16 / 43
第四章 敵討ち
側妃の救出
しおりを挟む
私たちは門番の死角に降り立った。
マークがさっきから邪魔で、もう帰っていいと言っているのだが、私たちと離れると殺されると言って、まとわりついて来る。はっきり言って鬱陶しい。秘密を知りすぎて殺されたいのか、と脅してもついてくる。もう面倒だから放置することにした。
『未婚の女は妖精たちに守らせるが、他は殺していいのか?』
シルバが確認して来たので、そのままの言葉をエドワードに伝える。
「殿下、未婚の女性以外は殺していいか、とシルバが聞いています。未婚の女性は妖精たちに守らせるとも言ってます」
この伝言がどうにも煩わしい。シルバに聞いてみた。
(あなたは他の人には念話できないの?)
『出来るが、出来ないことにしておかないとまずいぞ』
(……確かにその通りね)
意思疎通が出来ると知ったら、シルバを直接利用したいと思う人間が増え、私は邪魔になるだろう。
「母は殺さないで欲しい。それ以外は問題ない」
エドワードが当たり前のことを言った。
(この人は何を言っているのかしら。お母様を殺さないのは、あたり前じゃない。誰を助けるために、乗り込むと思ってるのよ!)
『まあ、そう言ってやるなよ。未婚じゃないから殺しました、ってなったらまずいだろ。念のためだよ、きっと。それより、お前がすごい顔してるんで、イケメンがビビってるぞ』
エドワードは確かにビビっていた。
「念のために言ったのだ。確認しないで惨事になったら大変だろう。だから、そんな怖い顔をしないで欲しい」
私は深呼吸した。戦いを前に少し神経がたかぶってしまっていたようだ。
「失礼しました。では、お母様と未婚の女性以外には手加減しません」
『よし、まずは門番からだな』
門番が二人、門の前に立っている。どうするのかと見ていたが、何も起きない。
『よし、行くぞ』
(何したの?)
『念話で催眠術ってのをかけた。誰かが通っても、誰も通っていないと思うように暗示をかけたんだ。門番を倒すのは侵入しましたって、宣伝しているようなものだからな』
(すごいね、シルバ)
シルバが褒められて照れているのが何となく分かる。
「殿下、行きますよ」
私はエドワードに声をかけた。
「え? 作戦とか事前の打ち合わせはしないのか?」
エドワードがいい質問をしてくれた。
「ええ、作戦を立てるほどの相手ではないですから」
以前シルバに言われた台詞だ。誰かに言ってみたいと思っていたのだ。
私はスタスタと門に歩いて行き、門番に咎められることもなく、門を通過した。おっかなびっくりでマーク、そして、エドワードも通過する。
「あれも魔法なのか?」
エドワードは門番を気味悪そうに見て、私に尋ねた。
「殿下、毎回説明が必要ですか?」
「いや、いい、すまん。邪魔しないようにする」
『グレース、何だかカリカリしてないか? 俺がついているから、安心して、リラックスしていろよ。イケメン王子にお母さんがどこか聞いてみてくれ』
「王子はイケメンなんかじゃないわよ! シルバの方が100倍格好いいわよ! 私と王子をくっつけようとしないでよっ」
私はこんなときなのに、大声を出してしまった。エドワードとマークがびっくりしている。
さきほどから私が不機嫌なのは、戦いの緊張のためではないことが、ようやく私自身にも分かった。私はシルバがエドワードと私のことを全く嫉妬していないことに腹を立てていたのだ。
『グレース、悪かった。グレースには王妃が似合ってるって、勝手に思ってしまった。こんな細かいA型野郎にお前は勿体無いよ。すまん、完全に俺が間違っていた」
(A型野郎ってのはよくわからないけど、私の伴侶は私が決めるんだからね)
私は少し落ち着いてきた。今回のように私が訳の分からない癇癪を起こしても、シルバは絶対に自己弁護しない。まず最初に私の気持ちを考えてくれて、私の気持ちを否定するようなことは一切言わない。私の気持ちをそのまま受け止めてくれるのだ。
『そうだな。もちろん、グレースが決めることだ。ところで、そこに突っ立ってるデクの棒王子にお母さんがどこにいるか聞いてくれるか?』
(デクの棒は言い過ぎよ。ちょっと待ってね)
「殿下、お母様はどちらですか?」
本当にデクの棒のように固まっているエドワードを見て、私はクスッと笑ってしまった。
「あ、ああ、いつものところだと思う。中庭を突っ切った本殿にいると思う」
エドワードは、怒ったり、笑ったり大変な女だと思っただろう。でも、これが本当の私なのだ。
『一直線に歩いて行っていい。障害物は俺が排除する。王子、グレース、マークの順で歩いてくれ』
私はエドワードとマークに伝言し、エドワードとマークに挟まれる形で寝殿の中庭を進んだ。
(ねえ、誰も出てこないよ)
『妖精たちに誰も外に出させないよう命令した。男はいないようだな』
(そんなことが出来るの!?)
