12 / 39
第二章 就職
サユリ
しおりを挟む
「初めまして。いつもイーサン町長にはお世話になっています」
「まあ、お世話になっているのはイーサンの方ですわ」
非常におしとやかな感じのする人だ。単刀直入に聞いてみた。
「来歴簿に盗賊の女首領と書かれてたのですが、誤認逮捕だったようですね。どうして間違われちゃったんですか?」
サユリさんはある貴族のメイドとして働いていたそうだが、主人から再三関係を迫られていて困っていたという。それで、思い切って奥様、つまり、正妻に相談したところ、屋敷から逃げ出せるように手配してくれたらしいのだが、それが盗賊だったらしい。
その奥様の名前を聞いて、すべて分かったような気がした。その奥様は、リチャードの母のセリナ妃の妹で、リチャードの叔母にあたる人なのだ。いや、しかし、相談する相手を思いっきり間違えているように思うが、サユリさん、何だか天然な人なのだ。
すぐに盗賊のアジトに警察が踏み込んできて、そのとき、客人待遇で盗賊の首領の横に座っていたサユリさんが、首領の身分を肩代わりさせられたらしい。その後、盗賊たち全員が口裏を合わせて首領だと証言したため、有罪になってしまったようだ。それで、首領のサユリさんだけ島流しになったという。
「それ、完全に仕組まれてますね」
「ええ、イーサンからも言われました」
「その奥様はセレナ妃の妹です。私の兄のリチャードの叔母に当たります」
セレナ妃の名前を聞いてサーシャさんが反応した
「セレナ妃の犠牲者がここにも……」
サーシャさんもセレナ妃に嵌められて、ここに来ている。
だが、少し腑に落ちない点がある。先ほどのレベッカもここにいるサユリも、かなりの美貌だ。レンガ島は外から見れば、囚人たちの島で治安が悪いところ、というイメージがある。そんな島にこんな美しい2人を無防備で送り出すなんて、計画としてずさんすぎる。
「レベッカさんとはお知り合いですか?」
カオリさんがえっという表情をした。
「はい、いっしょにこの島に護送されてきました」
後で聞いたのだが、絶世の美女2人が同時に送られてきて、島は大いに沸いたらしい。
「僕たちは5人でしたが、カオリさんたちは何人で護送されてきたのですか?」
「私たちも5人です」
俺はピンときた。来歴簿はアルファベット順で記載されていて、島に来た順番はわからない。サユリさんとレベッカは
レオン・コーナン
サイラス・レイン
シンジ・ルーベース
の3人に護衛されて来たのではないだろうか。
「ほかの3人の人たちは優しかったですか?」
「ええ、とても。今もすごく親身になって、いろいろと助けてくださいます」
「どんな方ですか?」
「レオン、サイラス、シンジの3名です。3人とも元は王宮の衛兵だったそうです。そうそう、養蚕事業部に異動を希望しています。アランさん、よろしくしてあげてください」
そういうことか。この3人は兄たちの配下だな。2人の女性が襲われたりしないように護衛をつけたのか。
「わかりました。ところで、イーサン町長とはいつご結婚されたのですか?」
サユリさんの町長との結婚は計画の一部なのだろうか?
「半年ほど前です。さっきの3人から紹介されまして、とても良い人だったので一緒になりました」
イーサンは町長になって2年目だ。町長を狙ったのか?
それにしても、レベッカからもサユリからも俺への敵意が全く感じられない。俺の信頼を勝ち取ってから仕掛けようとしているのだろうか。
「そうなのですね。そういえば、サーシャさんからサユリさんが私と話をしたいと聞きましたが、どんなご用でしょうか」
サユリさんが何だかもじもじし始めた。
「その、私の2番目の夫になっていただけないかと思いまして……」
やはりそう来たか。でも、何だかサユリさんのイメージに合わないように思う。
「すいません。お気持ちは嬉しいのですが、私には婚約者がおりまして、近々島に招く予定なのです」
サユリさんはとても恥ずかしそうだ。
「そうでしたか。そうとは知らず、図々しいお願いをしてしまい、申し訳ございませんでした」
「いいえ、サユリさんのような美しい人から求婚されて、舞い上がってしまいました。差し支えなければ、こんな私に声かけてくれた理由を教えていただけますか」
サユリさんは少し躊躇していたようだが、思い切って話し出した。
「まあ、お世話になっているのはイーサンの方ですわ」
非常におしとやかな感じのする人だ。単刀直入に聞いてみた。
「来歴簿に盗賊の女首領と書かれてたのですが、誤認逮捕だったようですね。どうして間違われちゃったんですか?」
サユリさんはある貴族のメイドとして働いていたそうだが、主人から再三関係を迫られていて困っていたという。それで、思い切って奥様、つまり、正妻に相談したところ、屋敷から逃げ出せるように手配してくれたらしいのだが、それが盗賊だったらしい。
その奥様の名前を聞いて、すべて分かったような気がした。その奥様は、リチャードの母のセリナ妃の妹で、リチャードの叔母にあたる人なのだ。いや、しかし、相談する相手を思いっきり間違えているように思うが、サユリさん、何だか天然な人なのだ。
すぐに盗賊のアジトに警察が踏み込んできて、そのとき、客人待遇で盗賊の首領の横に座っていたサユリさんが、首領の身分を肩代わりさせられたらしい。その後、盗賊たち全員が口裏を合わせて首領だと証言したため、有罪になってしまったようだ。それで、首領のサユリさんだけ島流しになったという。
「それ、完全に仕組まれてますね」
「ええ、イーサンからも言われました」
「その奥様はセレナ妃の妹です。私の兄のリチャードの叔母に当たります」
セレナ妃の名前を聞いてサーシャさんが反応した
「セレナ妃の犠牲者がここにも……」
サーシャさんもセレナ妃に嵌められて、ここに来ている。
だが、少し腑に落ちない点がある。先ほどのレベッカもここにいるサユリも、かなりの美貌だ。レンガ島は外から見れば、囚人たちの島で治安が悪いところ、というイメージがある。そんな島にこんな美しい2人を無防備で送り出すなんて、計画としてずさんすぎる。
「レベッカさんとはお知り合いですか?」
カオリさんがえっという表情をした。
「はい、いっしょにこの島に護送されてきました」
後で聞いたのだが、絶世の美女2人が同時に送られてきて、島は大いに沸いたらしい。
「僕たちは5人でしたが、カオリさんたちは何人で護送されてきたのですか?」
「私たちも5人です」
俺はピンときた。来歴簿はアルファベット順で記載されていて、島に来た順番はわからない。サユリさんとレベッカは
レオン・コーナン
サイラス・レイン
シンジ・ルーベース
の3人に護衛されて来たのではないだろうか。
「ほかの3人の人たちは優しかったですか?」
「ええ、とても。今もすごく親身になって、いろいろと助けてくださいます」
「どんな方ですか?」
「レオン、サイラス、シンジの3名です。3人とも元は王宮の衛兵だったそうです。そうそう、養蚕事業部に異動を希望しています。アランさん、よろしくしてあげてください」
そういうことか。この3人は兄たちの配下だな。2人の女性が襲われたりしないように護衛をつけたのか。
「わかりました。ところで、イーサン町長とはいつご結婚されたのですか?」
サユリさんの町長との結婚は計画の一部なのだろうか?
「半年ほど前です。さっきの3人から紹介されまして、とても良い人だったので一緒になりました」
イーサンは町長になって2年目だ。町長を狙ったのか?
それにしても、レベッカからもサユリからも俺への敵意が全く感じられない。俺の信頼を勝ち取ってから仕掛けようとしているのだろうか。
「そうなのですね。そういえば、サーシャさんからサユリさんが私と話をしたいと聞きましたが、どんなご用でしょうか」
サユリさんが何だかもじもじし始めた。
「その、私の2番目の夫になっていただけないかと思いまして……」
やはりそう来たか。でも、何だかサユリさんのイメージに合わないように思う。
「すいません。お気持ちは嬉しいのですが、私には婚約者がおりまして、近々島に招く予定なのです」
サユリさんはとても恥ずかしそうだ。
「そうでしたか。そうとは知らず、図々しいお願いをしてしまい、申し訳ございませんでした」
「いいえ、サユリさんのような美しい人から求婚されて、舞い上がってしまいました。差し支えなければ、こんな私に声かけてくれた理由を教えていただけますか」
サユリさんは少し躊躇していたようだが、思い切って話し出した。
8
あなたにおすすめの小説
異世界転生者のTSスローライフ
未羊
ファンタジー
主人公は地球で死んで転生してきた転生者。
転生で得た恵まれた能力を使って、転生先の世界でよみがえった魔王を打ち倒すも、その際に呪いを受けてしまう。
強力な呪いに生死の境をさまようが、さすがは異世界転生のチート主人公。どうにか無事に目を覚ます。
ところが、目が覚めて見えた自分の体が何かおかしい。
改めて確認すると、全身が毛むくじゃらの獣人となってしまっていた。
しかも、性別までも変わってしまっていた。
かくして、魔王を打ち倒した俺は死んだこととされ、獣人となった事で僻地へと追放されてしまう。
追放先はなんと、魔王が治めていた土地。
どん底な気分だった俺だが、新たな土地で一念発起する事にしたのだった。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる