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第一章 イグアスのダンジョン
遭難調査 カトリーヌ視点
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ルシアに助けられた「月の光」は地下58階を2人組の男女が踏破し、地下59階に降りて行ったと冒険者組合に報告した。
ところが1カ月経ってもダンジョンから出て来る気配がないため、地上でもう一度きちんとしたお礼をルシアたちにしたいと考えていた「月の光」は、自らが捜索隊となって、安否確認をすることにした。
捜索には冒険者組合も参加した。新フロアのセーフティゾーンへの食糧配給システムを構築するため、組合の専属パーティ8名を第一弾として送り出すことにしたのだ。
また、前回「月の光」は魔力不足になったため、今回は魔力売り4人と契約した。
男女合計24名+4人の魔力売りのパーティが地下59階に到着し、マッピングなどの記録を開始した。
「隊長、ルシアたちの足取りはここで消えています」
「月の光」の部下の1人が隊長のカトリーヌに報告した。
炎系の攻撃で魔物を消滅させたと思われる形跡が床にいくつか残っていた。
その後は全くなくなってしまっている。
(ここでやられたのだろうか? であれば遺品や遺体は?)
カトリーヌは腑に落ちなかった。このフロアはこれまでアンデッドの魔物しか出てこない。アンデッドが人間の遺体を痕跡なく持ち去るなんてことはできないはずだ。あるいは、アンデッド化したのだろうか。
その後も、捜索は続けられたが、これといった手掛かりはなかった。このフロアのアンデッドはかなり強く、24名パーティでもフロアボスの横のセーフティゾーンに入るまでに1日以上かかった。
だが、セーフティゾーンで「月の光」はルシアと思われる女性の毛髪を発見した。念のため、セーフティゾーンに入る前に、ゾーン内に何か痕跡がないかどうかを確認したのだ。
ルシアと一緒にいた男の方は身元不明だが、冒険者組合の解体所に現れた男の人相と一致しているため、ルシアを雇った5人組のうちの1人と考えられていた。
だが、カトリーヌはあの男の涼しげな眼を以前どこかで見たように思うのだ。ここに来るまでの炎系の痕跡を見る限り、凄腕の魔法使いとみて間違いない。
男はルシアを非常に大切にしている感じで、ルシアもあの男のことを信頼しているようだった。なんかこうお似合いのカップルだった。
ルシアの元パーティの女たちによると、ルシアは以前に増して輝くように美しかったという。カトリーヌは1か月前が初対面だったが、こちらが気後れしてしまうほど美しい女性だった。ちょっと気の強い感じのする印象だったが、カトリーヌたちに惜しげもなく魔力を与えてくれた寛大で優しい人だった。
「よし、フロアボスの正体を確認するぞ。目的は正体の確認だけだ。すぐに離脱する。いいなっ」
カトリーヌは逃げ足の速いメンバー5人を選出して、カトリーヌを含めて6人でボス部屋に突入した。
(なんだ、あれは?)
カトリーヌが初めて見る魔物だった。ものすごい威圧感で、百戦錬磨のカトリーヌをもってしても、足がすくむほどだった。
ただし、逃げるのは簡単だった。あっけなく逃げることができた。
セーフティゾーンで他のメンバーに魔物の特徴を話したところ、博識のメンバーが
「恐らくですが、ゴーストドラゴンだと思います」
と教えてくれた。
「ゴーストドラゴンとはどんな魔物だ?」
「伝説級の化け物です。以前、勇者チームが魔王城で対戦した記録が残っています。聖女がホーリーライトで葬っていますが、魔王戦よりも長く、1日近く戦闘が続いたそうです。ちなみにホーリーライト以外、魔法は一切効かなかったそうです」
(勇者チームで思い出した! あの男はライルさんだ!)
カトリーヌは10年ほど前、駆け出しの冒険者だったころ、ライルもイグアスで冒険者をやっていて、何度か彼の魔法を見たことがあった。流れるように何種類もの魔法を使い、容姿も整っていたため、当時のイグアスでは女性冒険者たちに大人気だった。カトリーヌも密かに憧れていた。
ライルが聖女と戦士を殺してしまう大失敗を犯し、勇者パーティを追放になってしまったと聞いたときには、カトリーヌはライルの境遇に心を痛めた。ライルがイグアスに戻ってきたときにはすっかり憔悴しきっていて、イグアスでも心無い人たちからバッシングを受け、その後、消息不明になっていた。
(そうか、ダンジョンにいたのか)
「隊長、どうされました?」
「ああ、すまん。考え事をしていた。ホーリーライトか。神官系魔法の最奥義と聞いているが、お前たち、使えるか?」
カトリーヌは神官2人の方を見た。1人の方が答えた。
「滅相もないです。ホーリーライトは聖女様しか使えません。聖女様はあの事件以来空席ですので、この世でゴーストドラゴンを倒せる人はいないと思います」
(ライルさんであれば、ゴーストドラゴンであることは分かったはずだ。逃げ出すのは簡単だったはずだが、一体何があったんだ? いずれにしろ、ライルさんはそっとしておいてほしいはずだ)
カトリーヌは決心した。ライルは死んだことにしておこう。
「状況から考えて、ルシアとライルはゴーストドラゴンに殺されたとみるしかないだろう」
「え? ライル? あっ、あの男の人の方はライルさんなんですか? 確かにあの涼しげな眼はライルさん!」
実は「月の光」のベテランにはライルファンが多かった。
こうして、ルシアとライルは死亡したと冒険者組合に報告された。
ところが1カ月経ってもダンジョンから出て来る気配がないため、地上でもう一度きちんとしたお礼をルシアたちにしたいと考えていた「月の光」は、自らが捜索隊となって、安否確認をすることにした。
捜索には冒険者組合も参加した。新フロアのセーフティゾーンへの食糧配給システムを構築するため、組合の専属パーティ8名を第一弾として送り出すことにしたのだ。
また、前回「月の光」は魔力不足になったため、今回は魔力売り4人と契約した。
男女合計24名+4人の魔力売りのパーティが地下59階に到着し、マッピングなどの記録を開始した。
「隊長、ルシアたちの足取りはここで消えています」
「月の光」の部下の1人が隊長のカトリーヌに報告した。
炎系の攻撃で魔物を消滅させたと思われる形跡が床にいくつか残っていた。
その後は全くなくなってしまっている。
(ここでやられたのだろうか? であれば遺品や遺体は?)