『まあな。奴らも自分の保護対象を守りたいから必死だよ。俺と戦ったら殺されるからな』
私たちは誰にも会うことなく本殿に入った。エドワードは不思議そうにしている。
エドワードの母は室内で一人で刺繍をしていた。
「あら? エドワード、どなたかお連れしたの? 侍女が見当たらないのよ。どうしたのかしら?」
「お母様、リチャードが死にました。すぐに逃げましょう」
「え? そうなの? あ、あなたはグレース!?」
「おばさま、ご無沙汰しております。さあ、すぐに逃げましょう」
リチャードの母は何が起きているかを察したようだ。すぐにエドワードの横まで来た。
『撤退だ』
「撤退よっ」
中庭に出ると、門から兵士が入って来るところだった。
私たちはすぐにシルバの重力魔法で上昇を開始した。弓兵が弓矢を構えようとしたが、なぜか弦が切れてしまい、弓を射ることができないようだ。
(シルバって、ほとんど神様ね!)
『よせよ、奴らほど性格悪くないぞ』
私たちは無事にエドワードの母を寝殿から脱出させることに成功した。
マークがさっきから邪魔で、もう帰っていいと言っているのだが、私たちと離れると殺されると言って、まとわりついて来る。はっきり言って鬱陶しい。秘密を知りすぎて殺されたいのか、と脅してもついてくる。もう面倒だから放置することにした。
『未婚の女は妖精たちに守らせるが、他は殺していいのか?』
シルバが確認して来たので、そのままの言葉をエドワードに伝える。
「殿下、未婚の女性以外は殺していいか、とシルバが聞いています。未婚の女性は妖精たちに守らせるとも言ってます」
この伝言がどうにも煩わしい。シルバに聞いてみた。
(あなたは他の人には念話できないの?)
『出来るが、出来ないことにしておかないとまずいぞ』
(……確かにその通りね)
意思疎通が出来ると知ったら、シルバを直接利用したいと思う人間が増え、私は邪魔になるだろう。
「母は殺さないで欲しい。それ以外は問題ない」
エドワードが当たり前のことを言った。
(この人は何を言っているのかしら。お母様を殺さないのは、あたり前じゃない。誰を助けるために、乗り込むと思ってるのよ!)
『まあ、そう言ってやるなよ。未婚じゃないから殺しました、ってなったらまずいだろ。念のためだよ、きっと。それより、お前がすごい顔してるんで、イケメンがビビってるぞ』
エドワードは確かにビビっていた。
「念のために言ったのだ。確認しないで惨事になったら大変だろう。だから、そんな怖い顔をしないで欲しい」
私は深呼吸した。戦いを前に少し神経がたかぶってしまっていたようだ。
「失礼しました。では、お母様と未婚の女性以外には手加減しません」
『よし、まずは門番からだな』
門番が二人、門の前に立っている。どうするのかと見ていたが、何も起きない。
『よし、行くぞ』
(何したの?)
