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第五章 王室
王太后との謁見
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キョウコはロゼッサ妃とシルビアとともにキャサリン王太后と謁見していた。
「よく参ったな、3人とも」
王太后から声がかかり、3人は顔を上げた。
そのとき、外に控えていた侍女が
「王様と王妃がいらっしゃいました」
と報告した。
すぐにカイザー王とマリアンヌ王妃が入ってきて、王太后に挨拶をした後、王太后の右側に座した。
キョウコ達3人は王と王妃に挨拶する。
(どうして王と王妃が来るのよっ)
想定外の事態にキョウコは動揺する。風に乗って、キョウコの耳だけに聞こえる声が届いた。ルミの声である。
(キョウコがリンリン様の妻と知って、カトリーヌとの謁見の後、すぐにこちらに来たのよ。フローラからの指示は「予定通り進めて」よ)
「王様、何用ですか?」
王太后が王に訪問の目的を訊ねた。
「母上、そこのキョウコ殿がリンリン殿の妻と聞いて、少しお話をと思いまして、参りました。突然の訪問をお許しください」
「息子の訪問を喜ばぬ母などおりませぬ。で、マリアンヌも同じ目的か?」
「さようでございます。義母上さま」
「ふふふ、キョウコ、そちは人気者じゃの」
王太后がキョウコに声をかける。
「滅相もございません」
王はキョウコの容姿に目を見張った。銀髪の不思議な目の輝きを持つ非常に美しい女だ。カトリーヌの美しさにも目を奪われたが、この女も怖いほど美しい。おっと、マリアンヌに悟られてはいけないな。
「ふふふ、ロゼッサ、つきものが落ちたような顔じゃの。キョウコのお祓いを受けたのか?」
王太后が今度はロゼッサ妃に声をかける。
「はい、王太后様、今までの私を深く反省しております」
王も王妃も、険が取れ、柔和で美しくなったロゼッサ妃の変貌ぶりに目を疑った。
王太后はキョウコの能力の有用性を確信する。すべての敵を懐柔できるとんでもないスキルだ。ぜひとも手ごまとしてほしい。
キョウコは王と王妃を密かに観察した。王妃は驚いたことに非常に清らかな心を持っている。邪心と判断できるものは1つもなかった。王は清らかではないが、私心がない。国のためであればなんでもするといった感じだ。少なくともキョウコを害する心はないようだ。
問題は王太后だ。先ほどから、邪心が急速に膨らみ、キョウコへの害意を発し始めている。
「王太后さま、恐れながら、私への害意を取り除かせていただきます」
キョウコの目が金色に変わる。王太后はキョウコへの興味が急速に薄れていくことを感じるが、強固な意志を持って、国のためにキョウコの力が必要だと強く念じ直す。
王妃はすでにキョウコに対して頭を垂れている。王はキョウコと王太后の対決に目を見張っている。
キョウコと王太后はすでに1分近くにらみ合っている。
王太后はこういった状況になることを見込んでおり、手元の兵士たちにキョウコを拘束するようあらかじめ指示を出していた。
兵士たちが10名ほど入り口に現れた。キョウコは王太后の邪心を取り除くことに集中している。
兵士たちがキョウコを拘束しようと中に足を踏み入れようとした瞬間、どこから現れたのか、キョウコの背後に別の女性が立っていた。
薄い茶色の目と髪の透き通るような肌の美少女だ。恐らく彼女もリンリンの妻だろうと王は予想した。
彼女が両手を前に出した。すると中に入ろうとした兵士10人が猛烈な勢いで、後ろから引っ張られたかのように弾き飛ばされる。
兵士たちは数十メートルは吹き飛ばされ、ぐったりとしてしまった。
「おばさん、私たちを取り込めるなんて思わないことね」
ルミはその薄い色の目で王太后を睨む。
王太后はキョウコとの精神戦の真っ最中で、ルミの無礼を追求する余裕はない。王もカトリーヌと同等の力を持つと感じさせるルミに手を出すことは控えていた。
キョウコは焦っていた。もうすぐ魔力が尽きてしまう。王太后の邪心は次から次へとあふれてくる。
そのとき、キョウコの魔力がどんどんと回復していくのを感じた。ルミが秘術箱からカトリーヌの魔力をキョウコへと転送しているのだった。
キョウコはフローラの言っていた考えとはこのことだと察した。カトリーヌの魔力量はキョウコの10倍はある。リンリンにこの前、やたらと気持ちのいい方法で魔力量を測ってもらったのだ。
キョウコは今までガス欠を恐れて経済的な威力にとどめていた加護の力を一気に解放した。
その結果、王太后のキョウコへの害意は消し飛んだが、後宮で戦えるようすべての邪心を取り除いたわけではない。
「キョウコ、理解した。わらわではおぬしを取り込むことはできぬ。おぬしのスキルに頼らず、自分の才覚のみで、国のため、民のために後宮を治めるとしよう」
王太后が晴れやかな表情でそう語った。
「王太后さま、我らはカトリーヌの妹君で、リンリンサマの使徒でもあるシルビア妃の後見人です。シルビア妃の住みやすい後宮である限り、我らが表に出ることはありません」
キョウコはそう言って、シルビアとロゼッサ妃を見て、その後、王と王妃にも目でわからせた。
「了解した。善良なシルビアの意向であれば、問題ない。後宮でのロゼッサ、シルビアの後ろ盾にはわらわがなる」
王太后が約束した。
「じゃあ、シルビアさん、元気でね。何かあったら、秘術箱で連絡してね」
