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第五章 王室
女神の使徒
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「なんかあっさり行っちゃったわね」
シルビアがキョウコに話しかけた。
「いえ、まだ油断できないです。ルミさんからの情報によると、私たちは王太后の手のものに監視されているとのことです」
「えっ? そうなの?」
「ええ、ルミさんからはバレバレだそうです」
「あなたたち、便利ね。後宮になくてはならないわね」
「王太后も同じように私を便利だと思うはずです」
「なるほどね」
「ですので、絶対に勝ち目がないと心を折る必要があるのです」
「そうなの?」
「ええ、でも、まずはロゼッサ妃を善良にしてしまいましょう」
「ええ、楽しみね。ここを右に回ったところよ」
***
ロゼッサはシルビアの訪問の目的が分からなかった。シルビアも以前は狡猾で、計算高く、後宮で生きていくための資質を兼ね備えていたかに見えたが、突然牙を抜かれて、羊のように柔和になってしまった。
皮肉なことに、戦力として期待できていたころは、ジョージから敬遠されていたが、駒として役に立たない羊になったとたん、ジョージが彼女を愛するようになった。今では王宮でも有名なおしどり夫婦だ。
ここ数カ月は文も交していないが、なぜ突然面会を求めてきたのであろうか。
ひょっとすると懐妊か? そうであれば喜ばしいのだが。
「シルビア様がお見えになりました」
「通せ」
シルビアがお付きの侍女と一緒に入ってきた。
(ん? いつもの侍女とは違うようだが?)
「お義母様、お目通りいただきありがとうございます」
「シルビア、久しぶりね。今日は何用? いつもと侍女が違うみたいだけけど」
侍女が面を上げた。
(何? 金色の目?)
そうロゼッサが思った瞬間、清涼な風が心を洗うような、そんな感触が心にしみわたっていくのを感じた。
(え? 女神様?)
ロゼッタの頭にそう浮かんだ。
侍女がロゼッサに近づいて行く。目は金色のままだが、非常に整った顔立ちの銀髪の美女だ。
ロゼッサは当たり前のように侍女に首を垂れた。
寝殿の侍女たちが驚いて騒ぎ始めた。
しかし、金色の目を見ると、警戒や敵意が薄れていき、いつしか、侍女全員が跪いて、首を垂れていた。
シルビアは自分がリンリンと対面したときのことを想い出していた。あの時と同じことが、ここでも起きている。
キョウコはそっと手をロゼッサの頭にのせ、邪気の吸収を始めたが、次から次へと邪気が溢れてくる。1分ほどしてから、ようやくふーと息を付いた。
(いや、このおばさま、どんだけ腹黒いのよ。もう少しで魔力が尽きてしまうところだったわ)
「シルビア、あなたが何のために来たのか分かったわ。ごめんなさい、私、自分のことしか考えてなかったのね」
「お義母様、国のため、民のためにジョージを王の後継者にしましょう。決して私心のためでなく」
「わかったわ、また邪な気持ちが出ないよう神に誓うわ。女神様、ありがとうございました」
「シルビアさん、今日はここまでよ。いったん帰るわね」
「キョウコ、どこに帰るの? あっ」
キョウコは倒れてしまった。
どこにいたのか、すぐにルミが現れ、
「また明日来る」
と言い残して、キョウコを連れて去って行った。
シルビアがキョウコに話しかけた。
「いえ、まだ油断できないです。ルミさんからの情報によると、私たちは王太后の手のものに監視されているとのことです」
「えっ? そうなの?」
「ええ、ルミさんからはバレバレだそうです」
「あなたたち、便利ね。後宮になくてはならないわね」
「王太后も同じように私を便利だと思うはずです」
「なるほどね」
「ですので、絶対に勝ち目がないと心を折る必要があるのです」
「そうなの?」
「ええ、でも、まずはロゼッサ妃を善良にしてしまいましょう」
「ええ、楽しみね。ここを右に回ったところよ」
***
ロゼッサはシルビアの訪問の目的が分からなかった。シルビアも以前は狡猾で、計算高く、後宮で生きていくための資質を兼ね備えていたかに見えたが、突然牙を抜かれて、羊のように柔和になってしまった。
皮肉なことに、戦力として期待できていたころは、ジョージから敬遠されていたが、駒として役に立たない羊になったとたん、ジョージが彼女を愛するようになった。今では王宮でも有名なおしどり夫婦だ。
ここ数カ月は文も交していないが、なぜ突然面会を求めてきたのであろうか。
ひょっとすると懐妊か? そうであれば喜ばしいのだが。
「シルビア様がお見えになりました」
「通せ」
シルビアがお付きの侍女と一緒に入ってきた。
(ん? いつもの侍女とは違うようだが?)
「お義母様、お目通りいただきありがとうございます」
「シルビア、久しぶりね。今日は何用? いつもと侍女が違うみたいだけけど」
侍女が面を上げた。
(何? 金色の目?)
そうロゼッサが思った瞬間、清涼な風が心を洗うような、そんな感触が心にしみわたっていくのを感じた。
(え? 女神様?)
ロゼッタの頭にそう浮かんだ。
侍女がロゼッサに近づいて行く。目は金色のままだが、非常に整った顔立ちの銀髪の美女だ。
ロゼッサは当たり前のように侍女に首を垂れた。
寝殿の侍女たちが驚いて騒ぎ始めた。
しかし、金色の目を見ると、警戒や敵意が薄れていき、いつしか、侍女全員が跪いて、首を垂れていた。
シルビアは自分がリンリンと対面したときのことを想い出していた。あの時と同じことが、ここでも起きている。
キョウコはそっと手をロゼッサの頭にのせ、邪気の吸収を始めたが、次から次へと邪気が溢れてくる。1分ほどしてから、ようやくふーと息を付いた。
(いや、このおばさま、どんだけ腹黒いのよ。もう少しで魔力が尽きてしまうところだったわ)
「シルビア、あなたが何のために来たのか分かったわ。ごめんなさい、私、自分のことしか考えてなかったのね」
「お義母様、国のため、民のためにジョージを王の後継者にしましょう。決して私心のためでなく」
「わかったわ、また邪な気持ちが出ないよう神に誓うわ。女神様、ありがとうございました」
「シルビアさん、今日はここまでよ。いったん帰るわね」
「キョウコ、どこに帰るの? あっ」
キョウコは倒れてしまった。
どこにいたのか、すぐにルミが現れ、
「また明日来る」
と言い残して、キョウコを連れて去って行った。
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