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第一章 イグアスのダンジョン

冒険者への過剰防衛

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あの娘、まさかこの水中で目が見えるのか?

久しぶりに体を洗えるチャンスだと思って、念入りに洗っていたのだが、視線を感じた。

まさかと思って、娘の方を見ると、慌てて目を閉じたが、目を閉じる前に確かに俺のことを凝視していた。

水中眼鏡の魔法を使っているようには見えない。まあいい。あんな小娘に見られても、今更どうってことはない。

さて、もうそろそろ溺死する頃かな。

先ほどまでもがいていた冒険者たちが、動かなくなって床に沈んでいる。

もう30分は経過しているので、死んだとみていいだろう。

俺はクリエイトウォータの魔法の発動を停止した。

部屋の隅間から水が流れ出していき、ゆっくりではあるが、徐々に水位が下がってきた。

水面が胸の高さまで来たあたりで、まだ目をつぶっている娘に声をかけた。

「おい、もうしばらくこっちを見るな。俺は何も着ていないんだ。ちょっと冒険者の服を失敬してくるから、そのまま待っていてくれ」

そう言って、体格が似ている冒険者の服をはがした。

流石にこいつの下着をつける気にはならなかったため、上着とズボンだけ身に着けた。

何だか自分が若いころの冒険者になったみたいで懐かしかった。

「おい、もう目を開けていいぞ。ちょっと手伝ってくれ」

娘がおどおどした感じで近づいてくる。よく見ると、まだ幼い。15,6歳か? ずいぶんと痩せているな。

こんな娘を襲うなんて、こいつらは死んで当然だな。殺すことまではなかったかな、と思っていたが、少しだけあった良心の呵責がきれいさっぱりなくなった。

「金目のものを取りだして、こいつらをこの部屋から外に出すぞ」

娘が恐る恐るたずねてくる。

「この人たち、死んでいるんでしょうか?」

「仮死状態のやつもいるかもしれないが、いずれ死ぬ。早くやれ」

2人で黙々と金目のものをポケットなどから取り出した。どうやら、彼女の持ち物も含まれていたようだ。こいつら、本当に人でなしだな。

「よし、部屋の外に出すぞ。扉を開けてくれ」

娘にドアを開けてもらい、1人1人の腕を掴んで、ずるずるとセーフティゾーンの外まで引きずり出していく。5人全員を引きだし終えるころには、俺は汗だくだった。こいつら、さすがに鍛えていたようで、かなり重かったのだ。でも、これで攻撃魔法が使える。

「魔力を借りるぞ」

俺は重力魔法を使い、5人を反重力で通路の突き当りまで飛ばした。あとは魔物が片付けてくれるだろう。

セーフティゾーンに戻ると、娘が床にぺたりとしゃがみこんでいた。

「どうした。気が抜けたのか?」

近づいて行くと、娘は下を向いて、どうやら泣いてしまっているようだ。

「怖かったか。もう大丈夫だ。安心していい」

娘はなかなか泣き止まないが、こういうときは放っておくのがいい。

しばらくそのまま見守っていると、ようやく泣き止んだようだ。

娘が顔を上げて、泣きはらした目で俺の方を見た。

「助けてくれてありがとうございます。私はルシアといいます。おじさんは?」
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