私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ

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意外な展開

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「シーファとやら、わしに娘なぞおらぬぞ」

 シミュレーション通りだ。

 私が謝ろうと口を開こうとしたとき、ブランが私と父の間に入って来た。

 私が唖然としていると、ブランが父に話をし始めた。

「グロリア卿、シーファ殿がそなたの娘でないとしたら、私は誰に婚約を申し込めばよいのかな?」

 やはり、ブランは皇室関係者なのだろう。皇子か何かのように思う。

 え? 婚約って!?

 私はブランをまじまじと見た。

 ブランは涼しい顔をして、父を見ている。

 父がブランを見て、驚きの表情を見せた。

 滅多に感情を顔に出さない父にしては珍しいと思った。

「こ、皇太子殿下……! 何故このような場所に!?」

 えっ? 皇太子!?

「婚約の申込に来たのだが、どうすればよい?」

「セバスチャン! 殿下のお荷物をお持ちしなさいっ。シーファ! お前はもっと気遣えぬのかっ!」

「グロリア卿、いくら娘とはいえ、皇太子妃となるシーファ殿に無礼だぞ。もちろん、グロリア家の許しが必要だし、何よりシーファ殿のお返事をいただくのが先だが。あ、いや、娘ではなかったか」

「と、とんだご無礼を致しました。シーファは我が娘にございます。まずは応接室にいらして頂けますでしょうか」

 私はこんなに恐縮する父を見るのは初めてだった。

 騒ぎを聞きつけ、母と兄もホールに集まって来た。

 母も兄も最初に私を見て驚き、次にブランを見て驚いていた。

「殿下、シーファに着替えさせますので、しばらくこちらでお待ちください」

 応接室に案内されたブランは頷いて、私を見てにっこりと微笑み、軽くウィンクした。

 私は目まぐるしく変わる状況についていけなくて、父に言われるがまま、二階の自室に向かった。

 母が私に付き添ってくれている。

「ねえ、あなたシーファの娘?」

 階段を上りながら母が小声で聞いて来た。

 母は冷静だ。シーファがこんなに若いはずがない。

「お母様、実はシーファなんです。若返ってしまいました」

 母は疑いの目で私を見ている。

「……何が目的なの!?」

 すぐには信じてくれないだろう。当たり前だ。

 私は小さい頃からここを出るまでの覚えている話を出来る限り挙げてみた。

 そういった話以上に、私の表情や仕草やアクセントや言葉遣いが、私がシーファ本人であることを如実に物語ってくれる。

 母の目から涙がこぼれた。

「こ、この子は、どれだけ心配したと思ってるの!?」

「ごめんなさい、お母様……」

 しばらく母は泣いていたが、クスッと笑って、悪い顔をして私を見た。

「あなた、王国の王太子の次は、帝国の皇太子なの? とんだ皇太子キラーね。さあ、部屋はあなたが出て行ったときのままよ。ドレスもきちんと管理しているけど、少しデザインが古いかしら」

 母はクローゼットを開け、楽しそうにドレス選びを始めた。

 私は懐かしいドレスを見ながら、これからのことを考えた。

 ブランだけシミュレーション出来ない理由はいまだに謎だが、出来ないのだから仕方がない。

 ライザーに手酷く裏切られているため、私は男性を信頼出来なくなってしまっている。

 ブランは大丈夫なのだろうか。

 ブランに好意を抱いているものの、ニーナから聞いた絵を見て一目惚れというのが、非常に気になる。

 会ってまだ三日でプロポーズというのも、容姿に惹かれただけとしか思えない。

 私の容姿に惹かれたのであれば、容姿は永遠ではないのだから、いつかは捨てられてしまうのではないか。

 ええい、うじうじ考えるのはよそう。

 そもそも、捨てられるとか、相手に依存しすぎだ。

 外面ばかり見て、中身を見ない碌でなしは、股間を蹴り上げて、こちらからおさらばしてやろう。

 十八の若造にビビってどうする。

 さあ、行くわよ、私!

 母に連れられて、待合室に入ると、左奥のソファにブラン、その前に父、父の左に兄がすわっていた。

 私はブランの右で兄の前、母は兄の左に座った。

 兄がじろじろ私の顔を見ているので、わっと驚かせてやったら、ソファからずり落ちそうになっている。

 ブランは笑いを堪えているが、父は不機嫌そうだ。

 お兄様、髪がずいぶん薄くなったわね。

「シーファ様、とてもよくお似合いです」

 ブランがドレスを褒めてくれた。彼の目が私のことを大好きだと言っている。

 自信を持って行こう。

「ありがとう」

「こ、これ、シーファ、言葉遣いに気をつけなさい」

 父が狼狽えている。

 あんなに怖かった父がとても小さく見える。

「そう言われましても、今までこの調子でございましたのよ。地位を聞いて態度を変えるなんて、却って失礼ですわ。ブランとはありのままの二人で行きましょう、と昨晩お食事した際に決めましたのよ」

 父の顔が真っ青だ。そんなに皇族が怖いのかしら。

「殿下、躾が行き届いておらず、申し訳ございません」

「グロリア卿、改めてお願いしたい。どうか私がシーファ殿に婚約を申し入れることを許可して頂きたい」

「もちろんですとも。シーファも喜んでお受けします」

「あら、お父様、私、まだ考え中でございましてよ」
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