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溺愛の兆候
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俺は会ってまだ一時間も経っていないのに、カトリーヌの美貌の虜になってしまっていた。
ダンブルの各州の問題に対する各種施策のカトリーヌからの説明を馬車の隣に座って聞いているのだが、全く頭に入って来ない。
それよりも、どうしてこんなに目が大きいのだろう、とか、まつ毛が多くて長いなあ、とか、鼻がすっと細くて形がキレイだなあ、とか、唇の両端がキュッと上にあがっていて可愛らしいなあ、とか、頬の白さにほんのりとピンクが混じって美しい色だなあ、とか……。
「ヒューイ、質問ある?」
カトリーヌが訝しげな表情で俺を見ている。
「は、はい。なんでこんなに綺麗なんですか?」
リリアが吹き出している。
しまった。俺は何を言っているんだ!?
「ヒューイ、真面目に聞いてね。時間の無駄はやめようね」
カトリーヌは額に手を当ててため息をついている。
「カトリーヌ、すまない。俺は君のように美しい人に会ったことがなくて、もう少し君をじっと見ていたいんだ。ほ、ほら、すごく眠いときは、ちょっとだけ寝た方が効率が上がるだろう。あれと同じだ。少しの間、君を集中して見た方がいいんだよ」
「そんな理屈通らないです! じっと見られると、いくら私でも恥ずかしいですっ」
やばい。怒った顔も可愛すぎる。
「殿下、目をつぶって説明を聞かれてはいかがでしょうか?」
見かねたリリアがいいアイデアを出してくれたが、こんなにきれいなものを見ないなんて選択があるか?
「それは良策ではない。カトリーヌがせっかく俺のために時間を使ってくれているんだ。説明もしっかり聞き、美貌も堪能する。やはり俺が克服しないといけないんだっ!」
「そうですか、じゃあ、殿下、頑張ってください」
何だリリアの投げやりな態度は。
あっ、カトリーヌは顔が真っ赤ではないか。
「カトリーヌ、顔が赤いが疲れさせてしまったか。そうだ、すまなかった。長旅で疲れているのに、策の説明をさせてしまって。さあ、膝を貸すから、俺の膝にその形のいい小さな頭を置いて、休むがいい。しかし、こんな小さな頭でよくあのような策をいくつも出せるな」
俺は自分の膝をポンポンと叩いて、はいどうぞをした。
「あなたがさっきから恥ずかしいことばかり言うから赤いんですっ!」
カトリーヌは反対方向を向いてしまった。
「そ、そうなのか? 思ったことを口に出しているだけだぞ。では、疲れていないのだな。良かった。心配したぞ」
「カトリーヌ様、殿下はしばらく色ボケ状態ですから、先ほどのように私にご質問を頂くお時間にいたしませんか?」
「それはいい考えね。殿下こそお疲れと思います。しばらくお休みになって下さい。殿下が普通になられるまで、私は殿下とお呼びしますし、敬語も使いますから」
カトリーヌにピシャリと言われてしまった。
「はい、分かりました……」
こんなに情けない自分は初めてだが、カトリーヌを愛しく思う気持ちが次から次へと溢れて来て、全く制御が出来ない。
カトリーヌを潰れるほど抱きしめたいが、俺の一方的な愛情をカトリーヌにぶつけてはいけないことは分かる。
我慢しろ、俺。
カトリーヌが俺に心を開き、愛してくれるようになるまで、耐えるんだ。
ダンブルの各州の問題に対する各種施策のカトリーヌからの説明を馬車の隣に座って聞いているのだが、全く頭に入って来ない。
それよりも、どうしてこんなに目が大きいのだろう、とか、まつ毛が多くて長いなあ、とか、鼻がすっと細くて形がキレイだなあ、とか、唇の両端がキュッと上にあがっていて可愛らしいなあ、とか、頬の白さにほんのりとピンクが混じって美しい色だなあ、とか……。
「ヒューイ、質問ある?」
カトリーヌが訝しげな表情で俺を見ている。
「は、はい。なんでこんなに綺麗なんですか?」
リリアが吹き出している。
しまった。俺は何を言っているんだ!?
「ヒューイ、真面目に聞いてね。時間の無駄はやめようね」
カトリーヌは額に手を当ててため息をついている。
「カトリーヌ、すまない。俺は君のように美しい人に会ったことがなくて、もう少し君をじっと見ていたいんだ。ほ、ほら、すごく眠いときは、ちょっとだけ寝た方が効率が上がるだろう。あれと同じだ。少しの間、君を集中して見た方がいいんだよ」
「そんな理屈通らないです! じっと見られると、いくら私でも恥ずかしいですっ」
やばい。怒った顔も可愛すぎる。
「殿下、目をつぶって説明を聞かれてはいかがでしょうか?」
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「それは良策ではない。カトリーヌがせっかく俺のために時間を使ってくれているんだ。説明もしっかり聞き、美貌も堪能する。やはり俺が克服しないといけないんだっ!」
「そうですか、じゃあ、殿下、頑張ってください」
何だリリアの投げやりな態度は。
あっ、カトリーヌは顔が真っ赤ではないか。
「カトリーヌ、顔が赤いが疲れさせてしまったか。そうだ、すまなかった。長旅で疲れているのに、策の説明をさせてしまって。さあ、膝を貸すから、俺の膝にその形のいい小さな頭を置いて、休むがいい。しかし、こんな小さな頭でよくあのような策をいくつも出せるな」
俺は自分の膝をポンポンと叩いて、はいどうぞをした。
「あなたがさっきから恥ずかしいことばかり言うから赤いんですっ!」
カトリーヌは反対方向を向いてしまった。
「そ、そうなのか? 思ったことを口に出しているだけだぞ。では、疲れていないのだな。良かった。心配したぞ」
「カトリーヌ様、殿下はしばらく色ボケ状態ですから、先ほどのように私にご質問を頂くお時間にいたしませんか?」
「それはいい考えね。殿下こそお疲れと思います。しばらくお休みになって下さい。殿下が普通になられるまで、私は殿下とお呼びしますし、敬語も使いますから」
カトリーヌにピシャリと言われてしまった。
「はい、分かりました……」
こんなに情けない自分は初めてだが、カトリーヌを愛しく思う気持ちが次から次へと溢れて来て、全く制御が出来ない。
カトリーヌを潰れるほど抱きしめたいが、俺の一方的な愛情をカトリーヌにぶつけてはいけないことは分かる。
我慢しろ、俺。
カトリーヌが俺に心を開き、愛してくれるようになるまで、耐えるんだ。
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