うつしみひとよ〜ツンデレ式神は跡取り陰陽師にベタ惚れです!〜

ロジーヌ

文字の大きさ
28 / 36
第二章 茅の輪くぐりで邪気払い

牛鬼②

しおりを挟む
 どうやら舞手の徳田の家族らしい。徳田の妻は、まだ不機嫌そうである。
「注意されたんがそんなに気に触ったんやろか…」
 千景が言うと、桃がううん、と否定する。
「それ原因ではないっぽいのよね。ねえネネコ?」
「そうそうー、あっしは、夫婦喧嘩じゃないかなぁって思うんだよねー」
「神社まで来て喧嘩……」
 呆れた千景の脇を、桃が小突く。
「千景は家が神社なのに夫婦喧嘩してるじゃない……」
「え?ちーちゃん、そーなのぉ?」
「いやそんなしょっちゅうしとる訳やないやろ……」
 ネネコと桃はその場の他の人間には見えないので、小突かれてもできるだけ平静を装いながら、千景は反論しようとする。しかしモゴモゴ語尾が不明瞭になってしまう。
「あー、ちーちゃん、図星ぃー」
 さらにネネコがからかい、千景もポーカーフェイスを崩した。きゃは!とネネコが笑い、千景も苦笑する。
「なんか、懐かしいなぁ……ネネコとよく、恋愛のハナシしとったな」
 千景が川で過ごした中学生時代を思い出していると、後ろから聞き慣れた声がした。正嗣が帰宅し、準備をして来たのである。
「なんやネネコもおったんか。間違って祓われんようにな」
「えー、マー坊に祓われるなら本望かもー」
「ネネコ……」
 呆れた桃は、正嗣と同じ頃に帰宅したらしき風悟の姿を見つけ、嬉しそうに飛んで行った。風悟も白衣袴に着替えており、遠くから女子高生に「あの人、カッコいいー」などといわれている。
「相変わらずね」
「いつものことや」
「人間は謙虚さを忘れちゃいけないのよ」
「そう言われたかて、顔かたちなんて遺伝やしなあ。そういう桃かてこの顔が好きなんやろ?」
 あら、と桃はうそぶく。
「顔が好みなだけで何百年も一緒にいるほど、子供じゃないわよ」

 千景が遠巻きに息子と式神の様子を眺めていると、社務所の奥の座敷から呼ばれた。じき本番である。千景は徳田の妻子を手招きした。しかめ面のままだが、妻も一礼をして社務所に入って来た。
「よく見える場所を用意しておきますんで、パパのかっこいい姿を近くで見せてやって下さい」
 そう言われ、子供はうれしそうだ。

 神楽は邪気祓いの一環であり、正嗣も祝詞をあげる。だが今回はそれだけでなく、牛鬼の本体が現れる可能性も考えて式神も仕込んでいる。牛鬼の祠は簡単に修復したが、肝心の本体が未だわからないのだ。
「牛鬼はもともと、人に悪さしたり家畜を食う妖怪や。魚食っとるくらいならまあええが……とにかく風悟も桃も、用心してな」
 そうして、神楽が始まった。薄暗い中、篝火が幻想的な雰囲気を作る。
 三芳が鬼、徳田が武士の役割で、悪鬼退治の舞だ。2人は練習の時よりも数段上手に踊っており、手にした武具を軽々と振り下ろす徳田と、それを見事にかわす三芳を、参拝者は時折拍手を交えながら観入っていた。
「ん……」
 千景が、三芳を見た。先ほど見ていた気配と、何か違うのだ。
「なんや……人ではない……あれは……」
 そう思い隣にいる風悟に目配せすると、風悟も同じことを考えていたらしい。そこに、水の匂いがした。ネネコだ。
「ねえ、あれ違う人なんだけどぉー。三芳って人?裏で襦袢のまま気絶してたしぃ」
「えっ?」
 風悟は中座して裏に向かう。その間にも神楽は進み、三芳ではない舞手は、徳田の攻撃を交わしながら時折反撃もしている。千景は正嗣と目が合った。正嗣はすでに気づいており、祝詞と式神を使役する文言を交互に唱えている。
「……牛鬼か!」
 三芳になり変わって鬼の扮装をしているのは、本物の牛鬼であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー

i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆ 最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡ バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。 数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)

処理中です...