除隊したいけど同僚♀(達)がなかなか離してくれません

神風型駆逐艦九番艦

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第一話 今日も今日とて出勤日和

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PMCという単語は民間軍事会社の略称、金さえ払ってくれれば基本的に何でもする軍事組織のことである。

普通の軍隊と違うところはまず所属する国家が無いところ、要するにレッドチームにもつくし、ブルーチームにも分け隔て無くつく。

例を挙げると先月まではとある交易ルートを盗賊から守っていたのに、雇用主が変われば今月から盗賊と一緒に襲撃側に回る、なんてこともザラではない。

そしてもうひとつ決定的に違うことが、戦う目的だ。

徴兵を除いて軍隊は国家を、国民を、家族を守るために志願して入り、その身を捧げるのに対してPMCはあくまでも民間の営利団体。

一般の企業のように毎日金の為に汗水垂らして戦う、というより働くのだ。

だから自分はどちらかと言えば戦士や兵士というよりサラリーマンに近いのかもしれない。

知らんけど。

「ああ……一体俺はいつまでここで働かなきゃならんのだ……。まさか定年まで……?」

バババババ!!と機外からのローター音が聞こえてくる中、壁を背に座り込んだカサギはポツリとそう呟いた。

周りを見渡してみればイカついオジンとオバンばっか。

自分もいずれああなってしまうと考えると気分が重くなる。

再び顔を下に向けて項垂れていると、いきなり頭上からこの場に似合わぬ若くて甲高い声が聞こえてきた。

「いつまでここで働くかだって?」

「……おう。」

視線を上げれば全身緑色の耐Gスーツを着こんだ中性的な少女、アキ・ナンブの病んだ笑顔がすぐそこにあった。

言わずもがな、こちらの退社を阻んでくる存在だ。

そんな彼女は眼前に座り込むとこちらの顔をふにふにと触ってくる。

「ふふ、それはもちろん永遠にでしょ?僕とカサギが離れることなんてあり得ないんだから。」

「定年退職すら無いんかい……てかよくこんなうるさい中で俺の呟きを聞き取れたな。」

「当たり前のことじゃん。僕が君の言葉を聞き逃す筈が無いし、例え聞こえなかったとしても僕には読唇術があるから。」

「さ、さいですか……あとは魔法?」

「それもあるかな。普段はあまり使わないけどね。」

「普段は……ね。」

アキはいわゆる魔法使いだ。

火や水、風、土、空気などを発現させた上でそれを操ることに長けており、他にも自身の身体に魔法をかけて身体強化なんて芸当も可能。

だからその秀でた能力を活かして攻撃、防衛、斥候、潜入、暗殺となんでもアリのスーパーソルジャーと化しており、ここの社長も彼女に一目置いている。

で、味方としての彼女はそれはもうとてもとてもスッゴク頼もしいのだが、その素晴らしい能力がこちらに牙を向いたらどうなるか。

お金が目標額まで貯まりきったあの日から1ヶ月、自分が未だにここを辞めることが出来ていない最大の理由がそれである。

少しでも辞職のことを考えれば表情から看破され、夜中に書類を取りに行こうとすれば先回りされ、渋々コピー用紙に書いた退職届を誰かに提出してもらおうとすればまず助けてくれる奴が居ない。

……最後のは単に友達がアキ以外あんまり居ないってだけなんだけど。

まあ兎に角、試せる常套手段は全てダメだった。

逆にアキという人物が如何に凄いか改めて思い知らされてしまった。

こうなればもう諦めるしかないだろう。

『辞職』という形は……な。

「それより、『月光げっこう』の準備は出来てるのか?」

「うん、もちろん!カサギの『鍾馗しょうき』は?」

「この通りだよ。オーケーだ。」

指をさした先にあったのは土下座のポーズで空間に収まっている2機のロボット。

機動甲冑、魔導歩兵、歩行戦車、特別装甲戦闘車両など色々な呼び方があるが、基本的に自分達は上記の4つ目の単語を短縮して『特車』と呼んでいる。

車の要素がどこにあるんだと言いたくなるだろうが、そこは気にしない。

呼びやすいし覚えやすいからこれでいいのだ。

ちなみに大きな爆弾を装備しており、濃緑色で塗装されたずんぐりむっくりの身体が特徴的な機体がカサギの乗る鍾馗。

対照的に灰白色のスラリとした体型が特徴の機体がアキの使う月光だ。

「じゃあ行こっか。もうすぐで降下ポイントだし。」

「おうよ。また後でな、『相棒』。」

「……うんっ!」

相棒という言葉を聞いて、アキの表情が少し嬉しそうなものに変わった。

それを尻目にカサギは自身の乗機である鍾馗へと向かう。

途中、その笑顔が脳裏にチラついて心がチクリと痛んだ。

「……すまん、やっぱり今日までだな。」

そう軽く謝ると操縦席に乗り込み、ハッチを閉めた。








⬛︎

蒸し暑い森の中、とあるマフィアの下っ端はAKS-47を肩に担ぎながら退屈凌ぎに付近を適当に闊歩していた。

しかしそれもすぐに飽きると適当な太い木の幹に背中を預ける。

「マジで歩哨なんて要らねえだろ……こんな熱帯雨林の奥まで来るバカなんて居ねえっての……!」

彼の言う通りこの施設がある場所は陸の孤島。

更には頭上の人工衛星から見つからないように半分地下に埋まっている為、例え偶然見つかったとしてもありふれた小規模な村が顔を出しているのみ。

事実、運営に関わる組織の構成員と運の悪い探検家やフリーの記者を除いてここを発見した者は今までに誰も居ない。

きっとマトリの連中はエアコンの効いた部屋で灰皿を一杯にしながら、さぞかし地団駄を踏んでいることだろう。

こうしている間にも真下にある地下施設では高純度の『小麦粉』が生産され、札束と交換で奴等の国に直送されているのだから。

「あー……金欲しいな……空から降って来ないかなー……なんか価値があるやつ……。」

美味い汁を啜っている幹部達を妬ましく思いながらそう呟くが、青々とした綺麗な空は何ら変わりない。

「はぁ……何言ってんだか……ん?」

自嘲しながらそれからも変わらない青空を眺めていると、少し変化があった。

視界に捉えたのは何か黒い粒のようなもの。

それは徐々に大きくなっていく。

「え……もしかして札束が入ったバックとかっ……!?」

下っ端の言葉は衝撃派の轟音に飲まれて最後まで続かなかった。

空から降ってきたのは大型の円筒形の物体、その名を地中貫通型爆弾という。

不運にもそれに直撃してしまった彼だったが、ある意味先程の願いは叶ったと言えるかもしれない。

何故ならその爆弾は価格数万ドル以上の高価な価値ある物だからだ。

――――――――――――――――――――――

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