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ダンブルでの結婚式
結婚式の日取りは三ヶ月後と決まった。
招待客だが、やっぱり両親と妹を呼ばないと行けないのだろうか。呼んでも来ない場合、タンブル国に非常に失礼に当たるので、私はこれまでの事情を殿下に話すことにした。
「なるほど、シャルロットと仲が悪いことは学園でも有名だったが、そういう事情があったのか。そうだな、まずはハグさせてくれ」
「え?」
「頑張ってきた君をハグして、これまでの努力を精一杯讃えたいんだ。一人ぐらい君を讃えてもいいんじゃないか?」
「は、はい」
なぜそれでハグなのかは疑問だったが、私は殿下に近寄った。殿下は私を抱きよせ、優しくふんわりと抱擁してくれた。
殿下から香の匂いと体温が伝わって来て、安らかな気持ちになっていく。
「カトリーヌ、頑張って来たね。これからも頑張るんだろう? でも、お兄さんだけのためではなく、自分のためにも頑張ってみないか?」
「私のためにも?」
「そう、そうしてみないか?」
兄のために頑張ることを否定しない殿下の言葉は胸にスッと入って来た。
「君のお兄さんのことを聞かせてくれるかい?」
「はい」
私はたくさんたくさん兄のことを話した。私の命を救ってくれた最後の瞬間まで。そして、兄には心から感謝していると話した。
「カトリーヌ、この世で一番お兄さんに感謝しているのは実は俺なんだぜ。君よりもずっとだ。だって、カトリーヌをお嫁さんにできるのは、君のお兄さんのおかげなのだから」
ここ最近の殿下の言動を見ていると、本当にそうなのかも知れないと思えて来た。
「だから、俺も兄さんのために頑張る。君以上に兄さんのために頑張るぞ。そうしないと恩返し出来ないじゃないか」
「は、はい。兄さんのために頑張る仲間が増えた、ということでしょうか?」
「そうだ、俺は頑張る仲間だ。よろしく頼む」
「はい、よろしくお願いします」
「それはいいとして、兄さんが助けた大切な君を虐めるアードレー家を俺は許さないぞ。君が許しても俺が許さない。君が泣いて止めるなら考えるけど、どうする?」
「……あまり興味ないかも」
「そ、そうか。ってことは止めもしないんだね。勝手にこてんぱんにするけど、問題ないかい?」
「問題ないです……」
家族のことは、恐らく自己防衛本能なのだろうが、この十年で本当に興味がなくなってしまっていた。
恐らく私は家族が酷い目にあっても何も感じないだろう。
「今回の結婚式はダンブルだけのうちうちの結婚式にしよう。俺たちの王国への披露は、一年後の王国の皇太子とシャルロットの結婚式にしないか? きっと俺たちは招待されるはずだぜ。それまでに舐められないよう国力を逆転させよう」
「分かりました」
***
「まずはアードレー家の情報をカトリーヌの兄が亡くなったときから現在に至るまで、徹底的に洗い出してくれ。最終的には王国の五大侯爵の一つを潰すぞ。国益と私益の一石二鳥だ」
俺は諜報部長に勅書を渡した。
「陛下の勅書だ。陛下曰く、大事な娘をコケにする奴は絶対に許さんそうだ。俺よりも怒っていて、久々にビビったぜ」
勅命を見て諜報部長は目を見開いている。
「かしこまりました。予算に糸目はつけないとは、相当お怒りのようですな。お任せください」
***
結婚式までの三ヶ月間、ヒューイの溺愛節にさらされ続けたカトリーヌは、遂にヒューイと恋に落ちてしまう。
兄への償いもヒューイと一緒に行っていけるということで、カトリーヌがヒューイを愛することに抵抗がなくなったのが大きな要因だった。
「ヒューイが好き」
というカトリーヌの言葉に、ヒューイは泣き崩れたという。
そして、三ヶ月後、ヒューイ皇太子とカトリーヌ皇太子妃の結婚式がダンブル大聖堂にて盛大に執り行われた。