ルミがシルビアに声をかけ、キョウコもシルビアにばいばいと手を振り、2人は寝殿から出て行った。
「よく参ったな、3人とも」
王太后から声がかかり、3人は顔を上げた。
そのとき、外に控えていた侍女が
「王様と王妃がいらっしゃいました」
と報告した。
すぐにカイザー王とマリアンヌ王妃が入ってきて、王太后に挨拶をした後、王太后の右側に座した。
キョウコ達3人は王と王妃に挨拶する。
(どうして王と王妃が来るのよっ)
想定外の事態にキョウコは動揺する。風に乗って、キョウコの耳だけに聞こえる声が届いた。ルミの声である。
(キョウコがリンリン様の妻と知って、カトリーヌとの謁見の後、すぐにこちらに来たのよ。フローラからの指示は「予定通り進めて」よ)
「王様、何用ですか?」
王太后が王に訪問の目的を訊ねた。
「母上、そこのキョウコ殿がリンリン殿の妻と聞いて、少しお話をと思いまして、参りました。突然の訪問をお許しください」
「息子の訪問を喜ばぬ母などおりませぬ。で、マリアンヌも同じ目的か?」
「さようでございます。義母上さま」
「ふふふ、キョウコ、そちは人気者じゃの」
王太后がキョウコに声をかける。
「滅相もございません」
王はキョウコの容姿に目を見張った。銀髪の不思議な目の輝きを持つ非常に美しい女だ。カトリーヌの美しさにも目を奪われたが、この女も怖いほど美しい。おっと、マリアンヌに悟られてはいけないな。
「ふふふ、ロゼッサ、つきものが落ちたような顔じゃの。キョウコのお祓いを受けたのか?」
王太后が今度はロゼッサ妃に声をかける。
「はい、王太后様、今までの私を深く反省しております」
王も王妃も、険が取れ、柔和で美しくなったロゼッサ妃の変貌ぶりに目を疑った。
王太后はキョウコの能力の有用性を確信する。すべての敵を懐柔できるとんでもないスキルだ。ぜひとも手ごまとしてほしい。
キョウコは王と王妃を密かに観察した。王妃は驚いたことに非常に清らかな心を持っている。邪心と判断できるものは1つもなかった。王は清らかではないが、私心がない。国のためであればなんでもするといった感じだ。少なくともキョウコを害する心はないようだ。
問題は王太后だ。先ほどから、邪心が急速に膨らみ、キョウコへの害意を発し始めている。
「王太后さま、恐れながら、私への害意を取り除かせていただきます」
キョウコの目が金色に変わる。王太后はキョウコへの興味が急速に薄れていくことを感じるが、強固な意志を持って、国のためにキョウコの力が必要だと強く念じ直す。
王妃はすでにキョウコに対して頭を垂れている。王はキョウコと王太后の対決に目を見張っている。
キョウコと王太后はすでに1分近くにらみ合っている。
王太后はこういった状況になることを見込んでおり、手元の兵士たちにキョウコを拘束するようあらかじめ指示を出していた。
兵士たちが10名ほど入り口に現れた。キョウコは王太后の邪心を取り除くことに集中している。
兵士たちがキョウコを拘束しようと中に足を踏み入れようとした瞬間、どこから現れたのか、キョウコの背後に別の女性が立っていた。
薄い茶色の目と髪の透き通るような肌の美少女だ。恐らく彼女もリンリンの妻だろうと王は予想した。
彼女が両手を前に出した。すると中に入ろうとした兵士10人が猛烈な勢いで、後ろから引っ張られたかのように弾き飛ばされる。
兵士たちは数十メートルは吹き飛ばされ、ぐったりとしてしまった。
「おばさん、私たちを取り込めるなんて思わないことね」
ルミはその薄い色の目で王太后を睨む。
王太后はキョウコとの精神戦の真っ最中で、ルミの無礼を追求する余裕はない。王もカトリーヌと同等の力を持つと感じさせるルミに手を出すことは控えていた。
キョウコは焦っていた。もうすぐ魔力が尽きてしまう。王太后の邪心は次から次へとあふれてくる。
そのとき、キョウコの魔力がどんどんと回復していくのを感じた。ルミが秘術箱からカトリーヌの魔力をキョウコへと転送しているのだった。
キョウコはフローラの言っていた考えとはこのことだと察した。カトリーヌの魔力量はキョウコの10倍はある。リンリンにこの前、やたらと気持ちのいい方法で魔力量を測ってもらったのだ。
キョウコは今までガス欠を恐れて経済的な威力にとどめていた加護の力を一気に解放した。
その結果、王太后のキョウコへの害意は消し飛んだが、後宮で戦えるようすべての邪心を取り除いたわけではない。
「キョウコ、理解した。わらわではおぬしを取り込むことはできぬ。おぬしのスキルに頼らず、自分の才覚のみで、国のため、民のために後宮を治めるとしよう」
王太后が晴れやかな表情でそう語った。
「王太后さま、我らはカトリーヌの妹君で、リンリンサマの使徒でもあるシルビア妃の後見人です。シルビア妃の住みやすい後宮である限り、我らが表に出ることはありません」
キョウコはそう言って、シルビアとロゼッサ妃を見て、その後、王と王妃にも目でわからせた。
「了解した。善良なシルビアの意向であれば、問題ない。後宮でのロゼッサ、シルビアの後ろ盾にはわらわがなる」
王太后が約束した。
「じゃあ、シルビアさん、元気でね。何かあったら、秘術箱で連絡してね」
ルミがシルビアに声をかけ、キョウコもシルビアにばいばいと手を振り、2人は寝殿から出て行った。
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