カトリーヌは腑に落ちなかった。このフロアはこれまでアンデッドの魔物しか出てこない。アンデッドが人間の遺体を痕跡なく持ち去るなんてことはできないはずだ。あるいは、アンデッド化したのだろうか。
その後も、捜索は続けられたが、これといった手掛かりはなかった。このフロアのアンデッドはかなり強く、24名パーティでもフロアボスの横のセーフティゾーンに入るまでに1日以上かかった。
だが、セーフティゾーンで「月の光」はルシアと思われる女性の毛髪を発見した。念のため、セーフティゾーンに入る前に、ゾーン内に何か痕跡がないかどうかを確認したのだ。
ルシアと一緒にいた男の方は身元不明だが、冒険者組合の解体所に現れた男の人相と一致しているため、ルシアを雇った5人組のうちの1人と考えられていた。
だが、カトリーヌはあの男の涼しげな眼を以前どこかで見たように思うのだ。ここに来るまでの炎系の痕跡を見る限り、凄腕の魔法使いとみて間違いない。
男はルシアを非常に大切にしている感じで、ルシアもあの男のことを信頼しているようだった。なんかこうお似合いのカップルだった。
ルシアの元パーティの女たちによると、ルシアは以前に増して輝くように美しかったという。カトリーヌは1か月前が初対面だったが、こちらが気後れしてしまうほど美しい女性だった。ちょっと気の強い感じのする印象だったが、カトリーヌたちに惜しげもなく魔力を与えてくれた寛大で優しい人だった。
「よし、フロアボスの正体を確認するぞ。目的は正体の確認だけだ。すぐに離脱する。いいなっ」
カトリーヌは逃げ足の速いメンバー5人を選出して、カトリーヌを含めて6人でボス部屋に突入した。
(なんだ、あれは?)
カトリーヌが初めて見る魔物だった。ものすごい威圧感で、百戦錬磨のカトリーヌをもってしても、足がすくむほどだった。
ただし、逃げるのは簡単だった。あっけなく逃げることができた。
セーフティゾーンで他のメンバーに魔物の特徴を話したところ、博識のメンバーが
「恐らくですが、ゴーストドラゴンだと思います」
と教えてくれた。
「ゴーストドラゴンとはどんな魔物だ?」
「伝説級の化け物です。以前、勇者チームが魔王城で対戦した記録が残っています。聖女がホーリーライトで葬っていますが、魔王戦よりも長く、1日近く戦闘が続いたそうです。ちなみにホーリーライト以外、魔法は一切効かなかったそうです」
(勇者チームで思い出した! あの男はライルさんだ!)
カトリーヌは10年ほど前、駆け出しの冒険者だったころ、ライルもイグアスで冒険者をやっていて、何度か彼の魔法を見たことがあった。流れるように何種類もの魔法を使い、容姿も整っていたため、当時のイグアスでは女性冒険者たちに大人気だった。カトリーヌも密かに憧れていた。
ライルが聖女と戦士を殺してしまう大失敗を犯し、勇者パーティを追放になってしまったと聞いたときには、カトリーヌはライルの境遇に心を痛めた。ライルがイグアスに戻ってきたときにはすっかり憔悴しきっていて、イグアスでも心無い人たちからバッシングを受け、その後、消息不明になっていた。
(そうか、ダンジョンにいたのか)
「隊長、どうされました?」
「ああ、すまん。考え事をしていた。ホーリーライトか。神官系魔法の最奥義と聞いているが、お前たち、使えるか?」
カトリーヌは神官2人の方を見た。1人の方が答えた。
「滅相もないです。ホーリーライトは聖女様しか使えません。聖女様はあの事件以来空席ですので、この世でゴーストドラゴンを倒せる人はいないと思います」
(ライルさんであれば、ゴーストドラゴンであることは分かったはずだ。逃げ出すのは簡単だったはずだが、一体何があったんだ? いずれにしろ、ライルさんはそっとしておいてほしいはずだ)
カトリーヌは決心した。ライルは死んだことにしておこう。
「状況から考えて、ルシアとライルはゴーストドラゴンに殺されたとみるしかないだろう」
「え? ライル? あっ、あの男の人の方はライルさんなんですか? 確かにあの涼しげな眼はライルさん!」
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こうして、ルシアとライルは死亡したと冒険者組合に報告された。
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