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16. 闘争と死の輪唱

三百九話 闘いの中で修羅は嗤う

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309話 闘いの中で揺れる火

首を狙っているそれを何とか直撃は避けれたものの、左肩に掠らせ皮膚を抉られな
がら右手を奴の左腹部辺りへと打ち付ける、威力は余りなかったが押しのける事に
成功し、剣ならば1歩は踏み込む必要がある位の距離を取る事が出来た
「む?その黒いモノは・・・血では無いな?アンデッドでも無いか、おもしろい」
剣の先端を向けられその直線上から離れる様に少し横へ動く、その手が赤く光った
かと思えば目の前に奴の顔が現れた、瞬時に2歩の距離を詰めて来たと言う事だ・・・
今までの速度の比では無い、頭部に何か触れた感触を感じ直ぐに顔が下に向けられ
勢い良く目の前に広がっていた床へと近付いて行き、触れられてから1秒も経たず
眼前にまで迫っていた床へ顔面から叩きつけられる、そして叩きつけられた反動で
体が跳ね上がったと同時に背中に突き刺され、背中から貫かれ床まで縫い止められ
てしまった・・・これだけなら動けなくはないが、何時の間にか両腕も貫かれていた
ようで肩と手を一直線に貫かれたのか穴が開いていた、そしてその影響か腕に力が
入らなくなっている、これくらいの損傷ならここまで腕の力が無くなる事は無い筈
だが?脱力系の弱体状態異常でも受けたのか・・・腕や脚に攻撃しその部位の筋力を
短時間だが弱らせる技があったはずだ、これだけで奴がその技を使えるのかは判ら
ないが、似たような技を使えるのか固有能力で同じ事が出来るのかもしれない・・・
もしかするとその技を持っている剣士を素材にして誕生していたりするのか?考え
ても仕方ないがそれもありえそうだな、しかしこれはどうしたものか
「む?弱っている気配が無い、やはり生者ではなかったか、しかし異様な奴だな」
剣が抜かれたかと思えば2回連続で突かれ胴体の穴が3つに増えた、やはりこっちに
脱力の効果は無いようだな、ダメージのせいで力が幾らか入り難くなってはいるが
あの異様に力の抜ける感覚は無い、とは言えまだ腕力は回復していないが・・・
「ふむ?この玩具で我が身を討つつもりだったのか?残念ながらこの身は遠隔攻撃
に強くてね、あの変形は・・・残念ながら出来そうに無いな、では君に返そう・・・」
手を開き引き金に掛かっている指を起点に支えられた銃が揺れながら差し出される
「と返してやってもいいのだが、我等の闘いにはこんな物必要あるまい?そうだな
決着が着くまではおあずけだ、何より君もそこまで慣れていないようだしな」
そのまま決闘の檻の外へと放り出されてしまった、すると骨と肉が床よりせりだし
床にぶつかるより速く銃を呑み込んだ、まるで小さな檻の様な形状になっている
「あれを勝者の報酬に追加しようではないか、さぁ遊んでいないでやる気を出せ」
まだトドメを刺す気が無いのか追撃が来る様子が無い、いつでも殺れるだろうに
「フハハッ!何故トドメを刺さないか気になっているのか?」
思考が読まれた・・・訳では無いのだろう、確かに疑問だったが顔に出ていたか?
「決まっている、その意味が無いからだ、不死を殺す力など持っていないのでな
それにもし貴様が不死でなくともまだ殺す気は無いぞ」
その表情の出ない骨の顔にまた笑みが浮かんだように見えた
「ククッ、お喋りは苦手か?簡単だ闘いに未だ満足していない、もっと楽しまねば
勿体無いではないか、我は殺したいのでは無い闘いたいのだ」
闘争を求めるが故に則殺しはしないと、ここに来る者が少なく戦える機会が少ない
からそうしているのだとすると、あの朽ちていた死体達は相応に時間が経っていた
のだろうか?修復にはまだ時間が掛かるから今の状態でなんとかしなければ・・・
「そら立て!この程度で終わりはしまい、弱っている振りはよせ」
振りでは無いんだが・・・腰のポーチに入れてある回復薬はまだ壊れて無いようだから
今の内に何とか使う事が出来れば幾らか治るか?まずは脱力の方を何とかしたいと
ころだな、奴の口ぶりからすると意図的にやったのか、それともこっちが効かない
とでも思っているのか判断に困る、確か筋肉に影響して弱らせるタイプと力と言う
概念そのものに干渉して弱めるのがあるんだな、どこからともなく知識が湧き出て
いる・・・まぁだからと言ってもこの状況はどうにもならない、筋力弱体化はしてい
るんだから・・・?いやそうだ待て、これが筋肉に作用する方なら解除出来るの訳だ
自分の認識を人の肉体から泥の集合体へと変える・・・力が入る様になった気がする
幾らか弱体化を弱める事が出来たか?どうやら完全に解ける感じはしないが半分程
戻った様な感覚がある、厄介な事ともありがたい事とも言えそうな事に、2種類の
弱体化がほぼ半々の比率で混じっていたようだ、とは言っても押し合えば確実に力
負けするのは変わらない、この状況から脱する事は出来るだろうが・・・
「そら、続きと行くぞ!」
頭部へ向かって降ろされる突きを逸らして避け、床を押して上半身を逸らしながら
脚を前に出して両脚で押すように蹴り距離を取る
「どうした?距離を取るばかりではないか、もっと打ち合おうぞ」
痺れている様な感覚を振り払うように両腕を振って意識の外に出す
「そうか、無手が苦手か?だと言うのに近接武器を持たぬとは、愚かよな!」
右手の細剣による突き、かと思えば踏み込んでいた左脚が跳ね上がり蹴り上げへと
代わり、その脚を床に降ろすと共に左腕が掌底の構えで突き出される・・・どうやら
奴は格闘戦も慣れているようだ、自分の格闘戦と違って動作もスムーズだし、それ
を左へと避ければ右の細剣による突きが向かって来る、地面を強く踏みしめ急制動
を掛けて反対側に動き、倒れる勢いのままに僅かに浮いた両足を折り曲げ、腕が伸
びてがら空きになった右では無く盾の様に腹部を護っている左腕へ両脚による押し
込む様な蹴りを入れる、今までと違い逃げるためでは無く吹き飛ばすための蹴りだ
最後の突きを本命としたさっきまでのフェイントから始まった一連の格闘だったの
だろう、判り易いが避けようと思えば最後の回避の動きになって本命を受けるハメ
になると言う訳だ・・・とは言え今回のは力が入りきらなかったおかげで途中で動き
を変える事が出来ただけだ、脱力状態になっていなければ右胸部に直撃していた
「むぅ・・・やってくれるではないか、だがいいぞ!闘いとはこうでなくてはな!」
眼孔の奥にある揺らめく目の役割をしているのか不明な、青い火の玉の様なものの
輝きが増し激しく揺らぎ始めた
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