過去数百回分の人生の知識と能力を使える俺は、女神からも溺愛されているが、今世では王国から追放されてしまったので、復讐してやろうと思っている

もぐすけ

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第二章 就職

サユリ

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「初めまして。いつもイーサン町長にはお世話になっています」

「まあ、お世話になっているのはイーサンの方ですわ」

非常におしとやかな感じのする人だ。単刀直入に聞いてみた。

「来歴簿に盗賊の女首領と書かれてたのですが、誤認逮捕だったようですね。どうして間違われちゃったんですか?」

サユリさんはある貴族のメイドとして働いていたそうだが、主人から再三関係を迫られていて困っていたという。それで、思い切って奥様、つまり、正妻に相談したところ、屋敷から逃げ出せるように手配してくれたらしいのだが、それが盗賊だったらしい。

その奥様の名前を聞いて、すべて分かったような気がした。その奥様は、リチャードの母のセリナ妃の妹で、リチャードの叔母にあたる人なのだ。いや、しかし、相談する相手を思いっきり間違えているように思うが、サユリさん、何だか天然な人なのだ。

すぐに盗賊のアジトに警察が踏み込んできて、そのとき、客人待遇で盗賊の首領の横に座っていたサユリさんが、首領の身分を肩代わりさせられたらしい。その後、盗賊たち全員が口裏を合わせて首領だと証言したため、有罪になってしまったようだ。それで、首領のサユリさんだけ島流しになったという。

「それ、完全に仕組まれてますね」

「ええ、イーサンからも言われました」

「その奥様はセレナ妃の妹です。私の兄のリチャードの叔母に当たります」

セレナ妃の名前を聞いてサーシャさんが反応した

「セレナ妃の犠牲者がここにも……」

サーシャさんもセレナ妃に嵌められて、ここに来ている。

だが、少し腑に落ちない点がある。先ほどのレベッカもここにいるサユリも、かなりの美貌だ。レンガ島は外から見れば、囚人たちの島で治安が悪いところ、というイメージがある。そんな島にこんな美しい2人を無防備で送り出すなんて、計画としてずさんすぎる。

「レベッカさんとはお知り合いですか?」

カオリさんがえっという表情をした。

「はい、いっしょにこの島に護送されてきました」

後で聞いたのだが、絶世の美女2人が同時に送られてきて、島は大いに沸いたらしい。

「僕たちは5人でしたが、カオリさんたちは何人で護送されてきたのですか?」

「私たちも5人です」

俺はピンときた。来歴簿はアルファベット順で記載されていて、島に来た順番はわからない。サユリさんとレベッカは

レオン・コーナン
サイラス・レイン
シンジ・ルーベース

の3人に護衛されて来たのではないだろうか。

「ほかの3人の人たちは優しかったですか?」

「ええ、とても。今もすごく親身になって、いろいろと助けてくださいます」

「どんな方ですか?」

「レオン、サイラス、シンジの3名です。3人とも元は王宮の衛兵だったそうです。そうそう、養蚕事業部に異動を希望しています。アランさん、よろしくしてあげてください」

そういうことか。この3人は兄たちの配下だな。2人の女性が襲われたりしないように護衛をつけたのか。

「わかりました。ところで、イーサン町長とはいつご結婚されたのですか?」

サユリさんの町長との結婚は計画の一部なのだろうか?

「半年ほど前です。さっきの3人から紹介されまして、とても良い人だったので一緒になりました」

イーサンは町長になって2年目だ。町長を狙ったのか?

それにしても、レベッカからもサユリからも俺への敵意が全く感じられない。俺の信頼を勝ち取ってから仕掛けようとしているのだろうか。

「そうなのですね。そういえば、サーシャさんからサユリさんが私と話をしたいと聞きましたが、どんなご用でしょうか」

サユリさんが何だかもじもじし始めた。

「その、私の2番目の夫になっていただけないかと思いまして……」

やはりそう来たか。でも、何だかサユリさんのイメージに合わないように思う。

「すいません。お気持ちは嬉しいのですが、私には婚約者がおりまして、近々島に招く予定なのです」

サユリさんはとても恥ずかしそうだ。

「そうでしたか。そうとは知らず、図々しいお願いをしてしまい、申し訳ございませんでした」

「いいえ、サユリさんのような美しい人から求婚されて、舞い上がってしまいました。差し支えなければ、こんな私に声かけてくれた理由を教えていただけますか」

サユリさんは少し躊躇していたようだが、思い切って話し出した。
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