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第一章 クリスマスと藁人形
人魚姫①
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この神社の境内には、クリスマスになるとサンタが現れる。厳密にいえばサンタの格好をしたおじさんなわけだが、お菓子を配ってくれる相手なら、中の人が誰だろうと子供たちには関係ない。
「中村さん、ありがとう!」
「中村のおじさん、私にもください」
「中村さん、だんだん衣装きつくなってない?」
子供のみならず、手伝いの奥様方も身バレなぞ気遣いせずに名前で呼ぶ。
しかし、このおおざっぱなシステムにより、普段から中村は子供に慕われているのだから良いのだろう。楽しそうな子供らを眺め、本人も満足そうだ。
「はいはい、皆そろそろ座れー」
映画上映は十五時からだ。十分前になったので、風悟が廊下を走り回る子供たちへ呼び掛ける。会館はそれなりの広さだが、プロジェクターを設置して画面からの距離を考慮すると、ぎりぎりだ。
「意外と集まりますよね」
「子供はとくに、誰かと時間を共有するのが好きだからな。ええ思い出や」
中村サンタは目を細め、急に真顔になり風悟を見る。
「ところで、風悟くん。今日はデートやなかったか?」
「……あ、ええと」
風悟の視線が不自然に泳ぐ。
「ここは人手が足りてるし、別に出掛けて構わんよ?」
「……はい。いや、別に」
「振られたんか」
「……」
中村は同情を隠さずに深く息を吐くと、手元の白いサンタ袋から駄菓子をくれた。
「ありがとうございます……」
風悟も小さい頃は、駄菓子をつまみながら映画を見るというのがクリスマスの夕方定番イベントだ。思春期からは、友人とカラオケなどで騒いで過ごしていたが、さすがに今から友人を誘うにもつかまらないだろうし、なにより切ない。
「じゃ、明かり落とすからな」
中村さんが、会館の事務所へ向かった。
風悟は大人しく体育座りで並んでいる子供らから離れ、座敷の一番後ろ、壁にもたれてあぐらをかく。
室内が暗くなり、風悟が、はあ、と溜め息をついたのと同時に鼻先を風がかすめた。桃だ。
「振られた?」
隣にちょこんと座る。
「わかっとるくせに」
「見てたからね」
それでも、いくらか同情するような口調だ。
「……なんかなあ。スマホ壊れて連絡できんかったからかと思ってたが……彼女だって帰省するんやし、どっちにしても正月は一緒に過ごせないのに」
「将来を考えたら、今のうちに別れて違う男をつかまえたほうが良いって思ったわけね」
クリスマスは彼女のアパートで、内田に貰ったシャンパンを……といざ連絡したところ、彼女からは歯切れの悪い返事しか貰えず、根気よく理由を聞いたら思ってもいない答えが返ってきたのだ。
「神社の跡取りと結婚したら、正月ゆっくり休めなくなるのは当たり前やんか……しかも今からそんな理由で早々に見切らんでも」
「いま住んでるこの辺りで卒業後も暮らしたいけど、地域密着型すぎるのも嫌なのね」
「俺は離れられんからなあ」
「中村さん、ありがとう!」
「中村のおじさん、私にもください」
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中村サンタは目を細め、急に真顔になり風悟を見る。
「ところで、風悟くん。今日はデートやなかったか?」
「……あ、ええと」
風悟の視線が不自然に泳ぐ。
「ここは人手が足りてるし、別に出掛けて構わんよ?」
「……はい。いや、別に」
「振られたんか」
「……」
中村は同情を隠さずに深く息を吐くと、手元の白いサンタ袋から駄菓子をくれた。
「ありがとうございます……」
風悟も小さい頃は、駄菓子をつまみながら映画を見るというのがクリスマスの夕方定番イベントだ。思春期からは、友人とカラオケなどで騒いで過ごしていたが、さすがに今から友人を誘うにもつかまらないだろうし、なにより切ない。
「じゃ、明かり落とすからな」
中村さんが、会館の事務所へ向かった。
風悟は大人しく体育座りで並んでいる子供らから離れ、座敷の一番後ろ、壁にもたれてあぐらをかく。
室内が暗くなり、風悟が、はあ、と溜め息をついたのと同時に鼻先を風がかすめた。桃だ。
「振られた?」
隣にちょこんと座る。
「わかっとるくせに」
「見てたからね」
それでも、いくらか同情するような口調だ。
「……なんかなあ。スマホ壊れて連絡できんかったからかと思ってたが……彼女だって帰省するんやし、どっちにしても正月は一緒に過ごせないのに」
「将来を考えたら、今のうちに別れて違う男をつかまえたほうが良いって思ったわけね」
クリスマスは彼女のアパートで、内田に貰ったシャンパンを……といざ連絡したところ、彼女からは歯切れの悪い返事しか貰えず、根気よく理由を聞いたら思ってもいない答えが返ってきたのだ。
「神社の跡取りと結婚したら、正月ゆっくり休めなくなるのは当たり前やんか……しかも今からそんな理由で早々に見切らんでも」
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「俺は離れられんからなあ」
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