13 / 13
最終話
しおりを挟む
私は王妃という職業に就職したのだと考えた。非常に華やかでやり甲斐のある仕事で、私に合っていると思う。王子は上司だ。上司と部下であって、夫婦ではないから、当然エッチもなしだ。
殿下からは、好きな男ができたら囲っていいと言われている。遠慮なく囲うつもりだ。
だが、一つ気になることがあった。
「ねえ、アリサ、あなたの想い人は諦めたの?」
「諦めていないわよ」
「え? 不倫はダメよ」
「不倫にはならないのよ」
「どういう意味? ……! まさか、あなたっ」
「そう、私の好きな人はあなたなのよ。一緒になれて、本当に嬉しいわ」
そうだったのか……
「いつから?」
「学園に入る少し前かな。王都の仕立て屋であなたを見かけたの。こんなに綺麗な人がいるんだって見惚れたのよ。そうしたら、チャラそうな男があなたに話しかけていて、ああ、馬鹿な男に騙されちゃってるな、って思ったの」
確かにユリウスと二人で制服を仕立てに行ったことがあった。
「でも、その時はそれで終わりだったの。まさか同じクラスで隣になるとは思わなかったわ。運命を感じたの。それでユリウスの本性を知らせたくて、彼を誘惑したのよ」
「そうだったの!?」
「クレア、もう分かったと思うけど、あの男は最低だから。でも、なかなかクレアが目を覚ましてくれなくて、一年以上もアホの相手をする羽目になって、ほとほと疲れたわよ」
「でも、ユリウスだけでなく、他にもたくさん男を引っ張っていたわよね?」
「あなたに行かないように網張って防いでたのよ。ユリウスとはすぐに婚約破棄になると思っていたのに、長期間防ぐ羽目になって本当に大変だったわ。金山の噂まで流してね。でも、そんなに努力している私を殺しただなんて聞いたときは、立ち直れないほどショックだったわ」
「タイムリープは知っていたの?」
「そんな超常現象があるなんて、びっくりしたわよ。また殺されるかもって、しばらくビクビクしていたのよ。でも、神様が味方してくれていると思って、勇気も出た。もう少し頑張ろうって。婚約解消したって聞いて、俄然やる気出たしね」
「そういえば、あなたの寮に行ったとき、すぐに出て来たけど、朝の弱いあなたには珍しいって、後から思ったんだけど」
「あなたが来ているって寮長に言われて飛び起きたのよ。すごく嬉しかった。あの頃私はかなり絶望していて、もうこのまま死んじゃおうかな、って思ってたくらいなのよ。多分、私、自殺したんじゃない? あの日が私の人生の転機だったの」
自殺ってのは考えなかった。
「フィリップ様は好きじゃないの?」
「何ていうか、頼れる人。好きだと思うよ。クレアのことは大好き。でも、せまったりしないから安心してね。ソウルメイトって感じの好きなんだ」
「私も前ほど嫌いではないかな」
「よかった。また殺されたら大変だから」
「殺しても死なないから大丈夫よ」
「そうね。これからもよろしくね」
「こちらこそ」
殿下からは、好きな男ができたら囲っていいと言われている。遠慮なく囲うつもりだ。
だが、一つ気になることがあった。
「ねえ、アリサ、あなたの想い人は諦めたの?」
「諦めていないわよ」
「え? 不倫はダメよ」
「不倫にはならないのよ」
「どういう意味? ……! まさか、あなたっ」
「そう、私の好きな人はあなたなのよ。一緒になれて、本当に嬉しいわ」
そうだったのか……
「いつから?」
「学園に入る少し前かな。王都の仕立て屋であなたを見かけたの。こんなに綺麗な人がいるんだって見惚れたのよ。そうしたら、チャラそうな男があなたに話しかけていて、ああ、馬鹿な男に騙されちゃってるな、って思ったの」
確かにユリウスと二人で制服を仕立てに行ったことがあった。
「でも、その時はそれで終わりだったの。まさか同じクラスで隣になるとは思わなかったわ。運命を感じたの。それでユリウスの本性を知らせたくて、彼を誘惑したのよ」
「そうだったの!?」
「クレア、もう分かったと思うけど、あの男は最低だから。でも、なかなかクレアが目を覚ましてくれなくて、一年以上もアホの相手をする羽目になって、ほとほと疲れたわよ」
「でも、ユリウスだけでなく、他にもたくさん男を引っ張っていたわよね?」
「あなたに行かないように網張って防いでたのよ。ユリウスとはすぐに婚約破棄になると思っていたのに、長期間防ぐ羽目になって本当に大変だったわ。金山の噂まで流してね。でも、そんなに努力している私を殺しただなんて聞いたときは、立ち直れないほどショックだったわ」
「タイムリープは知っていたの?」
「そんな超常現象があるなんて、びっくりしたわよ。また殺されるかもって、しばらくビクビクしていたのよ。でも、神様が味方してくれていると思って、勇気も出た。もう少し頑張ろうって。婚約解消したって聞いて、俄然やる気出たしね」
「そういえば、あなたの寮に行ったとき、すぐに出て来たけど、朝の弱いあなたには珍しいって、後から思ったんだけど」
「あなたが来ているって寮長に言われて飛び起きたのよ。すごく嬉しかった。あの頃私はかなり絶望していて、もうこのまま死んじゃおうかな、って思ってたくらいなのよ。多分、私、自殺したんじゃない? あの日が私の人生の転機だったの」
自殺ってのは考えなかった。
「フィリップ様は好きじゃないの?」
「何ていうか、頼れる人。好きだと思うよ。クレアのことは大好き。でも、せまったりしないから安心してね。ソウルメイトって感じの好きなんだ」
「私も前ほど嫌いではないかな」
「よかった。また殺されたら大変だから」
「殺しても死なないから大丈夫よ」
「そうね。これからもよろしくね」
「こちらこそ」
15
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?
あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。
理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。
レイアは妹への処罰を伝える。
「あなたも婚約解消しなさい」
なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた
たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。
女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。
そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。
夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。
だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……?
※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません……
※他サイト様にも掲載始めました!
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる