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第一章 クリスマスと藁人形
ネオン街と藁人形③
しおりを挟む「佐々木家も権力者と裏で繋がって、なんやいろいろやってたやろ。俺は婿やからそんな沢山は聞いたことないがなあ」
「そう言うても、親父も分家から来たんやろ?」
「本家は、本家や。親戚に知られたらあかんことも、ようさんあるわ。結婚してから保管庫のを数冊読んだだけで頭パンクしそうなった」
さて、と正嗣は藁人形を持ったまま立ち上がった。
「今日はおおきにな、二人とも。これは俺が焚きあげて、内田に連絡しとくわ。桃、今度ゆっくりデートさしたるからな」
「本当?」
ぱっと顔をあげた桃を正嗣は笑って見つめる。
「髪型変えたんやな。風悟の好みやろ、乙女心っちゅうやつよな」
じゃあな、と正嗣は温厚な笑顔のまま、母屋に帰って行った。社務所に残された風悟は、あぐらをかいたまま自分の髪を無造作に掻く。
「あー……なんや親父がいらんこと言うたんか」
風悟の口調を聞き、とたんに桃は不機嫌になる。
「いらんことってなによ。だいたい、好みに合わせたんだからもう少し喜んだらどう」
思わず反撃した桃だが、風悟は心外だという顔だ。
「頼んだわけやないし」
「なにそれ?」
風悟は一度天を仰いでから苦笑した。
「だから、可愛い言うたやんか」
「それだけ?」
「いやもう、俺の桃はなんでも可愛いんやから、どんな格好しててもいちいち気にせんもん」
赤くなって口ごもる桃に、風悟は顔を近づけ、おろしたままの艶やかな黒髪を撫でる。
「そもそもな、どういう仕組みなん。人みたいに格好や髪も変えられるけど、他の人には見えんしなあ」
「私もわからないわよ。それに、格好はずっとこれよ。最初に召還した術者の好みじゃないの?」
「ならやっぱり、佐々木の先祖の好みなんかなあ。惜しいよなあ、人間やったらなあ」
「それ……一番ずるいやつでしょ」
「そやなあ」
スマホが鳴った。母からの、夕飯ができた旨の連絡だ。敷地が広いため佐々木家の伝達は専らスマホである。
「レディー・ガガね」
「覚えたな。そうや、有名な曲や」
風悟は、今から行く、と母親へ簡単に返事をして立ち上がった。
母屋での家族団欒の食事に、桃は参加しない。いずれにしろ人間の食事は不要だからだ。風悟は桃の頭を再度撫で、社務所をあとにした。
桃は意識を飛ばす。敷地内の宝物館内にあるはずの依り代は、シンクロはしても桃自身でさえ詳しい在処はわからない。うかつなことをされないよう、厳重に仕舞ってあると正嗣が言っていたことがあるのを、桃は思い出した。
「まーちゃんたら、焼くなんて縁起でもないこと言うんだから」
ふと、桃は藁人形のことを考えた。人形は焼いたら灰になり消滅するだろう。だが正太郎の想いは消えない。
「あの店に澱んでいた空気は、正太郎さんのものかしら? それにしてはちょっと濃すぎなのよねえ」
正嗣がどう収めるつもりかはわからないが、怨恨などとは異なり、色恋沙汰が一筋縄ではいかないのは、桃も重々承知だ。
しばし桃が考えていると、ふいっと目の前を小さな悪鬼が横切った。ほとんど力を持たないそれを桃は軽く両手のひらで包み、そっと開く。
すると、そこから現れたのは可憐な桃の花である。
「来世では、悪さをしないようにね」
花はそのまま風に乗り、やがて消えた。
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