『念話で催眠術ってのをかけた。誰かが通っても、誰も通っていないと思うように暗示をかけたんだ。門番を倒すのは侵入しましたって、宣伝しているようなものだからな』
(すごいね、シルバ)
シルバが褒められて照れているのが何となく分かる。
「殿下、行きますよ」
私はエドワードに声をかけた。
「え? 作戦とか事前の打ち合わせはしないのか?」
エドワードがいい質問をしてくれた。
「ええ、作戦を立てるほどの相手ではないですから」
以前シルバに言われた台詞だ。誰かに言ってみたいと思っていたのだ。
私はスタスタと門に歩いて行き、門番に咎められることもなく、門を通過した。おっかなびっくりでマーク、そして、エドワードも通過する。
「あれも魔法なのか?」
エドワードは門番を気味悪そうに見て、私に尋ねた。
「殿下、毎回説明が必要ですか?」
「いや、いい、すまん。邪魔しないようにする」
『グレース、何だかカリカリしてないか? 俺がついているから、安心して、リラックスしていろよ。イケメン王子にお母さんがどこか聞いてみてくれ』
「王子はイケメンなんかじゃないわよ! シルバの方が100倍格好いいわよ! 私と王子をくっつけようとしないでよっ」
私はこんなときなのに、大声を出してしまった。エドワードとマークがびっくりしている。
さきほどから私が不機嫌なのは、戦いの緊張のためではないことが、ようやく私自身にも分かった。私はシルバがエドワードと私のことを全く嫉妬していないことに腹を立てていたのだ。
『グレース、悪かった。グレースには王妃が似合ってるって、勝手に思ってしまった。こんな細かいA型野郎にお前は勿体無いよ。すまん、完全に俺が間違っていた」
(A型野郎ってのはよくわからないけど、私の伴侶は私が決めるんだからね)
私は少し落ち着いてきた。今回のように私が訳の分からない癇癪を起こしても、シルバは絶対に自己弁護しない。まず最初に私の気持ちを考えてくれて、私の気持ちを否定するようなことは一切言わない。私の気持ちをそのまま受け止めてくれるのだ。
『そうだな。もちろん、グレースが決めることだ。ところで、そこに突っ立ってるデクの棒王子にお母さんがどこにいるか聞いてくれるか?』
(デクの棒は言い過ぎよ。ちょっと待ってね)
「殿下、お母様はどちらですか?」
本当にデクの棒のように固まっているエドワードを見て、私はクスッと笑ってしまった。
「あ、ああ、いつものところだと思う。中庭を突っ切った本殿にいると思う」
エドワードは、怒ったり、笑ったり大変な女だと思っただろう。でも、これが本当の私なのだ。
『一直線に歩いて行っていい。障害物は俺が排除する。王子、グレース、マークの順で歩いてくれ』
私はエドワードとマークに伝言し、エドワードとマークに挟まれる形で寝殿の中庭を進んだ。
(ねえ、誰も出てこないよ)
『妖精たちに誰も外に出させないよう命令した。男はいないようだな』
(そんなことが出来るの!?)
『まあな。奴らも自分の保護対象を守りたいから必死だよ。俺と戦ったら殺されるからな』
私たちは誰にも会うことなく本殿に入った。エドワードは不思議そうにしている。
エドワードの母は室内で一人で刺繍をしていた。
「あら? エドワード、どなたかお連れしたの? 侍女が見当たらないのよ。どうしたのかしら?」
「お母様、リチャードが死にました。すぐに逃げましょう」
「え? そうなの? あ、あなたはグレース!?」
「おばさま、ご無沙汰しております。さあ、すぐに逃げましょう」
リチャードの母は何が起きているかを察したようだ。すぐにエドワードの横まで来た。
『撤退だ』
「撤退よっ」
中庭に出ると、門から兵士が入って来るところだった。
私たちはすぐにシルバの重力魔法で上昇を開始した。弓兵が弓矢を構えようとしたが、なぜか弦が切れてしまい、弓を射ることができないようだ。
(シルバって、ほとんど神様ね!)
『よせよ、奴らほど性格悪くないぞ』
私たちは無事にエドワードの母を寝殿から脱出させることに成功した。
20
あなたにおすすめの小説
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる