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第四章 敵討ち
仇討ち
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「グレース!? その猫は妖精か?」
さすがに第一王子ともなると教養が違う。シルバを妖精だと疑ったのは王子が初めてだ。
「ええ、シルバと呼んでます」
「この重力魔法も妖精の力か?」
「そうです」
「落ち着いて、宮殿の中で話さないか?」
「あら? ここの方が景色がよくて、落ち着いて話せますわよ。元婚約者の殿下といろいろとお話をしたいところではございますが、まずは、私に火事の濡れ衣を着せて、飄々と生きているリチャードと話を始めます」
私はリチャードの方を向いた。リチャードは顔面蒼白だ。
「リチャード、ここから落ちると死んでしまいます。これから、いくつか質問をします。嘘をついたら、すぐに落としますので、心して答えてください」
リチャードが足元を見てから、震えながら話す。
「グレースお嬢様、わ、私は頼まれて、実行したのです」
「あら? まだ何も聞いてませんわよ? 何のことを話しているのですか?」
「グレース、こんな質問の仕方では、あることないこと話すに違いない。部屋で話さないか?」
エドワードが割り込んできた。私とリチャードに話をさせたくないようだ。
「なるほど、殿下がいらっしゃると、リチャードが話しにくいようね。シルバ、殿下を10メートルほど上昇させてくれる?」
『はいよ』
「なっ、グレース、待ってくれ」
10メートル上昇させても、エドワードがまだ何か言っている。声が聞こえないように、さらに上昇させた。ちょっと寒いかもしれないが、知ったことではない。
「さあ、リチャード、存分に話しなさい」
リチャードは遥か上空に移動したエドワードを確認してから話し始めた。
リチャードの話によると、火事を計画したのはエドワードで、目的はリッチモンド公爵家の乗っ取りだ。テイルと共謀してリッチモンド公爵家の財産と領土を我が物にする計画だったという。
私はリチャードの話を最後まで聞いたが、ずさんな作り話だと思った。
「リチャード、私を馬鹿にしているの? こんなリスクを負って、結局、殿下は当主の娘の婚約者でしかないじゃない。私の婚約者でいるのとどこがどう違うのよ? 嘘をついているわね?」
リチャードがギョッとしているが、こんな話で私を騙せると本当に思っていたのだろうか。
「お、お嬢様、お待ちください。私は子爵で、抗いようがないのです」
「どういうこと? あなたも誰かの命令に従っているというの?」
「これほどの力をお持ちのお嬢様にお願いがございます。私はお嬢様に殺されることで罪を償いますので、私の妻と娘を巨悪からお救いください。私が真相を話すと妻と娘が殺されてしまいますので、お嬢様には嘘しか申しあげられません」
この男、腐っている。私を小娘だと思って舐めているようね。
「そう。じゃあ、ご要望通り殺すわよ。シルバ、落として」
「ま、待って下さい、お嬢様!」
「何よ。まだ何かあるの? あなたの妻と娘は巨悪とかいう奴から救うわよ。だから、早く死んで」
「す、すいません。本当のことを申し上げます」
「何よ、あなたは嘘ばかりね。最初に言ったでしょう。嘘をついたら、すぐに落とすと。実を言うとね、何を話してもお前は落とすつもりだったのよ。どんな理由があろうと、両親を殺したことは許さない。もう何も聞きたくないわ。さようなら」
リチャードが慌てふためいている。リチャードに重力が戻って来た。
「おい、お前、あ、こら、い、嫌だあ、あああ」
リチャードは墜落死した。
「シルバ、私、人殺ししちゃった。でも、あいつはどうしても許せなかったの」
『グレース、人はいつか死ぬし、死んでも転生するんだ。汚れてしまった奴は早く洗って転生させた方が、本人にとってもいいんだよ。それに殺したのは俺だ。グレースは気にしなくていい』
「ありがとう、シルバ」
『グレースは思った通りにやればいいのさ。さて、王子をここまで下ろすぜ』