招待客だが、やっぱり両親と妹を呼ばないと行けないのだろうか。呼んでも来ない場合、タンブル国に非常に失礼に当たるので、私はこれまでの事情を殿下に話すことにした。
「なるほど、シャルロットと仲が悪いことは学園でも有名だったが、そういう事情があったのか。そうだな、まずはハグさせてくれ」
「え?」
「頑張ってきた君をハグして、これまでの努力を精一杯讃えたいんだ。一人ぐらい君を讃えてもいいんじゃないか?」
「は、はい」
なぜそれでハグなのかは疑問だったが、私は殿下に近寄った。殿下は私を抱きよせ、優しくふんわりと抱擁してくれた。
殿下から香の匂いと体温が伝わって来て、安らかな気持ちになっていく。
「カトリーヌ、頑張って来たね。これからも頑張るんだろう? でも、お兄さんだけのためではなく、自分のためにも頑張ってみないか?」
「私のためにも?」
「そう、そうしてみないか?」
兄のために頑張ることを否定しない殿下の言葉は胸にスッと入って来た。
「君のお兄さんのことを聞かせてくれるかい?」
「はい」
私はたくさんたくさん兄のことを話した。私の命を救ってくれた最後の瞬間まで。そして、兄には心から感謝していると話した。
「カトリーヌ、この世で一番お兄さんに感謝しているのは実は俺なんだぜ。君よりもずっとだ。だって、カトリーヌをお嫁さんにできるのは、君のお兄さんのおかげなのだから」
ここ最近の殿下の言動を見ていると、本当にそうなのかも知れないと思えて来た。
「だから、俺も兄さんのために頑張る。君以上に兄さんのために頑張るぞ。そうしないと恩返し出来ないじゃないか」
「は、はい。兄さんのために頑張る仲間が増えた、ということでしょうか?」
「そうだ、俺は頑張る仲間だ。よろしく頼む」
「はい、よろしくお願いします」
「それはいいとして、兄さんが助けた大切な君を虐めるアードレー家を俺は許さないぞ。君が許しても俺が許さない。君が泣いて止めるなら考えるけど、どうする?」
「……あまり興味ないかも」
「そ、そうか。ってことは止めもしないんだね。勝手にこてんぱんにするけど、問題ないかい?」
「問題ないです……」
家族のことは、恐らく自己防衛本能なのだろうが、この十年で本当に興味がなくなってしまっていた。
恐らく私は家族が酷い目にあっても何も感じないだろう。
「今回の結婚式はダンブルだけのうちうちの結婚式にしよう。俺たちの王国への披露は、一年後の王国の皇太子とシャルロットの結婚式にしないか? きっと俺たちは招待されるはずだぜ。それまでに舐められないよう国力を逆転させよう」
「分かりました」
***
「まずはアードレー家の情報をカトリーヌの兄が亡くなったときから現在に至るまで、徹底的に洗い出してくれ。最終的には王国の五大侯爵の一つを潰すぞ。国益と私益の一石二鳥だ」
俺は諜報部長に勅書を渡した。
「陛下の勅書だ。陛下曰く、大事な娘をコケにする奴は絶対に許さんそうだ。俺よりも怒っていて、久々にビビったぜ」
勅命を見て諜報部長は目を見開いている。
「かしこまりました。予算に糸目はつけないとは、相当お怒りのようですな。お任せください」
***
結婚式までの三ヶ月間、ヒューイの溺愛節にさらされ続けたカトリーヌは、遂にヒューイと恋に落ちてしまう。
兄への償いもヒューイと一緒に行っていけるということで、カトリーヌがヒューイを愛することに抵抗がなくなったのが大きな要因だった。
「ヒューイが好き」
というカトリーヌの言葉に、ヒューイは泣き崩れたという。
そして、三ヶ月後、ヒューイ皇太子とカトリーヌ皇太子妃の結婚式がダンブル大聖堂にて盛大に執り行われた。
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