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16. 闘争と死の輪唱

三百十話 修羅の向かい合う相貌

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310話 死への歓喜・殺しの愉悦

奴は骨でしか肉体で呼吸などしている筈がないと言うのに、その口から白く濁った
空気が吐き出されているように見える、その全身にまるで何か空気の層が出来たか
のように僅かに周囲が歪んでいる、それも僅かにだが白んでいる気がする、あれが
闘気とか言う奴か?戦士が纏うものらしいが詳細は知らない・・・と言うか何か意味
があるものなのか不明だ、それにもうずっと不利な状況のまま進んで来ている・・・
が、それでもヘルズエンジェルを相手しているより断然マシだ、いちいち賭けに賭
けて低い可能性を手繰り寄せるような戦いでは無いからだ、まぁとは言え制限も多
いせいもあって強敵ではある、あー?ヘルズエンジェルと言えば・・・いい貰い物が
あったな、そう言えばあれならここでも取り出せるか、腹部から溢れ出る黒い液体
に乗せる様に内より引き寄せ、半分程出て来た所を掴んで引き摺り出す
「むっ?何とも異様な、ふははっ!武器かは判らんが得物があるではないか」
その勢いのまま後輪を胴へと叩き付け1歩下がらせ、その反動を使って逆に回転しな
がら1歩進み、逆方向から同じ様にもう1度その胴へと横殴りを叩き込む、ただ今度
はその反動を受けると同時に2歩下がる、コイツがデカイせいで視認性が悪くなって
いるせいで同じくらいの大きさの相手だと動きを見辛い、剣を突き出しているのを
見るにどうやら反撃されていたようだし下がっていて良かった
「むぅ・・・なんともキッカイな、自動二輪車か?武器ではあるまいに」
ハンドルを捻りブォンブォンと音を鳴らしながら、車輪や後方の筒から黒紫色の炎
を噴出させる・・・色が変わっている、使用者の魔力の影響を受けているのだろうか?
乗ると何となくコイツの使い方が判る、前はそれだけだったが取り込んだからか前
と違い操縦経験も幾らか得ているようでスムーズに動かせる、またハンドルを捻り
マフラーから紫炎を噴出させ瞬時に加速し疾走する、奴の左側を横切り直ぐに軽く
跳び上がって反転し、出来る限り勢いを殺さないスピードを維持したターンをする
体に少々反動があって手が少しブレるがそれだけだ、これで反撃は・・・
「甘いわッ!その程度で意表を突いたつもりかッ!」
振り向きながら突き出す剣を宙に跳び上がって回避する、反撃が来ることは判って
いた・・・確信すらしていた、胸部を狙っていたと思わしき剣が頭上を過ぎ去るのを見
て風を感じながら、宙で逆さになった状態から脚を伸ばしバイクを前方へ押し込み
両腕を引き上げる様にして勢いをつけ、奴の頭上・・・それも後頭部側から振り下ろす
「ぬゥうーん!やるではないか!」
咄嗟に左腕を頭上に伸ばして頭部を庇ったようで、左腕が肘から折れ前腕部が砕け
ながらも他に傷があるように見えない、今ので決まってくれれば良かったんだが・・・
奴が戦士である以上そう簡単にはいかないと言う事か?特段強いと言う訳では無い
が戦闘経験やそれに伴う反応と技術が厄介なところだな、そのせいで長期戦にさせ
られるし1撃で殺りきれない、とは言えそれでもヘルズエンジェルと違ってこっち
にだけ集中してくれている分やり易いのに違いは無い、それだけで大きな違いだ
「乗り物だろうに武器として使うか・・・確かに特異であろうが」
口元が歪み笑みを浮かべている様に見える・・・そんなハズは無いんだろうが、確かに
愉しいと言える感情が湧いている気はしなくもない、回転するホイールが床に触れ
ると僅かに塵を巻き上げ削られた骨の欠片を飛ばす、そこから互いにタイミングを
測る様に見合う、3回目の反動でホイールが浮いた瞬間同時に駆け出し間合いを詰め
る、武器のリーチからすれば奴の方が距離を縮めたいハズでこっちは距離を取ろう
とすると考えているだろう、そのため前に盾の様に構えながら逆にこっちが1歩多く
踏み込む、そうして互いに近付き過ぎた事で武器を振れなくなり間にバイクを挟ん
で接触している距離まで近付く、それでも突きであるためか止まらず剣が突き出し
たのだろう、だがバイクに挟まれ刃は留まりその衝撃を受け引き戻しながら奴の右
脚、丁度見え始めた膝狙いで押し込む様な蹴りを出す、奴が少し引いたせいで膝に
直撃させる事は出来なかったものの、奥へと押し込む事で体勢を崩させ右膝を床に
着けさせる事は出来た、逃がさない様に直ぐにホイールを向けたバイクを押し込ん
で押し倒す、そして止まりかけているホイールの回転速度を上げて上から体重を掛
けながら押し込む、回転するホイールの凹凸が大きくなり小さい刃が連なった形状
になった、そのまま胸部に当たりギャリギャリと触れた場所を削り取っていく
「ぬおォォー?!グォ!やってくれるではないか!」
バイクの胴下部分を両脇から掴んで防いでいる、筋力や体勢からこっちの方が有利
だ、恐らく魔法系を使うタイプではないだろうし遠距離武器も持っていない、脚も
上半分を抑えて動かせないようにしている、この状況から攻撃はされないだろうが
・・・そして両手とも素手となり剣を捨てているな、片手を離して剣を取るか?それと
も体を捩り横に抜けるか?魔法で対処するか・・・コイツなら剣を取るな、体勢を整え
ると思わせるため前へ踏み出しながら一瞬腕から半分程力を抜く、脚を伸ばし踏み
込んだ瞬間予想通り剣へと手を伸ばした、そこへ膝から下を振るう様な蹴りで剣を
蹴り飛ばしそのまま踏み込んだ勢いをバイクを押し込む力に加える、ギャリギャリ
と削る音がより大きく激しくなり削れた骨の粉が飛ぶ
「何と言う力!この重さだけでは無い、力が増している?!」
確かに・・・その自覚は無かったが、いくら有利な体勢だとしても押しのける事くらい
はされると思っていたのに、実際は逸らす事も出来ず防ぐだけで精一杯のようだ・・・
かなり一方的に押し勝っている、奴を脱力状態に出来ている訳じゃない以上、脱力
状態が抜けただけでなくこっちの筋力が増したのに違いないだろう、より強く炎を
噴出させ押し込む勢いを強める、同時にホイールからもより強い炎が溢れ出し奴の
振れている場所を焼き焦がし、熱風を辺りに散らしていく
「クッ!これは負けるか、勝者は決まったようだ!」
同時に奴が力を抜いたのか、対抗していた力が無くなりホイールが奴の胴を高速で
削り1秒も掛らずに両断する、力が抜けたのか死んだのが理由なのか繋がっている
全身の骨が力無く離れたかと思えばバラバラに崩れ出した
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