上 下
248 / 316
12.共和国・人探し

二百四十五話 探し人・2人の妹

しおりを挟む
245話 混濁の記憶

「さて先ずは・・・名前は?」
「・・・名前も知らずに人を攫ってるっての?どうなってるのよあんた」
「それは悪かったな、ではそうだな・・・何をしていた?盗賊ではあるまい?」
「さぁ何でしょうね、一応シスターで戦士としてやってたけど」
「ふむ?では法国でどんな命令を受けてここに居た?」
「そこは知ってるのね・・・別に大したことじゃないわ、何でか知らないけど共和国
に行ってそこで活動している仲間を支援しろとか言われてね」
「それに何故と言いたいが答える気はないかな」
「知らないのよ、いつもは隣に置いて所構わずセクハラかますか舐めまわす様に
見て来るあのクソが急にワタシを遠ざけたんだもの・・・」
「そうか、その命令は何時頃だ?」
「あーそうね・・・もう1年くらい経つかしら?」
「では名前は?」
「イレジア・・・姓は無いわよ、教会育ちだし」
「教会?」
「そう、法国と教国はズグルメーってすごい神様を信仰しているの」
「あの像の奴だな」
「まぁ・・・間違ってはないのかしら?とは言えあれが神様の本当の姿かどうかは
知らない、知っているのはあのクソ法王だけって話」
「法王に対して口が悪いが・・・本当に慕っているのか?」
「3・4か月くらい前からなんか頭がスッキリし出したのよね・・・で2日前に何か
押さえられる感覚が無くなって今までのが悪夢に思えるようになったって訳」
「成程、やはりそこで洗脳が解けたんだな」
「洗脳?んな訳無いでしょ、そんなもの掛けられた覚えなんかないし」
「いや残念ながら法国の人間は全員洗脳されていたし教国も支配者層はほぼ全員
洗脳されていただろう・・・他の国の者も犠牲になっている」
「そんなの出来るのは神様位でしょ?法王にだって出来る訳が無い・・・でもアレは
可笑しい所はあったけど洗脳されているような感じは無かったわよ?今思えば
信仰しているそぶりすら見せてなかったし」
「それはそうだ、洗脳していたのは法王だからな」
「は?」
「簡単に言えば邪神ズグルメーに力を貰って好き勝手していた、と言うだけだ」
「いやそんな訳・・・ある訳無い、偉大なる神なのよ!?」
「今偉大なる神と言うのは六神の事だけだろう」
「六神信仰なんてこっちじゃやってない、信仰するのはズグルメー様だけよ!」
「とっととくだらん邪神信仰なんぞ捨てて普通に六神信仰でもしていろ、そんな
思考になっている次点で洗脳されたと言っているようなものだ」
「あんた達帝国側の奴が信仰してるってだけでしょ!押し付けるな!」
やはり洗脳されている時の記憶はあるしその思考や思想は残っているようだな・・・
「私は信仰等していない・・・それより本当の名前を教えてくれないか?」
「は?え?さっき言ったでしょ!それよりワタシを!神を!馬鹿にしてるの!?」
「お前の本来の姓はガーディンハイトじゃなかったか?」
「ガーディンハイト?・・・それってたしか帝国の皇族の名前じゃなかった?」
「違ったか?」
「違うに決まってんでしょ、ワタシ普通に法国育ちだしありえないでしょ」
「ふむ・・・彼女の名前は?」
ボソリと彼女には聞こえないようにしてどこか険しい表情をしている2人に聞く
「クマンティナ、育てた者の名を継いで姓はカサンドゥーバを名乗っている筈」
「よし・・・カサンドゥーバ、この名前に聞き覚えは」
「カサン・・・ドゥーバ?確か何処かで聞いた事はある気がするけど・・・」
うーむ変化している訳でも無いしクマンティナとやら本人で間違いはない筈だ
眼はバーゼスクライトと同じだし、代々の継承者の眼だから皇族の血族以外には
存在しない眼とのことだ・・・人格は判らないが記憶に何かしらの影響が出ているか
「では簡単な質問をしよう、幼い頃法国ではどう過ごしていた?」
「えっ?それは普通よ、他の子と遊んだり家事やシスターを手伝ったり」
「ふむ、友や親しき者・・・どんな者達だった?名前は?顔は?思い出は?」
「え?えっと・・・名前はジェフ、フレジィ、ゼール、ミレシア、覚えてるわ・・・
顔は・・・どうだったっけ?思い出せない・・・思い出?特に何も・・・出て来ない」
頭を抱えるような蹲った体勢となりうんうん唸っているため放置して2人と話す
「これは記憶障害か?」
「そうだな・・・記憶の差し込みや変更による影響と思われる、在りもしない過去を
入れても記憶に残るのはおぼろげな物だけ、今の自分が偽物の過去に裏切られる」
「それに耐えきれず自我が崩壊するか現実と記憶の間で狂うか、自己を取り戻すか
・・・何人か見てきたが戻る者は少ない、が干渉次第で確立を上げる事が出来る」
「そうなるとどっちにしろ城まで運べって事になるのか?」
「そうだな、それが1番手っ取り早いだろうが可能性としてはもう1つ」
「関連する存在だ、王冠を見せるなら記憶で混乱している今が丁度いいだろう」
2人に促されて見せる事にした、家の後ろに隠れ2人を降ろし亜空間倉庫を開いて
王冠を取り出す・・・近づけた手に引き寄せられたかのように亜空間倉庫から一部を
突き出すそれを引き抜いた、王冠を顔を伏せている彼女の前に出して見せる
「これを見るといい、お前に関係している筈のモノだ」
引き抜く時いつもとは違う感覚だったな・・・なんて思考と共に言った言葉に反応し
顔を上げ睨みつけるような目を向けた、途端に目を大きく開いて口が半開きになる
視線は大きく震える様にぶれ続け定まらず顎も上下し、声にならない声をあげてい
るのか呻くように零れた掠れた様な小さな声が聞こえる、そして拘束されたまま腕
を激しく動かしている・・・しかし逃げ出そうとしている訳では無さそうだ
「アァ・・・あ・・・城・・・じぃとおばば、ワタシっはワタシの記憶?これはまだ小さい頃
教会に居たはずなのに・・・どうして、うぅ何コレ・・・頭がグラグラす・・・」
途中で静まると俯き倒れそうになったため寝かせる、記憶を思い出しているのか?
「暫く待っているしかないか、とは言えこのままにもしておけない」
何処か休める場所を用意しなくては、もう1人も出来れば確保しておきたいからな
唸っている妹と気絶しているもう1人を担ぎ上げる、どうせ表通りには行けないし
誰も使って無さそうな家を探して使う事にした、元々この付近は人が居ない・・・
多分こいつらが活動拠点にしているから、人払いしたのかただ誰も近づかないのか
とは言え表通りに近い場所はまだ人が居るし、さっきの拠点近くで探すとしよう
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪徳貴族になろうとしたが

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:230

錬金魔導師、魔法少女を奴隷調教する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:127pt お気に入り:371

邪神様にお誘いされたので、異世界で好き勝手します

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:113

異世界召喚されて神様貴族生活

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:510

異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:899

奴隷性活はじめます。R18

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:717

処理中です...