王子が降りて来た。
「殿下、申し訳ございませんでした。少し寒かったでしょうか?」
「ああ、少しというか、かなり寒かった。リチャードはどうした」
エドワードは鼻をぐずぐずしている。余程寒かったようだ。
「あそこに」
下の方にリチャードが倒れているのが見える。
「グレース、お前、リチャードを殺したのか?」
「ええ、嘘ばかりつくものですから」
「まずい。私の母が殺されてしまう! すまないが、母の寝殿まで連れて行ってくれないか。婚約解消の理由も追って話す」
さすがに第一王子ともなると教養が違う。シルバを妖精だと疑ったのは王子が初めてだ。
「ええ、シルバと呼んでます」
「この重力魔法も妖精の力か?」
「そうです」
「落ち着いて、宮殿の中で話さないか?」
「あら? ここの方が景色がよくて、落ち着いて話せますわよ。元婚約者の殿下といろいろとお話をしたいところではございますが、まずは、私に火事の濡れ衣を着せて、飄々と生きているリチャードと話を始めます」
私はリチャードの方を向いた。リチャードは顔面蒼白だ。
「リチャード、ここから落ちると死んでしまいます。これから、いくつか質問をします。嘘をついたら、すぐに落としますので、心して答えてください」
リチャードが足元を見てから、震えながら話す。
「グレースお嬢様、わ、私は頼まれて、実行したのです」
「あら? まだ何も聞いてませんわよ? 何のことを話しているのですか?」
「グレース、こんな質問の仕方では、あることないこと話すに違いない。部屋で話さないか?」
エドワードが割り込んできた。私とリチャードに話をさせたくないようだ。
「なるほど、殿下がいらっしゃると、リチャードが話しにくいようね。シルバ、殿下を10メートルほど上昇させてくれる?」
『はいよ』
「なっ、グレース、待ってくれ」
10メートル上昇させても、エドワードがまだ何か言っている。声が聞こえないように、さらに上昇させた。ちょっと寒いかもしれないが、知ったことではない。
「さあ、リチャード、存分に話しなさい」
リチャードは遥か上空に移動したエドワードを確認してから話し始めた。
リチャードの話によると、火事を計画したのはエドワードで、目的はリッチモンド公爵家の乗っ取りだ。テイルと共謀してリッチモンド公爵家の財産と領土を我が物にする計画だったという。
私はリチャードの話を最後まで聞いたが、ずさんな作り話だと思った。
「リチャード、私を馬鹿にしているの? こんなリスクを負って、結局、殿下は当主の娘の婚約者でしかないじゃない。私の婚約者でいるのとどこがどう違うのよ? 嘘をついているわね?」
リチャードがギョッとしているが、こんな話で私を騙せると本当に思っていたのだろうか。
「お、お嬢様、お待ちください。私は子爵で、抗いようがないのです」
「どういうこと? あなたも誰かの命令に従っているというの?」
「これほどの力をお持ちのお嬢様にお願いがございます。私はお嬢様に殺されることで罪を償いますので、私の妻と娘を巨悪からお救いください。私が真相を話すと妻と娘が殺されてしまいますので、お嬢様には嘘しか申しあげられません」
この男、腐っている。私を小娘だと思って舐めているようね。
「そう。じゃあ、ご要望通り殺すわよ。シルバ、落として」
「ま、待って下さい、お嬢様!」
「何よ。まだ何かあるの? あなたの妻と娘は巨悪とかいう奴から救うわよ。だから、早く死んで」
「す、すいません。本当のことを申し上げます」
「何よ、あなたは嘘ばかりね。最初に言ったでしょう。嘘をついたら、すぐに落とすと。実を言うとね、何を話してもお前は落とすつもりだったのよ。どんな理由があろうと、両親を殺したことは許さない。もう何も聞きたくないわ。さようなら」
リチャードが慌てふためいている。リチャードに重力が戻って来た。
「おい、お前、あ、こら、い、嫌だあ、あああ」
リチャードは墜落死した。
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