた。

「グロリア卿、許可して頂き感謝する。ここからは私とシーファ殿の二人にして頂きたい」

 ブランの頼みにも関わらず、父はすぐには動かなかった。

「あなた、二人にしてあげましょう。今度はシーファは逃げたりしませんわよ」

 母が父に退室を促した。

「う、うむ」

 父は渋々了解し、兄も一緒に退室して行った。

 部屋は私たち二人になった。

「シーファ様、突然の申し入れですいません。グロリア卿にあなたが幽閉されそうな雰囲気でしたので、つい……」

「ブラン、あなたはついプロポーズしてしまう人なの?」

「申し訳ございません。しかし、私はシーファ様をずっとお慕い申しておりまして、近いうちに婚約の申し入れをするつもりでおりました」

「お会いしたのは三日前でしてよ」

「シーファ様、どういう訳でそのようなお姿におなりになられたのか分かりませんが、私は五歳のときにあなた様の肖像画を父の書斎で拝見して以来、ずっとあなたに恋焦がれて来ました。三日前ではなく、十三年前です」

「あなたは私が王妃だというの?」

「はい。最初は半信半疑でしたが、昨夜、お食事をご一緒して、確信致しました。私は何度か王妃様に直接お会いしているのです」

 王室と皇室は、かつては互いに交流があったが、私が皇帝を袖にして、王に嫁いだことで、犬猿の仲になってしまった。

 とはいえ、他国の王族の冠婚葬祭などで、何度か接触はあったが、帝国の皇子が参列した記憶がなかった。

「そうだったかしら?」

「やはり王妃様なのですねっ!?」

 しまった。まんまとやられたわ。もう白状しちゃうわよ。

「ええ、そうよ。不思議な体験をして十六歳の外見になってしまったけど、中身は四十歳のおばさんよ。あなたは皇帝になるのでしょう? もっと相応しい方がいらっしゃるわ」

「いいえ、私にはあなたしかいません。私は皇帝になったら、王国を攻めて、あなたを奪うつもりだったのですよ。あなたの訃報を聞いて、私がどんなに絶望したか……」

「あなた、極端な人ね。一体私のどこが気に入ったの?」

「すべてです。私はフローラ教の少年少女聖歌隊でしたから、よく大聖堂であなたの前で合唱したのです。一度、頭を撫でて頂いたこともあるのですよ。あなたは優しく穏やかで、お淑やかで、女性らしさの塊でした」

 私は月に一度、大聖堂のミサに参加していた。

 フローラ教の本山は帝国にあり、月例のミサには本山から合唱団が派遣されていたが、そのメンバーだったのか。

「でも、今の私はあの頃とはちょっと違うと思うわよ」

「はい。でも、あなたはあなたです。私はあなたがどう変化しても、あなたが好きなのです」

 何なの、この私好きはっ。

「困った人ね」

「シーファ様、私はこの先何年でも待てる自信があります。でも、あなたさえよろしければ、私はあなたと一緒の人生をすぐにでもスタートしたい。私の願いがあなたの願いと同じであれば、このうえなく嬉しいです」

「ブラン、私はあなたに三日前に会ったの。あなたには十三年前でも、私には三日前なのよ。分かる? あなたの基準だけで物事を考えないで欲しいの」

「……すいません。軽率でした」

「いいのよ。誠意は十分に感じたから。私はライザーと大恋愛して結婚したけど、仲のよかったのは最初の十五年よ。残りの十年は、なんていうのかしら。ただ無意味に人生を過ごしてしまったわ。もう一度やり直す機会を得たけど、あんな人生はまっぴらごめんなのよ」

「……」

「ブラン、あなたの本当の名前はなんていうの?」

「ブランデルです」

「捻りがないわね」

「シーファンとそう変わらないと思うのですが……」

「あら? 可愛くないことを言うのね」

「すいません」

「こうしましょう。婚約者にはなります。お父様が怒りで憤死しちゃいそうだから。でも、結婚するかどうかはあなたをもっと知ってから決めさせてくれる?」

「はい、もちろん大丈夫です。すごく嬉しいです」

「喜ぶのはまだ早いわよ。私は一度結婚を失敗しているから、採点は厳しいわよ。やり直しの人生は、男なしでもいいかと思っているぐらいなの。あなたを好きになったら幸せだと私も頭では分かるから、私にあなたを好きにさせて頂戴」

「はい、頑張ります」

「一年後に採点します。結婚か、婚約破棄か、もう一年延期か、そのときに決めましょう」

「分かりました。それで、シーファ様はこの一年間どうされますか?」

「ユリカ姫とライザーを簀巻きにして、海に放り投げてやろうと思っているの。軍資金はあるわよ。王妃の宝石をそっくり持って来たから。そういえば、私の荷物、どうしたのかしら?」

「あのセバスチャンという執事が持って行きました」

「まずいわ。すぐに確認しないと」
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