奴隷の少女を最終的に妻に迎えたいので買ってきた

たかはし

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貴族のミゲルと奴隷のヒサコ

花で求婚

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「………」

「………」

私が顔をそらしてしまったことで沈黙が続きます。




しかしその、お互いに黙っているから小さな音さえも拾ってしまい……ミゲルさまの鼻息が………私に当たっていることに……気付いて、しまいました…………っ
ミゲルさまとて人ですから呼吸をします。吸って吐いて吸って。だから、だから………ふ、普通のことです……っ
なのに……何故でしょうか…っす、すごく、恥ずか、しい………っ

それに耐えきれず私は誤魔化すように顔をそらしたままミゲルさまに問いました。



「えっと、あの……その、ですね…………答えを出す前に一つ、聞きたいのですが……どうして私に毎日花を贈ってくださる、のでしょうか……?」

少し声が震えているような気がします。気付かれないといいのですが………



「………………。その、俺がヒサコに花を贈っているのは……………お前の笑顔が見たいから、だと思う。初めてお前に贈った時、今までで一番の笑顔を見せてくれただろう?多分俺は、あれが見たいんだと、思う……」

「いや、それとも前回はそうやって笑ってくれたという実績があるから花を送っていれば……まだあの頃のお前と繋がっていられるんじゃないかと、そう思っていたのかもしれない………」

私の突然の問いにミゲルさまは少し考えてからお答えになりました。その時少し体に力を込めたのか触れている胸が張った気がします。
しかしそんなことよりも……そんなことよりも、です……っミゲルさま…………!

ぶわりと熱が再燃したように体中が熱くなり耳なんて先ほどの比ではありません……っ本当にこの方は…………!!



「っ!………………な、何も知らない私だとしても……好きでもない方から花を贈られて気分が良くなることはありません……よ?……………わ、私も……っ私もミゲルさまと同じように、あの時のミゲルさまと繋がっていられると思い……花を受け取っていたのかも、しれません………」

真っ赤になりながら、なんとか言葉を絞り出しました。顔から火が出そうです……っ私、こんなことを言ってしまうなんて………っ
でも、それでも……これもまたすとんと、心にきれいに収まった気がします……ミゲルさまと話すと私の中身がわかっていく。理解できていく。
とても不思議です……。話せば話すほど霧が晴れていくように、形が見えてくるのです。





「………。あのっ」
「………。あのさっ」

意を決して私から話しかけようとしたら丁度良くタイミングがあってしまいました。こ、こんな時に………っ
出鼻をくじかれた私はミゲルさまに発言権を譲り、わからない程度に息を吐きました。


「お、お先にどうぞ……」

「あ、ああ、すまん。それじゃあ先に言わせてもらうが………。その、またお前に花を送っても、いいか?」

ミゲルさまはまた真剣なまなざしで私を射抜き、目線をそらさぬままそう告げられました。
なんとなくは、予想をしていましたが………それを言葉にされ己の耳で聞けるという幸福は、初めてミゲルさまに頭を撫でられた時に比類します。

思わず目を見開き、それから目を細めました。
ミゲルさまはとても真剣に私の答えを待っていらっしゃいますから、私はまた口角を上げ「ええ」とお答えしました。


そうお答えした時のミゲルさまのお顔といったら……!
破顔しているのに瞳を潤ませて……まるで泣きそうではありませんか…っ

そう思ったが早いか、私の手はミゲルさまのお顔を包むように触れていました。それに驚いたのかミゲルさまも目を落すかのように見開き、それから今度はへにゃりと笑って私の手に己の手を重ねられました。



「その花をまた、お前の耳にかけてもいいか……?」


「ええ。……よろこんで。こちらからそうお願いしようと、思っていました」


「ん。そうか……。ありがとう」



今ではもうはっきりと私の心の形がわかります。
精霊さまのおっしゃっていた『私は答えを知っている』とはこういうこと、だったのですね……




しかし安心したのもつかの間。
ミゲルさまは私の手に重ねていた手を離すと左手は腰に、右手はするりと後頭部に添えて私をぎゅうと引き寄せてしまいました……っ
ちちち、近いっ近いですっ!!さっきよりも、もっともっと私たちの距離は近くなりもう少しで触れてしまいそう………


「あっえっ?!き、キスはだめですっそれは許してません…っ」

「いいじゃないか。花は良くてキスは駄目か?」

「だ、だめですっキスは、大切なものですから……っ!!」


ぐぐぐとミゲルさまの肩の近くに手を置いて体を離そうとしますがやはり男性の力には敵いません。
唇同士が近づくのを止められないのなら……唇を隠してしまえば、いい……!


「ふ、ふふっははははっ!それでこそ俺のヒサコだ!だからこそ愛しい俺の女だっ!」

私のその反応にミゲルさまは一度驚いてから笑い、そして唇を隠す私の手にそのまま顔を近づけて、軽くちゅと音がするキスをされました……

「えっえ?!み、ミゲルさま?!!……もうっ!」

どうして、恥ずかしげもなくそんなことができるんでしょうか……っ私は何にしても翻弄されるばかりです。





「何かの本で読んだのだがどこかの国は花で求婚するらしい。男が花を渡し、女がそれ受け取れば求婚を受け入れたことになるんだとか………ヒサコの国ではそういう習慣があったりしなかったのか?ん?どうだ?あったのか?なかったのか?」


なんだかもう何をしてもミゲルさまには敵わないのだと思い、私の全てを預けるように体の力を抜き、ミゲルさまに寄りかかりました。

ミゲルさまは意地悪です。求婚だとかそういった言葉を出して私の反応を見て楽しもうと思っているのです……っそれでも、そう分かっていても私には赤くなってしまった顔を小さな手で隠すことしかできませんでした。

きっとミゲルさまはわかっているのだと思います。私の、この行動の意味を………



「さあ教えてくれ。お前の育った国のことを……そしてお前自身のことを」








貴族のミゲルと奴隷のヒサコ:終わり

-----------------
ここまで読んでいただきありがとうございます!
一度ミゲルとヒサコの話はここで終了とさせていただき、次からは新しい男と奴隷の少女の話になります。
他のが落ち着いたら結婚とかその後の話を蛇足としてつける、かも・・・?

最初はもっと軽い感じですきー!ブチュー!そして二人は結婚し幸せな~みたな話にする予定だったのですが・・・どうしてこうなった・・・っ
次こそはもうちょっとすっきりとした話が書けたらと思います。

そしてお気に入り200超えありがとうございます!!!
20もお気に入りしてもらえれば御の字だと思っていたのですがまさかその10倍もお気に入りしていただけて本当にうれしいです。ありがとうございますっ
ミゲルとヒサコ以外にも男と奴隷少女の話を書いていこうと思うのでもうしばらく付き合っていただけたらと思います。
繰り返しになりますが本当にありがとうございました!!!
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