私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ

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父との対面

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 いよいよ父との対面だ。

 非常に厳格な父だったが、孫には甘いと期待したい。

 私には仲のいい兄弟がいたが、まだどちらにも当主の座を受け渡していないようだ。

 帝都が近づいて来たので、ニーナに瞑想を始めると告げ、目を閉じた。

 ダメだ。どういう訳か父は、こんなに若い私を娘だと見抜いてしまうのだ。

 父の頭の中では、私の成長が二十五年前のまま止まってしまっているのだろうか。

 しかも、老けてはいたが、目の輝きがまるで衰えていない。

「どうなっているのよ!」

「シーファ様、どうされました?」

 しまった。ニーナがいるんだった。

「おほほほ、瞑想するつもりが、うっかり寝てしまって、夢まで見てしまったわ」

「は、はあ」

 参った。父はとりつく島もない。

 母は昔から父の言いなりだ。

 兄は私の容姿を見て非常に驚いて、何とか父にとりなそうとしてくれたが、父ががんとして受け付けなかった。

 仕方ない。あまり迷惑をかけたくはなかったが、弟夫婦のところに行ってみよう。

 ダメだ。何て性格の悪い嫁を娶っているのよ、あの子は。しかも、完全に尻に敷かれちゃっている。

 あの嫁がいる限り無理ね。

 そうか、どうせバレるなら、最初から娘だと白状して、私が間違っていたと素直に謝ろう。

 実際に間違っていたのだし。

 うーん、微妙な結果になってしまった。家には入れてはくれたが、あれでは監禁だ。

 要するに父は私を全く信用していないということだ。

 でも、路頭に迷うよりはマシか。

 兄がいるから、いろいろ助けてくれるだろうし、我慢できなくなったら、また脱出すればいい。

 ニーナの前で呼吸が乱れると、変な想像をされてしまうため、呼吸が乱れないよう休み休みシミュレーションしていたので、かれこれ一時間ぐらい瞑想してしまった。

 私は目を開いた。

「ニーナ、あなた連絡係よね。帝都でフレグランスに連絡を取るにはどうすればいいの?」

 ニーナは突然話しかけられてビクッとした。

 忍者のくせに可愛いわね……。

「は、はい。いくつかありますが、帝都にも冒険者組合がございますので、そちらにご連絡いただければ、私または私どもの組織のものが対応します」

「冒険者組合まで行けない場合は?」

「どのような状況なのでしょうか?」

「グロリアの当主は偏屈で頑固なの。女は家の中で大人しくしているものだと思っていて、なかなか外出出来ないのよ」

「そうなのですか。使用人に代理させても構いません。冒険者組合に行きにくい場合は、帝都の雑貨店やレストランに組織のメンバーがおりますので、そちらにご連絡下さい。もう一つは魔法の念波ですが、シーファ様は魔法はお出来になりますか?」

「無理ね……」

「全くダメなのでしょうか?」

「ええ、昔、魔法使いに診てもらったことがあるのだけれど、全くダメだそうよ」

 ベンジャミンの困っていた目を思い出した。

 そうだ、やはりガガはベンジャミンの娘だ。

 困ったときの目がそっくりだ。

「分かりました。後でお店のリストをお渡しします」

「よろしくね」

 しばらくして、馬車がグロリア邸の門の前に到着したようだ。

 いよいよだ。

「シーファ様、短い間でしたが、ご一緒できて楽しかったです。お元気でお暮らし下さい」

 そう言って頭を下げたニーナを私は思いっきり抱きしめた。

「ニーナ、ありがとう。あなたたちは私の命の恩人よ」

 私は馬車を降りて、フレグランスの面々と一人ずつハグをして、お礼を述べた。

 レイモアに後金の宝石を渡そうとすると辞退された。

 前金で渡した宝石だけでお釣りが出るほどだという。

 私は感謝の気持ちとしてどうしても何かを渡したかったのだが、次に王国に行くときに頂きますと言われて、無理に渡すのはやめにした。

 そして、最後にブランと向き合った。

「ブラン……」

「シーファ様、玄関までお送り致します」

 ブランはそう言って、私の荷物を両手で持ってしまった。

 フレグランスの面々は私たちを暖かい目で見守っている。

 断るのも何だか無粋に感じられたので、私はブランに最後のエスコートをお願いすることにした。

「じゃあ、遠慮なくお願いするわ」

 ニーナが呼び鈴を鳴らすと、玄関のドアが開き、執事のセバスチャンが現れた。

 背筋を伸ばし、キビキビとした足取りで、門まで歩いて来た。

 そこで初めて私の顔を見て、顎が外れたかと思うほど驚いている。

「シ、シーファ様?」

「ええ、セバスチャン、帰って来たわよ。お父様をお呼びして」

「し、しかし、その、まるでお変わりがない……」

「いつまで門の外で私を待たせるつもり?」

「し、失礼しました。どうぞ、お入りください」

 私はもう一度、フレグランスの皆に一礼し、玄関に向かった。

 ブランは私の後に続いた。

 セバスチャンが屋敷に駆け込んで父を呼んでいる。

 私は懐かしの我が家の玄関ホールに入った。

 ブランにお別れしようとしたのだが、何故かブランはまだ帰ろうとしない。

 どうしようかと思っていたところに、セバスチャンが父を連れて戻って来た。
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